第136話-ナリアの教え-
「さて……最後は私の番ですね」
ナリアはゆっくりとハンナに近づくとその場に緑色のシートを引く
それは、汚れてほしくない物などを置くために屋外用のシート
それにナリアは座りハンナにも座るよう左手で手招きをする
ハンナはそれに従いそのシートにぺたん座りする
とナリアは横座りをしながら姿勢を正す
「ハンナ、私が教えるのはメイドとしての嗜みとちょっとした雑談です」
「……それって鍛錬には関係ないよ?」
「関係ありますよ、必ずしも自分の家が戦いの場になるとは限りません
敵の家に忍びこんだり、潜入みたいなことをするかもしれません」
「そんなことしないと思うよ……」
「まぁ、覚えておいて損はないので、ぜひ聴いてください」
その話を少し遠くで聴いていたカナとアスミは話をする
「ねぇ、アスミちゃん、ナリアちゃんってここに来るお客さんの評判で
一番高いメイドさんだよね」
「たしかにそうだな……この家には後7人ぐらいいるがナリアの評判
だけは、ずば抜けて高い、愛想が良いだけなのかもしれないがな」
「そうかなぁ? 私的には可愛いのもあると思うけど、一番はやっぱり
相手のやろうとすること、して欲しいことを先にできちゃうところかも」
「……思い出してみれば、ナリアが一番お客様の荷物持ったり、椅子を引いたり
いろいろしてるな……」
「うんうん」
それを話している2人の離れた位置でナリアとハンナは話を始めるが
2人ともアスミとカナの話が耳に入ることはない
「ハンナ、人の家で自分を誤魔化す事が大事なんです」
「……なんで人の家に言ったら自分を誤魔化さないといけないの?」
「もしかしたらそう言う仕事があるかもしれないし、それに人は
第一印象を大事にします、それを相手に与えることが大切です」
「えーと……」
「そうですね、ハンナは私を最初に見た時の第一印象ってなんでした?」
「え? 綺麗な歩き方をするメイドさんで笑顔で仕事してた……?」
「なるほど、そういっても貰えるのは嬉しいですね、でも、もしかしたら
実は作り笑いだったのかもしれないんですよ?」
「え?! そうだったの?」
「いいえ、私は笑顔を絶やしません、これは自慢できることです
ちなみにですが、第一印象によって相手のイメージはある程度できて
しまう物なんですよ」
「できてしまう? 例えばどんな感じなの?」
「そうですねー、例えば……あの人は真面目そう、あの人は無口
口を聴いてみたは良いけど、なんか怒ってる口調で話辛かった
次は話かけるのやめようかな……とか」
「たしかにそんな人だと、次に話をする気はあんまりないかも?」
「そうですね、もしもそれが一番初めだったら、その人と口をきく
のをもうしなくなってしまうかもしれないです」
「なるほど……えっと……メイドとしての嗜みは?」
「それはメイド服を着た時は笑顔を絶やさず、まるで普段から
この人が?! みたいな感じをだすといいです」
「ナリアはそれができてるの?」
「私はそれを普段からやっています、と言うか私服の時でも
笑顔を絶やしていませんよ?」
「ナリアの話は難しくかも……もっと面白いお話をしてよっ」
「あらら……今のハンナお嬢様にはまだ難しかったですか
えっと……面白い話……あ、実は奥様が……」
「え? お母様が?」
「実はですねぇ……」
ナリアがフィルナがお客様の前で起こした不祥事を面白おかしく
ハンナに聴かせ始める、それを遠くから見ていたアスミとカナは気になり
ハンナ達が座っている所まで行くと一緒に座る
そしてナリアの話の他の皆が笑い、話を続ける……それは夜まで続き
それもフィルナには『アスミとカナ』の真面目な鍛錬だけを見られていたので
ナリアの鍛錬は見られていない、この事によってフィルナはメイド達に
ハンナの面倒を見ることを正式に決定した。