第134話-カナの教え-
一番始めに裏庭に着いたのは『カナ』
その後はアスミ、そしてナリアとハンナである
「やったぁ、私が一番だね!」
「自分が一番早めにでておいて……一番も二番もないだろ……」
「まぁまぁ……一番はカナが教えるって事でいいじゃん」
「うん、私もナリアと同じ意見で、カナに教えてもらう」
「うんうん、じゃあ私はー武術を教えるよー」
「武術って殴ったり蹴ったりするやつだよね?」
「うん、でもね、もしも武器が無くなっちゃって体1つになっちゃった時
一番頼れるのは自分自身なんだよ?」
「でもカナは体が細くて……殴っても強くなさそうだよ?」
「体が大きいから、腕が太い、握力があるからって強いには当てはまらないの
自分の体をどう生かして相手を倒すか、そこが大事なんだよ?」
「……? えっと……パンチやキックじゃだめなの?」
ハンナはその場で右手を突出したり、右足を前にだしたりしてカナに言うが
カナは首を横に振りながらハンナに言う
「違うよ、ハンナちゃん……それだけじゃ襲われた時に簡単に対処されちゃう
んーと……そうだね、アスミ、ちょっと私に殴りかかってよ」
「殴りかかるって、思いっきり腕を構えて襲い掛かればいいのか?」
少し遠くで見ていたナリアとアスミのうち、カナはアスミを呼び
自分に襲いかかってこいと言う、それはハンナに見本を見せるため
しかしアスミとカナ、どうみても強いのはアスミに見えるのだが……
「いくぞ、カナ」
「うん、いつでもいいよ」
カナはハンナを少し離れた場所に連れてくと、元の位置まで戻り
カナはアスミに前に立つが、構える事はしない
しかしアスミはその状態のカナに殴りかかる
だが、アスミのパンチはカナを捉える事はない、顔に当たる寸前の所で
顔を横にさけ、アスミの攻撃を避けると後ろにバックステップする
そしてカナはアスミに言う
「もうちょっと……連続でもいいかなー、これじゃあ見本にならないから」
「言ったな……じゃあ遠慮なしで行くぞ」
「どうぞ~」
アスミはカナの目の前まで一瞬で歩幅を狭め、カナの顎めがけ右手アッパーを
しようとする、しかし……カナはその攻撃の後ろに軽く体を下げるだけ
それを読んでいたのはアスミは空いた左手でひじ打ちしようとする
だが、それもカナは右手の掌で防ぐ、防がれたアスミは笑顔を浮かべながら
その状態で回し蹴りをする、しかしその回し蹴りすらもカナは左手で防ぐ
だがこれによってカナの両手は使えなくなった
それを好機と呼んだアスミは再度左からの回し蹴りをするが
今度はカナは防がず、その足を左手で取ると反対側に足を掴んだまま投げる
その行動に対処できなかったアスミは綺麗に投げ飛ばされ、地面に背中を付ける
「こんなとこかなー? どう? ハンナちゃん、わかったぁ?」
「えっと……腕や足にもいろいろな使い方があるって事?」
「うん、簡単に言っちゃえばそうだね、でも……私が言いたいのは
最後の投げた部分、あれはねー、アスミの体重を利用したんだよ」
「っ……まぁ、そうだな、私の回し蹴りの反動をそのままに
投げる事でカナは最小限の力で投げ飛ばす事ができたのさ」
ゆっくり体をお越し、服を叩きながらアスミは立ち上がると
カナのやった事を説明する
「……?」
しかしその言葉を今のハンナが理解できない
そんな状態のハンナにナリアは近づき、説明する
「ようは暴力だけに頼っちゃだめ、相手の目を見て、行動を見て
相手が何をしたいのか、何をしてくるのかを読まないとだめって事」
「そうだな、ナリアの言った通り」
「うんうん! ナリアちゃんが言ったとおり洞察力も大事なんだよー」
「ナリアの言い方わかりやすかった」
ハンナは正直な感想を述べるとアスミとカナは寂しそうな顔をする
それを励ますようにナリアが2人に言う
「2人は貴族の家だからね、人に教えるのが得意じゃないの
だからね、この2人が慣れるまでハンナ自身も理解できるようになるといいね」
「うん、わかった、私頑張る」
それを聴いたアスミとカナは笑顔に戻り、アスミがハンナに話かける
「次は私の番だな、武器について教えよう、奥様はレイピアぐらいしか
教えてくれてないだろうし……ナリア、練習用の武器用意するの
手伝ってくれないか?」
「はーい」
アスミとナリアは裏にある大きな倉庫に練習用の武器を取りに行く
それを待っている最中、カナはハンナの横まで歩き声をかける
「ごめんね、私教えるの上手くなくて……でもね、今教えた事は
大事な事なんだよ、だから何時か……役立ててね」
「うん、約束する、カナと一緒に鍛錬……?
するの楽しいからまた教えてね」
「うんっ!」
カナはハンナに左の手の小指を『指きりしよっ』と言う
ハンナはその言葉に頷き、右手の小指をだし、指きりをする
その光景を戻ってきたナリアとアスミが微笑ましい表情で眺めている