第137話-メイドの神髄-
そしてそれから数年過ぎ……ハンナは3人のメイド達によって数々の教えを
教えて貰い、徐々に身に付けて言った
そして、ハンナが16歳の誕生になった時、母親のフィルナに部屋に呼び出され
ハンナはフィルナの部屋を尋ねる
「なんでしょうか? お母様」
「やっと来たわね……ハンナ、あなたにはお見合いをしてもらいます」
「……は?」
「は? ではありません、アスミル家には後継者がハンナしかいません
だから速く結婚してもらい、子供が欲しいのよ」
「それだけために私を見も知らない人と結婚させるんですか?」
「見も知らない? それなら合わせればいいのかしら?
一応アスミル家は高貴な家で有名だから寄ってくる人は多いのよ」
「その寄ってくる人と自分の娘を結婚させるんですか……」
「あなたは相手が顔が良くてお金持ちならいいのでしょ?」
「何時そんなことをいいました……私は私の好きな人と結婚したいんです」
「今はいないのでしょ?」
「いないけど……」
「それならいいじゃない、さぁ……お見合いに日程を決めましょう」
フィルナは既に用意しておいたお見合い用の資料や写真を用意しだす
もちろん、相手側からのお見合い資料は既にフィルナが持っている
それをハンナが見た瞬間……ハンナの中で何か切れた音がした
「……やってられない」
ハンナはその一言を言い、フィルナの部屋を出、自分の部屋に戻ると
相棒となった練習用トンファーとある程度のお金をポケットに突っ込み
部屋を出ようとした時、扉の所にナリアが立っている
「邪魔しないで、私はこの家を出る」
「ついに限界ですか……奥様は自分勝手ですからね
まぁ、無理はないと思いますよ」
「じゃあ、そこをどいて」
「それはできません、これを渡さないといけないですからね」
ナリアはメイド服の前ポケットと後ろで両手かくしてしたある物を渡す
「これは……?」
「これは私から、その服だとばれやすいのでどこかで着替えてください
あと、これはカナから……お腹が空いたら食べてとクッキーです
で、これはアスミから……手作りのトンファーですね」
「なんでここから逃げ出そうとしてる私に……?」
ナリアは笑顔でその物をハンナの両手に渡すとナリアはハンナを抱きしめ
ながら言う
「だって大切な私達の友達ですよ? 困った時は助けてあげるのが友達
ですよね……違いますか?」
「友達……? だってあなた達は私の遊びと言う名目に付き合ってくれたんじゃ」
「あら、遊んだのにお友達ではないなんてちょっとがっかりです
私はハンナの事をずっとお友達だと思っていたのに」
「……ありがとう、ナリア」
「いいえ、さて……アスミとカナが奥様を『適当』に止めてますので
今のうちに逃げてください、今なら……」
『今なら港に船が止まっている、その船は警備が手薄だから簡単に忍びこめる』
ハンナを抱きしめていたナリアはハンナから離れて喋り出した時
通路と通路の間ぐらいから男性らしい人物が立っており、ナリアに言う
その声はナリアだけに届くように喋る男性の声、その声に答えるように
ナリアはハンナに聴こえないように小さい声で言う
『ありがとうございます、旦那様』
「ナリア? 何か言った?」
「いいえ、今なら港に船が止まっているはずです、その船から外に出てください
ただし……楽しい旅ではないですよ? 気をつけて行ってきてください
私達は『ここ』にいますから、遠慮なくまた戻って来てください」
そうナリアは扉の前から体をどかし、横方向に立つとハンナに向かって
笑顔で一礼すると、声をかける
「いってらっしゃいませ、お嬢様、お嬢様の旅が素敵な物でありますように」
「うん、ナリア……いってきます」
ハンナは扉から走り出し家の中を駆け抜ける、それを見送る形で
ナリアは微笑んだ表情で溜息を付き、誰もいないであろう通路に声をかける
「助かりましたよ、まさか旦那様が助けるとは……」
すると誰もいないはずの場所から声が聴こえる
「そうかい? ハンナがやっと自分の道を歩みだしたんだ、良い事じゃないか
私もそろそろ……出かけようかな」
「お早い御帰りを」
「そうだね、ハンナと同じぐらいにこの街に戻ってこれるといいな」
「はい、わかりました、いってらっしゃいませ、旦那様」
「ああ、いってくるよ、ナリア」
その声を最後に男性の声と気配はこの場所にはもういない
ナリアは一息つき、メイド服を直すと、歩き出す
「さて、今日からあの奥様の相手っと……頑張りましょうかね」
ナリアは両腕を上に伸ばすとアスミとカナが時間を稼いでくれてる場所に向かう