第177話-お姉様のために-
フィリシアの攻撃の速度はたしかに上がった
しかし……その反動かフィリシアの連撃は荒くなった
「どう? 私の連撃は?」
その連撃を受け止めながらミヤは冷めた表情で受け止め続ける
しかも、どの連撃もミヤに届いていない
それに気づいていない様子のフィリシアはひたすら連撃を繰り返す
「……ミヤ」
ミヤの後ろで心配そうに見ているスティナの声がミヤの耳に届くと
ミヤは横を向き、笑顔でスティナに言う
「大丈夫ですよ、心配しないで見ててください」
ミヤの言葉の通り、スティナと話をしながらもフィリシアの連撃を受け止めている
その芸当を見ているハンナは驚いた表情を浮かべながらミナセに話かける
「ミ……ミナセさん、あれは一体……」
「さぁ?」
ハンナの言葉にミナセは首を傾げる
だが……ミナセは内心で考えていた
『……たしかに怒りで武器を振るっている攻撃は単調だけど
ミヤ……今のあの子の強さは異端……攻撃が見えてるとでも言うの?』
ミナセの疑問を余所にミヤは動く
フィリシアの攻撃を右手の短剣で弾くと、左手の短剣をフィリシアに伸ばすが
その攻撃はフィリシアが後ろに下がる事で当たらない
その瞬間、フィリシアがミヤの顔を見るとミヤは微笑んでいた
そして、ミヤは小さな声で何かを言う
その言葉を聴きとったフィリシアは驚く
その言葉は……
『そう動くのは知ってる、次は後ろに下がった反動で突きをするんでしょ?』
その言葉はまるでフィリシアの行動そして次の攻撃すら知ってるようなそんな言葉
しかし、フィリシアはその言葉を
『どうせ予測でしょ?』と思いながら突きは放たなかった……
「……ありがとっ」
ミヤは小さくフィリシアに言いながら武器を構え直し、元の位置に戻る
その言葉の意味に理解できず、フィリシアはミヤに言う
「どういう意味?」
「……あのまま突きを放たれたら私当たってたから」
「……じゃあさっきのは」
「え? ぁぁ、さっきのは『やって欲しくない』行動を言っただけよ?」
「……そういう事」
そう、先程の言葉はミヤがけして凄い能力を使ったり、行ったわけではない
ただ単に『言葉』と言う力でフィリシアを動揺させ、攻撃を行わせなかった
ただそれだけ……それだけなのに、それを目の前で見ていたスティナは驚いた
「凄い……」
「え? そうですか? お姉様の今度使ってみてください
言葉は相手の動揺も誘える立派な『精神攻撃』なんですよ」
ミヤはスティナの言葉にすぐさま答える
まるでフィリシアなんて眼中にない、ただスティナと話をしていれば満足
そう傍から見えてしまうその光景にエステは驚きを隠せなかった
「……彼奴、あんなに強かったんだな」
「特定の人限定……だな」
エステのその言葉にハンナが答えると
その言葉に少し笑いながらエステはハンナに『そうかもな』と言い返す
「しかし……ミヤがあそこまで防御ができるのは意外すぎる」
「どういう事だ?」
「ミヤは元々回避型の人間だ、敵の攻撃を避けて反撃するか
暗殺……姿を消してからの攻撃が得意だ、けど……」
「けど?」
「今のミヤはその真逆だ、たしかにスティナが後ろにいるから防御に
専念するのは理解できる、だが……あれは……」
「たしかにな、フィリシアの連撃を一発たりとも当たっていない
それもスティナと話をしている余裕すらある」
「……そうだな」
ミヤとフィリシアを見ているハンナとエステは腕を組み、その光景を見ている
横でミナセはただ一人……考え事を続ける
『……あの子の体は大きいほうじゃない、しかし握力があるほうにも見えない
それを読み取ってもあの子、ミヤは回避専門、でも今……この光景は
まるであの子が回避じゃなくて防御専門と言わんばかりの光景……』
そう、その場にいた誰もが思った事である
今まで見てきたミヤは敵の攻撃を避け反撃に移るか
姿消してからの攻撃をメインとした『回避型』
しかし、今のミヤはフィリシアの攻撃を全て短剣で受け止め
さらにどの攻撃すら通さず、スティナと話をしている余裕すらある
『……まるで別人? それはないわね……別人なら『お姉様』とは呼ばない
じゃあ……一体、今のあの子は何者?』
そこまで考えた後、ミナセは独り言のように言葉を言う
「まったく……スティナのお友達は面白い子ばかりね」
その独り言は言いながらミナセはミヤとフィリシアの戦いを
微笑みながら見ている