第133話-過去の物語-セカンドフェイズ
「ねぇ、ナリア」
「なんでしょうか? ハンナ」
「名前を呼び捨てで呼ぶなら……敬語を使わなくていいよ」
「いいえ、敬語は使わせていただきます、メイドたる者敬語は崩しません」
「なにそれ……メイドには敬語を使わないといけない義務とかあるの?」
「ありますよ、メイドの歩きは両手を前に合わせ、歩幅を短く
服の乱れはなく、そしてカチューチャが曲がる事はならない
いろいろなルールがあるのですよ」
「そんな物なのね、じゃあナリアが敬語を使うのはメイドだから?」
「はい、その通りですよ……さて、ここが『例の人』がいる場所ですよ」
ナリアに連れられ歩いてきた先の扉には何も書かれてもらす
それこそナリアに案内されないかぎりハンナでもここに辿り着けるか怪しい
「入りますよ」
「はい、どうぞ~」
部屋の中からはどこかおっとりとした感じの声が聴こえていた
ナリアが扉を開け、中に入るとそこには2人のメイドが椅子に座り
白色のカップの中身の飲み物を飲んでいる
年齢からしてナリアと似たような年齢だろうとハンナは予測する
「で、ナリアちゃん、後ろの子は誰~? もしかして妹さん?」
「違うわよ、カナ……この子は『ハンナ・アスミル』」
「へぇーハンナちゃんって言うんだぁ……え? アスミルって……
もしかして奥様の娘さん?!」
「そうよ、実は私と仲良くなったからここに連れてきちゃった」
「連れてきちゃったって……奥様にばれたら怒られるのは私達だぞ」
カナと呼ばれた女性の反対側に座っていた女性はカップを木のテーブルの上の
花柄の入ったピンクのカップ置きに置くと、ナリアに静かな声で言う
しかしナリアは笑いながらその女性に言う
「別にいいじゃん、怒られてもさ」
「ナリア……お前は何を考えている?」
「え? お嬢様であるハンナ様が家で楽しく遊べる方法を探そうことかな」
「は? お嬢様が家で楽しく遊べる方法だと?」
「そう、あ……もしかしてアスミは遊び方知らないの?」
「……仕事場で遊ぶ事は考えないな、しいては人の家だし」
「まったくアスミは頭が固いなぁ……ハンナ、この頭が固い人が
アスミ、たしか『アスミ・ハーベル』、でこっちのおっとりさんが
『カナ・ココアット』です」
ナリアが左手の掌で2人の名前を順番に言いながら教えてくれる
『アスミ・ハーベル』
年齢はナリアと同じ20代、髪型はロングの赤、服装の乱れはないが
どこか男勝りな部分がある、しかしハンナの母親であるフィルナと
アスミの家の母親が知り合いであり、貴族の家の娘だが……
この性格なのか、貴族として働く事を嫌っているが根はやさしく
メイド達を任されるほど面倒見は良い
『カナ・ココアット』
年齢はアスミとナリアと同じ20代、髪型は金色のロング、貴族の家で働いた
事もありメイド服を着こなしている、しかし……
性格はおっとりで喋り方もゆっくりさらにどじっこであり
よく物を壊し、フィルナに怒られているがフィルナがカナをクビにすることはないそれは真面目さが感じ取れるからなのだろうか、それはフィルナにしかわからない
『ナリア・バートン』
年齢は20代、髪型は茶色のロング、服装の乱れはない、カナやアスミと違い
平民の家出身、性格は元気、そしてなにより楽しい事が好き
仕事も問題なくできるが、さぼり癖があり……たまにアスミにバレて怒られるが
フィルナには見つからないという運のいい子である
「えっと……金髪で大きい胸の人と男勝りのメイド……?」
ハンナは名前で言わず、2人の見た目……と会話内容でそう呼ぶと
ナリアは大声で笑い出す
「あはははは、金髪の大きな胸と男勝りのメイドだってさ」
「……ナリアちゃぁん、私はたしかに! ナリアちゃん達より胸は大きいけど
金髪の大きな胸なんて言われたことないよぉ~」
「私もだな……男勝りとは……ナリア、お前何かお嬢様に言ったろ」
「言ってない言ってない、今2人を紹介したばかりなんだから」
「……まったく、変な第一人称をお嬢様に与えるなよ」
「えー……私、変な紹介してないのに」
3人が楽しく話をしている姿を見たハンナはその光景をとても楽しそうに見えた
そしてハンナはカナとアスミの前まで歩く
しかし、この頃のハンナの身長は150cmぐらいであり、ナリア含めメイド達は
170cm前後、あきらかな差があったが、メイド達は膝を降り、ハンナの目線に
あわせ話やすくしてくれる
「お嬢様、あいつの言う事を真に受けてはだめです、私はアスミと言います
困ったことがあったら遠慮なく私に頼んでください」
「私はーカナって言いますー、ハンナお嬢様、何かやりたい事あったら
私と一緒にやりましょーねー」
「よろしく……あとハンナでいいよ? ナリアもそう呼んでるし」
「そうそう、ちゃんと許可もらってるし、奥様の前で言わなければ
大丈夫でしょ?」
「本人がそう言うならいっか、ハンナは何かしたい事あるのですか?」
「えーと、遊びたい」
「遊びたいか……奥様に言われた鍛錬もあるし、そんなに遊ぶ時間は」
「それならー私達がハンナちゃんの鍛錬すればいいんじゃなーい?」
「……カナ、お前は武器を何か使えるのか?」
「武術だけならできるよぉー」
「ほぅ、それは意外だな、私はある程度の武器の扱いならできるぞ
ナリアは何かできることはあるのか?」
「んー人の家で素性を隠す方法とか、メイドとしての嗜みとか?」
「それは鍛錬に役立つか微妙だな……まぁ、ハンナが楽しめるように
いろいろやってみるかっ」
「そうだねぇーハンナちゃん、一緒にがんばりましょー!」
「そうね、ハンナ、これからよろしくおねがいしますね」
3人のメイドはハンナの目線で笑顔でそう言う
それはハンナに取って今まで感じ取れなかった何かをこの場所で見つけた
のかもしれない、そんな場所である