第176話-支える思い-
スティナの笑みを見たフィリシアは何かが切れたのか
その怒りはスティナに向けられた。
「……いいわ、ミナセの前にあなたを倒してあげる」
それを感じ取ったスティナは武器を構え直しフィリシアの方向を向く
するとフィリシアはスティナに突撃するように正面からレイピアを突きたてる
それをスティナは横に避けた時、次の突きがスティナを襲う
「……今度は止まらないわよ、私の連撃は!」
その攻撃はスティナとフィリシアが戦った、あの時の『技』
50連撃……しかし、それはフィリシアへの負担が酷いはず
だが、スティナの目の前のフィリシアは笑顔を浮かべている
「っ」
その連撃をかすめながら避けるスティナだが……
スティナの両腕から肩までの服が破れていく
しかし、フィリシアはそんな事を気にも止めず、さらに連撃を繰り返す
前の戦いの時ならばスティナが反撃できる隙があったのだが
今のフィリシアにはそれはない、動きに無駄がない突きと斬りを交互に繰り返し
スティナに反撃させる隙さえ、与えない
『……おい、スティナ……このままだと裸にされるか身体中が傷だらけに……』
「知ってる……でも、どうしたら……」
スティナはフィリシアの連撃をなんとかロストで防ぎ、そして避け
致命傷を避けるが……霞めていく攻撃は少しずつスティナの肌を削る
その時、スティナは足を滑らせ、その場に尻餅を付く形になる
それに追撃する形でフィリシアはレイピアをスティナ目掛けて突く
そんな時……それは思いのよらない方向へ起きる
それはスティナの前に誰かが立ち……その攻撃を受け止める
それは片眼を蒼色に輝かせたミヤだった
「いい加減にしなさいよ……私のお姉様の肌をこれ以上晒すのは許さない」
ミヤはフィリシアの突きを短剣2本で挟むように受け止める
その短剣は『キリング・オブ・ダンス』、スティナがミヤに渡した武器
「お姉様……この武器、使わせてもらいます」
「う……うん」
スティナのミヤの言葉の迫力にその場に座り込んでしまうと
ミヤはフィリシアの攻撃を両手で受け止めたまま、スティナに言う
「お姉様、大丈夫……さぁ、立って……
それまで私が攻撃を何度でも何十回でも何百回でも……受け止めてみせます」
それは聴いたフィリシアは怒っているのかミヤからレイピアを引き抜くと
連撃をミヤに向かって繰り出す、その突き斬りが……ミヤを捉えた
ように見えるが、それはミヤの体には届かない
それもミヤ自身、その場から1歩たりとも動かず、フィリシアの攻撃を止める
その動きをハンナは遠くから見る
「……ミヤ」
「凄いわね、短剣だけであそこまでの動きを……
んー、あれがミヤちゃんの『本気』ね」
「ミナセさん、ミヤの動きを追えるんですか?」
「ええ、フィリシアの攻撃を全部短剣で受け流してるのよ
スティナが腰を抜かし、あそこから立ち上がる時まで」
ミナセとハンナの会話を余所にフィリシアはミヤに向けて何十回とも言える
突きと斬りを高速に繰り返したのだろう……
しかし、その攻撃がミヤ自身を捉える事はなく、ミヤの短剣に弾かれる
鉄と鉄の渋い音がこの裏庭に響きわたる
「邪魔よ……私とスティナの戦いに割ってこないで……」
「は? 元々はあんたがミナセさんからお姉様に標的を変えたのだがら
お姉様が私に交代してもありでしょ」
「え?」
スティナは座ったままミヤの言葉に驚く
スティナ自身、立ち上がり態勢を立て直したらミヤは引いてくれると思った
しかし、目の前のミヤの言葉は明らかに『ここからは私』と宣言している
「……お姉様、もしかしてこいつの連撃を全部受け止めた私が見たいとか?」
ミヤは横目でスティナを見ながら笑顔を浮かべる
その最中でもミヤはフィリシアの連撃全てを短剣で弾く
そんなミヤを目の前で見ながらスティナは笑顔でミヤに言う
「ごめんね……悪いけど、全部受け止めるとこ、見たいかも」
その言葉を聴いたミヤは『はい!』と大きく言い
前を向くと……ひたすらに受け止め続けながら言う
「悪いけど……全部受け止めないとお姉様は立ち上がれないみたい
だから、あんたの『遅い連撃』なんて、全部止めてあげる」
「……上等よ」
フィリシアはそこからさらに連撃のスピードを上げる