第145話-刺突剣同士の戦い-
「で、あなたの異名はどういう事があって付けられたのかしら?」
フィルナは笑顔でレイピアを右手に持ち、先のほうを肩ぐらいまで持ち上げた
左手で支えるように持つと、フィリシアに向かって言う
もちろん、先程の会話は少なからず聴こえていたはず、だがあえて
フィルナがここで先程の話をだしたのは、精神的にフィリシアを追い込むのが狙い
「さぁ? もしも私に勝つことができましたら、教えてさしあげます」
「私を誰だと思っているの? フィルナ・アスミルよ」
「知ってます、刺突剣使いの中で知らない者はいないとまで言わせた人
現役を引退してもなお、師匠と仰いで家を尋ねる者は後を絶たない」
「あら、よく調べているわね、まるでハイエナのように」
「ハイエナは弱った獲物を横取りするための用語です、それを理解してます?」
「……もちろん、知っているわ」
フィルナは少し苦笑をしたような顔をするとフィリシアからそっぽを向くように
横を向く、そして、顔を引き締めると、フィリシアを見、武器を構え直すと
フィルナはフィリシアに話かける
「……そろそろ始めましょう、時間が無くなるわ」
「もちろん、ハンナさんの分まで頑張らせていただきます」
そう言うとフィリシアはレイピアは構える
その構えは、右手に持ち、先端を地面に向ける、刺突剣の持ち方は人により違う
刺突剣と呼ぶ者もいれば、レイピアとも呼ぶ者はいる
それこそ何通りの武器の持ち方があり、戦い方がある、それはどの武器にも言えるが、刺突剣に至っては、それが一番変わりを発揮する武器になる
「そう、あなたはその武器の持ち方ね、では……行くわよ」
フィルナはゆっくりとそのままの構えでフィリシアに向かって歩いてくる
まるで隙だらけにも見えるが、フィリシアから見た、フィルナに隙はない
それこそ、その態勢に攻撃を振れば手厚い歓迎をされる
そんな理由からフィリシアも、構えた姿勢のまま、動こうとはしない
『先に仕掛けたほうが負ける……でも、あの武器……やっぱり見世物……』
フィリシアは長く刺突剣を使っている分、武器を見極める事はできる
できると言っても刺突剣……レイピアぐらいなのだが……
しかし、見世物と言われる武器について、人によって捉え方は違う
-見世物武器-
飾り武器、気品用、呼び方は様々ある、豪華な飾りや高級な物が付けられた武器
高級な家や、王宮などに飾られ、見る者を魅了するために作られる
そのため、耐久面にはものすごく難があり、簡単に折れてしまう
戦いで使おうとすれば一撃で折れてしまうような、そんな脆さである
そんな武器をフィルナが進んで使ってくるようには見えない
だからこそ、フィリシアは更に警戒している
「どうしたの? かかってこないの?」
フィルナは笑顔でフィリシアに向かって距離を詰める
フィリシアは後ろにゆっくりと歩きながらフィルナとの距離を離す
しかし……フィリシアが下がった限界の場所、即ち、ハンナ達が立っている場所
そこまで、フィリシアは距離を詰められてしまったのだ
「……私の気迫に負けたのね、フィリシアと言う人物はたいした事なかった
それが今、証明された……あなたに対する信頼もここで終りね」
「それはどうでしょう?」
「何が言いたいの?」
「フィルナさん、私がただ、後ろに下がっているだけだと思ったんですか?」
「……」
フィルナはその言葉に乗らず、フィリシアから目線をずらさない
しかし、もしもここで目線をずらしていたのなら、フィルナは負けていただろう
「ありがとうございます、目線を私に向けて」
「?!」
フィルナがフィリシアの発言と笑顔に、『今起きた現象』がわかる
それはフィルナが履いている赤いハイヒール、戦いにハイヒールを履く当たり
フィルナは誰よりも上にいたいと思わせたいのだろう、それが逆に痛手でなる
ハイヒールの支えとなる部分、かかとにある部分が左足のみ、砕け
フィルナはバランスを崩す
「……私の勝ちです」
フィリシアはフィルナに向かってレイピアを構え、お腹めがけ突き出す