第35話-エステの依頼-
「まだ他は……来てないな……」
そう俺は独り言を洩らすと依頼発行場に入り辺りを見ますがいつも通りの風景である、俺はその中1人、受付に行き、小さい声で言う。
「悪い、この紙に書いた名前の連中が来る、もしも良い依頼が来てたりしたら
回して欲しいのと……他の連中より先に受付できるようにしてくれ」
実は、この依頼発行場は依頼を受けるために受け付けで名前の登録をしないといけない……スティナはそれを知らなかったため、それをやらないで直接受付で
依頼をお願いしてしまった。
「わかりました、えーと……スティナさんと……ミヤ……?!……ハンナ?!
この2人指名手配されている人達じゃ?」
受付の女性は驚いた顔をしたまま俺の顔を見ると小さな声で言ってくれる
俺はその言葉に答えるように耳打ちで言う。
「もしも黙っていてくれたら、今日の給料3倍にしておく、それでどうだい?」
「……それならお受けします、エステ様」
受付の女性は笑顔で俺の言葉を理解する……人と言うのはここまで簡単なのは
今に始まった事ではないが、実に扱いやすい。
「さてっと……俺の依頼はっと……」
俺は受付で渡された依頼帳を開き、ペラペラとページをめくっていると
ある依頼を見つける。
『盗賊の討伐』
王都に潜伏する『グリンプト盗賊』を殺害し、身元がわかる物を奪取する
報酬は盗賊1人に付き、5,000ゴールド
『グリンプトって……腕に緑の腕章付けて我物顔でスラム街にいるよな……
そうか、王都の連中はスラム街行かないからな……』
俺はそう思いながら依頼を受け、スラム街へと足を向け
スラム街の街外れの空き地に行くとそこには緑の腕章を付けた男が3人いた
「……簡単に見つかるし、王都の雑魚兵士達の目が節穴なのは明確だな」
「お前誰だ? 俺達がグリンプトって知って……」
1人の男が喋り出した直後、その男の首は地面に落ちる
「まず1人……この腕章は……律儀に裏に名前入りか……」
「てめぇ! よくも仲間を死ね!」
2人目の男は両手にナイフを構え俺に襲いかかってくるが
俺の近くにスティナがいないのが……運の尽きだ
理由は……
「彼奴の前だと優しくなっちまうからなぁ!」
右手に持ったキルマッチを右横に払い相手の男のナイフ1本を吹き飛ばすと
次に左に持ったキルマッチを左に払いにナイフもう1本を吹き飛ばし
武器が無くなった男の上半身をクロスに斬り付け絶命させる。
しかし最後に残ったグリンプト盗賊の兵士は笑いながら俺に言う
「雑魚2人殺したぐらいで……兄貴達、出番だぜ!」
そう男が言うと、どこかに隠れていた盗賊2人が姿を現す
そして3人になった盗賊は俺を囲むように3方向に別れたのを確認すると
俺はそいつらに話かける。
「グリンプトって全員で5人なのか?」
「あん? そうだよ……新鋭だけ集めた優秀なメンバーだ」
「新鋭ねぇ……あと5人は欲しかったぜ……」
俺は欠伸をしながら盗賊達を煽ると3人は俺に武器を構え突進しようとするが
……3人のうちの2人は動かない、それに気づいた1人は声をかける。
「おい! どうしたんだよ! さっさとこいつを殺そうぜ」
しかし……その男以外……地面に倒れ、動かない
その光景に驚き、男は俺に叫び声をあげてくる
「お前! 何をした?!」
「何をした? ただ動くのが遅かったから喉を斬っただけだ」
さっさと攻撃すればよかったのに……俺の言葉に耳を貸したお陰で死んだ
死んだ理由は簡単だ……キルマッチを投げ男共の後ろから喉を斬った
投げた時に気づかなかったのは俺に気を取られていて周りが見えなかったのだろう
「……くそくそくそ、お前らの恨み晴らしてやるからな!」
そう言ってその男がショートソードを構え、俺に突撃し縦に剣を振る
俺はそいつの攻撃を横に避け、手に戻ったキルマッチの右手で横に払う
払った位置は、男の首部分……首が一番狙い安いからな
5人の盗賊が地面に倒れたのを確認すると、そいつらの緑の腕章を取り
その場を後にする、死体はどうするかって……そのうち野良犬が食べるだろうよ
そんな事を思いながら腕章を腰に差し込み、依頼発行場に歩いていく前に
俺は空き地の真ん中に立ち、『ある物』をその場に置く。
それは依頼発行場の依頼書、物は手に入った
だから俺は手向けとして……それを置き独り言を洩らす
「金のためとはいえ……殺して悪かったな……だから依頼をされた不幸を呪え
何をしなければ依頼なんてされないのにな……」
そう俺は言葉を誰も聴こえない空き地に残し、その場を後にする。