第47話-その女性の名は-
「リドラーさん……あの時の言葉は、こういう事だったんですか?!」
リドラーさんはまっすぐ私めがけて走り込み、右の拳を突き出してくる
その手には『バグナグ』なのだが、それにくっ付く感じで腕部分に鉄の盾がある
その拳を私は横に避けるとリドラーさんは私に回し蹴りをする
それを私が剣の平面で防いだ直後、リドラーさんは再度、体を回転させ
もう一度、私に回し蹴りを放つ、私はその攻撃を防げず吹き飛ばされる
吹き飛ばされた私を見下ろす感じでリドラーさんは私に言う
「いや……お前さんがここまで味方に迷惑かけるなんて思っていないさ
見て見ろよ、周囲を」
私はリドラーさんに言われたように周りを見る、それは戦場となっていた
ミヤとリクが戦い、ハンナさんとヒーナさんが戦っている
アイリスさんはステーリアさん、エステさんは御旗の兵士達に囲まれている
「これはスティナ、お前が『巻き込んだ戦い』だ
それも元仲間同士でやりあっているのが見えないのか?!」
リドラーさんの言葉が私の心に響く、たしかに……私を守ろうとせず
あそこで剣を渡してしまえば私は今頃っとそう考えてしまう
もしかしたら御旗の中で今も笑っていられたのかもしれない……と
「お前さんが剣を渡せば引いてやる、さっさと渡せ!」
私の前に手を伸ばしたリドラーさんは私の手ではなく剣を渡せと睨んでくる
あの時のリドラーさんような優しさはまったくない
これが本当のリドラーさんの姿のような気がして一気に恐怖が私にこびり付く
私が諦め、腰に手を当てた時、どこからともなく声が聴こえる
その声はロストでも、ミヤでもハンナさんでもエステさんでもない
それが聴こえた時、リドラーさんは私から距離を取る
「それはあんたが誰かを守ろうとする意志がない証拠
今、周りでこの子のために戦っている人達はわかってくれてる人よ」
「……お前は誰だ?」
リドラーさんの冷静な言い方にその女性は背中の武器『ツヴァイヘンダー』を構え
ながら、私の前に立つと名前を名乗る。
「私の顔を見て名前を言わないといけない程度なら名を名乗る必要はないわ
どうしても名乗って欲しかったら、私に攻撃を当ててみなさい」
「上等だ!」
リドラーさんはその女性に殴りかかりに行く中
私の目の前で立っていた女性は私のほうに振り向き、少し微笑むと
リドラーさんの追撃をするために歩き出す
その光景は女性の圧倒的だった
身長164cm程度で茶色の髪のロングヘアー
服は上から下まで白いワンピース
まるで一般人と思われそうだが、その裏腹に女性の装備は
左腰に『ショートソード』が3本、右腰には『投げナイフ』6本
背中には『ツヴァイヘンダー』の鞘
「ほらほら、どうしたの? その程度?」
リドラーさんの攻撃を軽々と避けて行く
リドラーさんが左の拳で殴りに行くと後ろに行く、それに合わせるように
リドラーさんが右足を踏み込み、左足を伸ばし当てに行くが……
それも涼しい顔で横に避ける、さらに追撃でリドラーさんが伸ばした足を
左方向に回し蹴りするがそれを左腕で受け流す
右手1本で『ツヴァイヘンダー』を軽々持っている光景をすごいのだが
リドラーさんの次の攻撃を完全に読み取っているのがわかる
「……スティナ」
「え?」
その女性は戦いの中、私の名前を呼ぶ
私がこの女性に名前を名乗っていないのにどうして知っているのか
それはわからないが、私はその人の背中に聴き返す
すると、余裕そうな声で私に話かける。
「あなたは自分を誇りなさい、自分が正しいと思った道に
あの人達は力を貸し、一緒に来てくれてるのだから」
「は、はい」
「言葉に惑わされそうになったら……『その剣』に話かけなさい
何か助言をしてくれるはずよ」
この女性はロストの事も知っている……一体何者でどうして私を守って
とそう思った時、リドラーさんの拳が女性の顔を霞め、薄っすらと血が出る
それを見たリドラーさんはその女性に言う
「一発は一発、名前を教えてもらおうか?
俺の名前は『リドラー・フォン・シュタイナ』」
「いいわよ、名乗ってあげる……ただ、名乗ったからにはあなたをねじ伏せるわ
私の名前は……」
その人の名前を聴いた時、私は走馬灯のように『あの時』の
塵旋風を思い出す