第175話-純粋と殺意-
「邪魔をするなら……殺してでも通らせて貰うわよ」
フィリシアの眼はミナセだけを見ている中
目の前のスティナは邪魔な壁とでも思っているのだろう
フィリシアはレイピアを構え、スティナに向けて突く
『フィリシアさん……』
スティナはそのレイピアを横に避け、腰のロングソードでなく
もう1つの剣、『ロスト・ヘレン・ブレード』を抜く
『おい……俺の抜くのは構わないが、彼奴を殺さないようにな』
「わかってる……大丈夫だよ、ロスト」
『そうか、なら……その思い、見させてもらおう』
フィリシアの突きを避けたスティナはフィリシアの横側を蹴り
フィリシアの背後に回る、それに合わせフィリシアはレイピアではなく
体と右足を右側に回転させ……スティナを蹴り飛ばそうとした
しかし、スティナはその蹴りを剣で受け止める
「やるわね」
「フィリシアさんもっ」
「じゃあ、これならどうかしら?」
フィリシアは受け止められた足を引っ込めず
スティナの剣を台として左足で蹴り、空中で一回転し
少し離れた位置に着地すると、そのままスティナにレイピアを構え突撃すると
それに合わせスティナは剣を横に払うとフィリシアはそれを体を1歩後ろに下げ
避けたのを確認すると、下げた1歩を前にだし……勢いをつけた突きを放つ
それを間一髪……スティナの顔かすめ避ける
「私のスティナの顔になんてことを!」
ミナセは戦いの様子ではなく、スティナの顔にかすり傷がついた事を怒る
それに呆れたようにハンナはミナセに言う
「……それはフィリシアが訓練ではなく
スティナを殺そうとしてるから当たり前の事ですよ……」
「知ってるわよ、でも……でも、あの子のほっぺは柔らかいのよ!」
『何だ……ミナセさんってこんな『親馬鹿』だったのか?』
ハンナは自分の心の中で悩んでいるとハンナとミナセの間に割り込むように
ミヤが入ってきてミナセに笑顔で話かける
「ですよね?! お姉様のほっぺ柔らかいですよね!」
「そう、そうなのよ! ミヤちゃんわかってるわね!」
「もちろんです! 私はお姉様の事ならほとんどわかってます!」
「え、そうなの? じゃあ今夜、もっと話ましょ?」
「はい!」
ハンナはミナセとミヤがスティナに付いて騒いでる話を
横で呆れた感じで聴きながら、2人を横目で見ながら思う
『……この2人はなんなんだ?
スティナが頑張ってると言うのにまったく……』
しかし、2人の話をさらに聴いていると話の内容が変わっている事に気づき
ハンナは戦いを見ながら聞き耳を立てる
「でも、お姉様の成長速いですよね……
フィリシアさんと互角ぐらいにまで成長していますし……」
「そりゃあ、私の娘だからね……それにあの子は元々、素質があったのよ」
「え? そうなんですか?」
「だって、模倣ができるのよ?
模倣ができるって事は自分が真似をするだけの力を持っているって事なんだから
あの子は元々、できる子だったのよ」
それは傍から見れば『親馬鹿』見える
だけども……ある程度、戦いを経験した者が今の言葉を聴いて理解できれば
それは……スティナ自身が元々、強かったのかも知れない
ただ、実戦経験が少なく相手に合わせる力が乏しかっただけである
「もしかして……それでお姉様に旅を?」
「さぁ? 元々は私達の街が塵旋風に巻き込まれた
そこが問題なのよ、まぁ……この先、あの子がどうしたいのか
そこが私の気になる所かしらね」
「なるほど……」
先程まで馬鹿話をしているかと思ったら、急に真面目な話をしだす
『さすがはミナセさん』と驚くハンナがいた
そんな話を余所にスティナとフィリシアの戦いは続いている
フィリシアの突きをかすめたスティナは剣で左側に払う
しかし、それをフィリシアは読んでおり、軽くレイピアで受け止められ
受け流される、その隙を付き、フィリシアはスティナの右肩めがけ突きを放つ
だが、そこでスティナは思いもよらぬ行動をした
それは、自分自身の力を抜き、肩を下に下げた
それは普通なら気にしない行動なのだが、レイピアの突きは一直線
何もない場所突くだけの行動になった
さらにその動作からスティナは左足を払い
フィリシアの右足を払おうとするが、フィリシアは力を入れ耐えるのを
予測していたスティナは右足を回転させ起き上がる
「何その芸当……気に食わないわね」
「そうですか?」
スティナはフィリシアの睨みを余裕の笑みで言い返す