第148話-伝えたい言葉、伝えたい事-
「……あんた、いい加減にしなさいよ……!」
フィリシアはミヤの蹴りで飛ばされた後、起き上がる
その時の顔は、ミヤを殺すと言った表情をしていた
「どうしたの? かかってこないの? あ、お姉様
この人……いや、戦闘狂の人の名前はなんですか?」
「え、えーと……フィリシアさん、だよ」
「フィリシア……私はミヤ、よろしくね」
「よろしくにしちゃ、随分なご挨拶をありがとう、お礼に……」
フィリシアは縮地を使い、ミヤの目の前まで移動する、しかしその両手には
武器を持っておらず、レイピアは吹き飛ばされた位置に置いてある
そして、フィリシアはミヤの顔めがけ右手から拳で殴りかかる
しかし、その攻撃をミヤは後ろに体を下げ、避ける
「チッ……避けるのね」
「フィリシア、あなたがさっきの意味を理解するまで当たる気はないわよ」
「……別にわからなくても構わないわ」
フィリシアは左手から拳をミヤの顔めがけで殴りかかる、その拳を右手の掌で
止め、ミヤは『見下した顔』でフィリシアを見ると言う
「永遠にわからなくてもいいけど、そのままだと永遠にお姉様に敵わない」
「私が? 私が本気をだせばスティナなんて……」
「お姉様より私のほうが『弱い』のよ、それでもあんたは私に負けてる」
「え?」
ミヤのその言葉にスティナは疑問の声をだした時、隣に歩いてきたアスクは
小さな声でスティナに言うとスティナも小さな声でアスクと話し出す
「あれはフィリシアを挑発するための言葉だよ」
「なるほど……でも、どうしてミヤはあそこまでしてフィリシアさんに
先程の事を教えようとしてるんですか?」
「きっと……そうだね、スティナちゃんより『殺し合い』を知っているから
たぶんそれだね……でも、あの子があそこまで拘るのはスティナちゃんに
あるかもしれないね」
「……? どういう事ですか?」
「それはね、スティナちゃんの純粋な気持ちがあの子を変えたのかもね
ハンナもああ見えて、『殺し合い』には慣れてしまっているのかもしれない
だけど、ハンナも『殺し合い』と『戦い』の区別ぐらいわかっているはずだ」
「人間と言うのは欲に強い生物、偽善者だらけなら、殺し合いなんて起こらない」
スティナがそう言った時、アスクは驚いた表情でスティナに話かける
「どうして……その言葉を?」
「え? 前に『リドラー』さんと言う方が言っていた言葉です」
「ほぅ? そのリドラーって人は知らないけど、その言葉は有名な言葉でね
正式な……いや、その言葉の本当の意味を知っているかい?」
「いえ? 本当の意味ですか?」
「そう、人と言うのは自分勝手になる事があり、どうしても、それが欲しい時
自分の欲がでる、それは相手を関係なく、何かを引き起こす、もちろん
人間全員が偽善者なら、それこそ武器なんていらない
それでも戦い……殺し合いが起こるのは、心の在り方なんだ」
「心の在り方って……それこそ十人十色じゃ?」
「その通りだね、だからこそ、先程の言葉がある、世界が偽善者だけなら
平和なんだから……まぁ、ようは……戦いじゃなく『訓練』に置き換えれば
いいだけなのだけど、あの子、フィリシアさんにはそれがないみたいだね」
「アスクさんは『一陣の薔薇』を知っているんですか?」
「ああ、知っているよ」
『一陣の薔薇』
フィリシアが傭兵時代に付けられた異名、レイピアで相手の急所
喉元、心臓を一突きで殺し、その返り血で薔薇のように服が真っ赤に染まる
それは『ブラッディドレス』と言われたミヤと似ている事もある
もちろん、この土地とミヤ達がいた土地と関係はまったくないのだが
もしかしたら……ミヤもこうなっていたのかもしれない
それは、スティナがミヤと出会った事でその状況が起きなかった
フィリシアに至ってはそれはなかった、だからこそ、この異名が付いたのだろう
蛇足だが、ミヤは『一陣の薔薇』に付いて何一つ知らない
「まるで、ブラッディドレスと同じ……」
「ブラッディドレス?」
「あ、いえ……なんでもないです、ミヤは『一陣の薔薇』を知っていたのかな?」
「いや、知らないだろうね……」
アスクはそこまで言った所で、ミヤとフィリシアの戦いは決着に近くなっていた
「……ミヤだっけ? あんただって殺し合いぐらいしたことあるでしょ?!」
「あるよ?」
「だったら、私がやろうとした事はわかるはずじゃないの?」
「じゃあ、今は何をしているの?」
「はぁ? あんたが殴ったり蹴り飛ばしたからやり返そうと……」
「そ、これは『ただの喧嘩』、さっきのはその延長線上、ただの訓練よ」
「訓練って……片方が怪我したのに、こっちは」
フィリシアのその言葉にミヤは腕を組み、フィリシアに向かって言う
「訓練に怪我は付き物よ、それも致命傷じゃない、そもそも怪我をするのは
自分の力量が足りなかっただけ、傷は勲章って言うでしょ?」
「そうだな、この程度の傷なら、何日かで治るさ」
傷だらけのアスミは笑顔でフィリシアに向かって言う、そして……
その一瞬でフィリシアは冷静になり、辺りを見回すと、フィリシアに目線が
集中している、その目線は人によって違う
その光景を見た時、フィリシアはやろうとした事の意味をやっと理解する
「……なんだ、それだけの事だったのね」
「そうだな、それだけのことだ、やっと理解できた? 戦闘狂?」
「その戦闘狂はやめてくれないかしら? ミヤ」
「そうだね、フィリシア」
2人が笑顔でそう言い合ったのを確認するとフィルナは武器を構え
ハンナに向かって言う
「さて……戦い自体はハンナ達の勝ちよ、ここからは特別戦
そうよね? アスク」
「え? まさか……私とフィルナが?」
「違うわよ、私とアナタ、ハンナと誰かのペアマッチ
親子対決なんて楽しそうでしょ?」
フィルナは笑顔でアスクにそう言うと、アスクは溜息を付きながら
武器が置いてある所からバスタードソードを取り、ハンナに言う
「まぁ、そう言う事だ、親子対決……見せてくれ、ハンナの強さ
いや、ハンナ・アスミルとしての強さを」
それは……親から子供送る戦い、もちろん、戦いが意味ある物かが知らないが
アスミル家に置いて、長らく戦いの事があるため、戦って伝わる思い
それを2人は伝えたいのだろう
アスクはフィルナの横に立ち、剣を両手で前に構えると、フィルナに耳打ちする
「本当はハンナにまた出て行ってほしくなかったんだろ?」
「その通りよ、もちろん……どこかの旦那もよ」
フィルナは目を瞑り、微笑みながらそう言うとアスクは『申し訳ない』と
笑顔で謝る、その後、アスクはさらにフィルナに言う
「しかし……君も不器用だね、こんな風にハンナに伝えるとは」
「そうね、だって私はこれだけしかできないから……」
「そうか、じゃあ私も君に付き合おう」
「ええ、お願いするわ」
フィルナとアスクが武器を構え、ハンナが前にでるのを何も言わずにまっている
その対決に胸を躍らせながらハンナはある人物に話かける