第170話-ミヤvsミナセ-
「さて……おしゃべりは終わりにして、始めるわよ
最初の相手は誰かしら?」
ミナセはその場に立つ、しかも素手で……
『お姉様に良い所見せるために……』
ミヤはそう思い皆から1歩前に出てミナセの前に立つ
そして、木の短剣2本を両手に持つ
「ミヤちゃんね、いいわよ……かかってきなさい」
ミナセは右手でミヤに挑発するかのように手招きすると
ミヤは何も言わずに消える……それはミヤの得意のハイド
しかし、ミナセは平然とした顔でその場から動かない
「なるほど……自分の気配を空気と同化させる
でもね、その技はには逆転があるのよ」
ミナセはそう言うと後ろを振り向く事無く、
ミヤのクロス状の攻撃を首を横に動かし避ける
「なっ?!」
ミヤは驚きながらミナセの頭上を飛び越え、元の位置に一回転しなが着地する
そんなミヤにミナセは笑顔で、今の悪い点を説明しだす
「ミヤちゃんってさ、暗殺が好きでしょ? 首を刈れば一撃だしね
でもさ、そんなのある程度戦いに慣れてる相手にはすぐバレルわよ?」
「でも、私のハイドがあればっ!」
ミヤがそう言った直後……ミナセは『その場にいない』
「え……」
ミヤはその行動に驚き辺りを見回すが、ミナセの姿はない
それにやっと気づいたミヤは後ろを取られないように気を付けていると……
「……後ろからが全てじゃないわよ」
ミヤの懐に潜り込んだミナセはミヤの腹に右手から掌底を入れた後
後ろに半歩ステップするように下がると、痛がっているミヤに笑顔で言う
「ようは、後ろからと思わせればいいだけ、簡単でしょ?」
「……簡単って、ミナセさん……今……」
「え? ああ、ミヤちゃんの言う所の『ハイド』だっけ?
あんなのやろうと思えば誰でもできる芸当よ?」
実際、ミナセが言っている事に間違いない
『ハイド』即ち、気を殺し自分がまるで空気になっているかのようにすればいい
しかし、それだけでは相手に見えてしまうため、縦横無尽に縮地をする
ここまでなら、あれ程度鍛錬を積んだ人間ならばできない事はない
それをミナセはミヤの前でやってみせた
「でも……見よう見真似にできる事じゃ……」
「ミヤちゃん、あなたは勘違いしてない? 自分だけ『が』できる事で
今までの旅でミヤちゃんに付いてこれる速度を持った人がいなかった
ただ、それだけなのよ……そう、それだけ」
「……じゃあ、私にどうしろと……」
「私に聴いても答えは帰ってこないわよ?
自分自身の鍛錬の先に見えるはず、それの手伝いを私がしてあげているだけ」
『手伝いって……簡単に言うけど、この人……手伝うつもりなんかない
初めから、私のできる事を全て潰して、『その程度』って言わせるために』
ミヤはそう考えた所で、ミナセは両手を開き横にしながら首を振り
ミヤに向かって言う
「何? もう終わり? その程度なら……部屋に帰って寝てなさい」
「まだっ! まだよ……私は諦めなさい!」
「何を諦めないの?」
ミナセの言葉と同時に真正面から走り込むミヤにミナセは溜息を付く
しかし……そこからミヤは思いがけぬ行動にでた
「っ!」
ミヤは左手に持っていた短剣をミナセに向かって投げる
だが、その攻撃はミナセに右手によって軽く弾かれる
その隙を付き、飛び込む形で左手の短剣でミナセに切りかかる
「……で?」
ミナセが呆れた顔で左手の甲でビンタしようと手を払った時
その場にあったのはミヤが持っていた左手の短剣だけが吹き飛ばされる
「せいっ!」
ミヤはミナセの右後ろに回っており、その場にしゃがみ込んだ形でミナセ
に足払いをするが……ミナセは軽くジャンプするとミヤの足払いを避け
ミナセは空中で右足を払い、ミヤの顔をめがけて攻撃するが
その攻撃で吹き飛ばされたのは……ミヤが最初に投げた短剣
そしてミナセが着地と同時に何かがミナセに飛んでくるのに気付いたミナセは
右手でそれを払う……それは地面に落ちていた石ころ
「……お子様ね、その程度しかできないなんて」
ミナセはまるで読んでいたように左手を後ろに向け裏拳を放つ
それは何かに直撃した……そう、ミヤが2回目に使った短剣に
その直後、ミナセの腹にミヤの右手からの拳が直撃する
「どうですか?」
「よかったわよ、でもそこで終わったら……残念だけど」
ミナセは両手でミヤを掴み、ハンナ達が見ているところに投げる
ミヤは直地ができず地面に背中からたたきつけられる
「まぁ、よい芸当だったけど……武器なくなっちゃ意味ないわね」
そう言いながらミナセは落ちていた短剣2本を拾い
武器が置いてある場所に投げ……笑顔で再度、ミヤに言う
「でも……まだ磨けばいい戦いくわよ、頑張りましょ」
「……頑張りましょ?」
ミヤは地面に倒れたまま、ミナセに聞き返すと
ミナセはキョトンとした表情でミヤに言い返す
「え? もうおしまいでよかったの? それならそれでいいけど……
元々、最初の1回なんて『どれくらいできる』か見るだけだし」
『どれくらいできる』……ミナセは軽くそういうが、見ていた他の皆は
そう思っていない、これからの訓練でミナセが『見る価値』があるかの
見極め……そう感じとった者も多いはず、だが……ただ1人違った表情をする
「お母さんっ、次は私……いいかな?」
「ええ、いいわよ……スティナ、久しぶりの稽古ね」
スティナは笑顔で1歩前にでると、ミナセは嬉しそうに構える