第150話-感じて、考えて-
「くっ……」
「ここは通さないわ、大人しくお友達さんが倒れるのを眺めてなさい」
フィルナは満面の笑みでハンナの目の前に立っている
その向こう側でアスクはスティナに向かって剣を振っている
それをスティナは剣で防ぎ戦っているが……劣性なようだ
『……どうすればいい……どうすれば』
ハンナが心の中でそう考えていた時、どこからともなく声が聴こえる
その声の主の声に聴き覚えがあっても誰なのかまでは思い出せない
『ハンナ、あなたがスティナの考えを読む、相手の考えも読むのよ
そうすれば……必然と通る道は見えてくるはず……さぁ、行きなさい』
その言葉に従い、ハンナは一息付き周囲を見回す
すると……相手の顔、そして行動が読み取れるまでは行かないが
その人達が何をしたいのか、少しだけ読み取れたような気がした
『そうか……母さんは私を煽っているように見えるけど、実際は
父さん……アスクを助ける方に力を入れているのか、ならば』
ハンナは右手で持っていたトンファーでフィルナに殴りかかる
それをフィルナは冷静に受け流し、ハンナに言う
「とびかかれば倒せるのは雑魚だけよ、それを見極めなさい」
「知ってますよ、だからこそ……こうするんです!」
ハンナはそう言うとスティナめがけ左手のトンファーを投げる
フィルナはその投げた物を素通りさせた、なぜなら、その投げた物は
スティナを助けるためか、アスクに攻撃する物だと……
スティナは飛んでいたトンファーに気づき、一瞬取ろうとするが
投げたハンナの顔を見ると、『それを取るな』と言っているように見えたので
スティナは合えて、それを取らないでいるとアスクがそのトンファーを
剣で吹き飛ばすため剣を振るった直後に『隙』ができる
『ハンナさんが狙っていたのはこれだったんですね……』
スティナはその一瞬にアスクに攻撃を加えず、走り出す
アスクはトンファーを払った事により、動作が遅れ、スティナを止められない
フィルナはスティナがこちらに走ってくるのを感じ、後ろを振り向こうとした時
ハンナがそれを許さなかった
「こちらですよ、お母様!」
ハンナは右手に残ったトンファーをフィルナに殴りかかる、それを間一髪
避け、態勢を立て直そうとした時、背中に強い衝撃が走る
それはスティナによる左足からの蹴りが背中に直撃したのだから……
その攻撃でフィルナは前のめりになった所をハンナがお腹に思いっきり左手で殴る
するとフィルナの体から力が抜け、気を失う
それを確認したアスクは武器を地面に捨て、両手を上にあげるとハンナ達に言う
「こちらの負けだよ、お見事、良い連携だったよ」
その言葉と同時に、ハンナはフィルナを傭兵達に預けるとスティナを抱きしめる
ハンナのその行動にスティナは驚き、ハンナに聴く
「……ハンナさん、どうしたんですか?」
「スティナに感謝を示すために……こうやって抱きしめているんだ」
「はぁ……えっと、ちょっと抱きしめるのが強い気がするんですけど……」
「そうか? まぁ、気にするなよ」
スティナはハンナの顔を見ていないが、その顔は笑顔だったのだろう
その状態に、ミヤ達が近寄ってきてハンナ達を囲む、その直後
ミヤがハンナに怒鳴る
「お姉様をなんで抱きしめてんの? そこは私がお姉様に抱きしめられる所」
「そうか? ミヤも頑張ってくれたが……スティナの方が頑張ってくれただろ」
「それはそうだけど……」
その会話と話声が尽きる事なくその場で続いている少し遠くで
眼をさましたフィルナが地面から起き上がると、目の前にアスクが笑顔でいる
アスクはそんなフィルナに手を伸ばし、フィルナはその手を取り、起き上がると
アスクはフィルナに言う
「まさか、あそこでトンファーを投げるとはね」
「そうね……あの子があそこで私に殴りかかるまでは『予測』できたんだけど」
「私もだよ、考える事も大事だけど、ハンナの場合は感じたのかも知れないね」
「なのかしらね、まぁ……あの騒ぎがひと段落したら話かけましょう」
フィルナがそう言うとアスクは頷き、ハンナ達の会話が終わるのを待っている