第161話-親と子-
「スティナ、スティナ……」
「お、お母さん……苦しい」
スティナはミナセに抱きしめられながら声を出すが、その声はミナセの胸元に
顔を埋められているせいか……ミナセには聴こえていない
「ミナセさんでしたっけ?……娘さんが苦しそうにしてるのでやめたほうが……」
アスミはミナセにそう話かけると、ミナセはキョトンとした表情でスティナを
離さないでいる、先程のミナセとは打って変って、脱力しきっているのか
あの時のミナセとは何かが違う……そんなミナセにハンナが話かける
「ミナセさん、スティナが窒息死しちゃいます……」
「あ……つい、嬉しくて……スティナ、大丈夫?」
「だ、大丈夫……ところでお母さん、どうしてここに?
港で戦っていたのに……」
「それはね……えーと……『母の力』ってやつ?」
「何それ……解答になってないよ……」
「まぁ、気にしない気にしない、私がここにいてスティナもここにいるんだから
それでいいんじゃないかしら?」
「そう? ……そうだね、私もお母さんと会えて嬉しい」
スティナが笑顔でミナセに言う、その間、スティナの近くにいたミヤは一言も
喋らず、黙って腕を組み、何かを考えている
その光景は珍しく感じたのか、ハンナがミヤに話かける
「ミヤ? 何か悩み事か?」
「ここはお母様と呼ぶべき……それともミナセさん? それともお姉様の
妹になりました……いや、違う……合えて……」
ミヤが独り言のようにぶつぶつと言っている言葉をハンナは聴き取り
呆れ顔でミヤの右肩を右手でたたくと真面目な顔で言う
「とりあえず、挨拶をしてきたらどうだ?
私はスティナを助けるので挨拶できなかったから後でする」
「……え? あ、そうね……挨拶してくる」
ミヤは今まで目の前にハンナがいたのを気づかず、今気づいたと言う感じ
ミヤがスティナとミナセの所へ向かったのを確認したエステとフィリシアが
ハンナの元へ近寄り、ハンナに話かける
「あれが……ミナセさん? 近くで見るのは初めてだ
あれでスティナの母親……若すぎないか?」
「ああ見えて、30を超えている」
「……人は見かけによらないな」
「ねぇ……あの人、スティナの母親なのはいいとして、あの武器の数
純情じゃないわよ……あんな持ってて重たくないのかしら」
フィリシアのそう言葉は正論である
一般的な女性がいくら体力をつけたり、筋力を付けたとしても限界はある
それも30を超えている女性が、背中に大剣、腰に剣3本と投げナイフ装備
あきらかに重量が大変な事になっているはずなのに、ミナセは平然とした顔で
スティナとミヤと笑顔で話をしている
「……ミナセさんだから普通だろ」
「そうだな、普通だな」
「普通って……あの人何者なのよ」
「スティナの母親だろ?」
エステとハンナはフィリシアの発言にそう返す
2人はミナセと言う人物を少なからず知っているがフィリシアは全く知らない
全く知らない人間から見てもミナセは『異常』なのだろう
「ところでスティナ、あれから剣の練習とかしてる?」
「えっと……実戦なら少し……あとこのロストも抜いたぐらい?」
「抜けたのね……さすが私の娘、んーそうね
せっかくだし私が久しぶりに剣の稽古をしてあげる」
「それなら私も稽古してください!」
隣のいたミヤがスティナよりも速くそう言うと、その発言聴いたハンナ達も
ミナセの元へ歩いてきて、ミナセに言う
「私もお願いします」
「俺もよければお願いします」
「私も……お願いします」
フィリシアは少し恥ずかしそうにミナセに言うと
ミナセは笑顔で話かけられた皆に言う
「いいわよ、スティナは強制だからね」
「え……私何もいってないのに……」
そんな会話をしている最中、アスクとフィルナがスティナ達の元へ歩いて来て
フィルナが皆に話かける
「今日はもう遅いし……休んで明日からにしたらどうかしら?」
「そうそう、疲れて稽古しても身に入らないさ」
アスクは笑顔でそう付け足すと、周りにいた人達も頷く
その直後、メイド達……カナ、アスミ、ナリアはいそいそと建物の中に急ぐ
それは多くなった客人を泊めるための準備と部屋確保などをするためだろう
それを横目で見ながらフィルナは少しだけ微笑んだ