第36話-ハンナの依頼-
「お金は稼いだが……依頼をしないとエステに……ばれる」
私は依頼発行場に辿り着き、中に入ると……受付すると
すぐ受付の女性の所に案内され、話かけられる。
「ようこそ、『ハンナ』さん、あなたにおすすめの依頼はこれですね」
「……どうして私の名前を知っている? ……通報するつもり……か?」
「しませんよ、管理官とのお約束ですから」
「管理官……エステの事か……なるほど、把握した」
エステが先に依頼発行場に来ていろいろ手を回してくれたのだろう
それには感謝するが……依頼が固定と言うのはいかがな物かと思う
「で、依頼はなんだ?」
「こちらになります」
渡された依頼書にはこう書かれていた。
『店の警備』
指定の店の主人に従い店で店の護衛をしながら働く
時間は……から……まで、依頼料金は7,000ゴールド
『御淑やか』な女性だとさらに追加料金
『おい、こら……なんであの話をエステが知っている』
私は心の中でエステに怒りながら強制的に渡された依頼書を受け取り
その店まで行く。
その店の名前は『スマイルフラワーランド』
実に私に不釣り合いであり、店の中にはメイド服を着た女性が働いているのが見え
稀にこういう店があり、男性に食事を出したりして持て成すと聴いた事がある
『エステかミヤか知らないが後で……説教だ』
そう思いながら私は店の裏手から入ると店の主人らしい男の人がこちらを見ながら
声をかけてくる。
「あんたが依頼の人かい?」
「そ、そうです、アスミと言います、よろしくおねがいします」
『ハンナ・アスミル』のアスミの部分だけを取り笑顔で主人に話返す……が
正直……なんのためにやっているのかわからなくなってきた。
「なかなかの美人さんだね……だけど武器を付けたままはだめだね
これに着替えて頼めるかな?」
「はい、わかりました」
私は着替えをするために更衣室らしい場所に案内され、服を脱ぎ渡された服を
着ようと……すると、それは『メイド服』それの店のより若干、腕の部分だったり
スカート部分が短い……だが、これも仕事だ、と諦め、スカートの下にバックルを
はめ武器を隠し、店の主人の元へ行くと……主人である男性が喜びながら喋る
「似合ってる! そう、こんな子が来て欲しかったんだ! 包容力がありそうな
『お母さん』みたいなタイプの人が!」
「……そうなんですか、お役に立ててうれしいですー」
『お母さんってなんだよ……私はまだ『20』だ、たしかにスティナとかには19
と言っているが……さすがにこの歳で母親になりたくない』
そう心の中で格闘しながら主人に愛想を振りまくと、主人に店の中で接客しながら
護衛をお願いされたのでやる事にした。
「いらっしゃいませ……だ、旦那様、今日はどうような御用でしょうか?」
「お、可愛い子……この店の中で一番お姉さんみたいな子だね、じゃあ
『アップルジュース』回転置きをお願いしようかな」
「わかりました、しばらくお待ちくださいね」
『アップルジュースは理解した、だが……回転置きってなんだ……
回転しながら置けと言うのか……スティナを連れてくればよかった』
「すみませんー、アップルジュース回転置きを頼まれたのですが
これはどうやってお出しすればいいんですか?」
「それはね、ジュースを出す前にスカートを回転させながら出すのよ」
先輩らしいメイドの女性が笑顔で教えてくれるが、正直やりたくない
こんな姿スティナに見られたら……自決したくなる。
「おまたせしましたー、アップルジュースで、ございます」
先輩に渡されたアップルジュースを回転しながらお客……様の前に置くと
その客の男性は嬉しそうに拍手をしながら小さい声で言う。
「良い回転だったよ! うんうん、もしよければ今晩どう?」
「すみません、お仕事がありますので……まだ別の機会にでも」
「そう言わずにさ、良いでしょ? 奮発すると10,000ぐらい」
そう言いながらその男性は私の手を握ってくる……さすがに耐えられそうにない
そう思って店の主人の顔を見ると、首を横に振り、笑顔で頷く。
「遠慮します、私の指名料金は230,000でございます」
「230,000?! 可愛いからって調子に乗りやがって! 他の子にする!」
私は冷静に主人の元に行くと小さい声で『あんまり怒らせないよう』と言われる
が……正直、このまま行くとしばらくして精神が暴発しようでやばい
そんな時である。
「食い逃げよ!」
メイドの女性が叫んだ方向を見るとそこには走って店の外に出た男を見つける
「あの人、かなりの量食べたのにお金払ってないの!」
その言葉聴いた私はメイド服のまま、外にでてその男を追う
相手の足は遅く、簡単に追いつく、足払いをし……その男性転ばすと
頭を踏みつけ捕まえる……と、その光景を見ていた市民は私を見て拍手をする
なんだ……これくらいと思ったが、拍手したのは捕まえた方ではなく
私のスカートが足払いをした時に捲りあがり、周りの人に見られていた事である
そんな事がありながら店に戻ると、主人が喜びながら依頼料を渡してくれる
その額『20,000』
「悪いけど最後のお客様案内してね」
と主人に言われしかたなく……お客の方へ向き性別を確認すると笑顔で言う
「いらっしゃいませ、お嬢様、本日は何にしましょうか?」
「……ハ、ハンナさん? 一体何をやってるんですか?」
私が頭を上げ、目の前の女性を見ると……スティナだった
ミヤが一緒じゃなかったのは幸福だが……もう、嫌だ
「……スティナ、見なかった事にしてくれ」
スティナにその言葉を残し私は更衣室に逃げ込んだ。