第125話-エステとフィリシア-
『たしかに……頼まれたから俺はこの子をアスミル家に連れて行くが
これは……酷くないか?』
エステはフィリシアをおんぶした状態で闘技場を出、アスミル家を目指すべく
歩いていく……そして街の中を歩いていると周りからヒソヒソ話がエステの
耳に入る
「ねぇ……あれ、大丈夫? おんぶされてる子お嬢様みたいだけど」
「どうかなぁ……おんぶしている男の服『貧相』ぽいし……」
「だよねぇ……警備兵とかに報告したほうがいいのかな」
そんなヒソヒソ話がエステの耳に入り続ける……しばらくしたら本当に警備兵が
やってきて捕まるんじゃないかと思うようなそんな空気になるエステである
それからしばらく歩いた頃……物の見事に警備兵の男性2人にエステは話かけられ道のど真ん中で警備兵2人と女性をおんぶしている貧相な男性の図になる
「通報があったのは君か……で、その子はどこから連れてきたんだ?
それとも誘拐か……それならここで倒すしかないな」
「いや……俺はこの子の知り合いだ、疲れて寝てしまったから
家まで運ぶためにおんぶしてるだけだ」
エステは警備兵にそう伝えるが……警備兵は信用してないらしく
疑った表情のまま、エステの目の前から退こうとはしない
「……やっぱり怪しいな、少し話をするために詰所までご同行願おうか」
「説明したとおりだって!」
「怪しい奴はほとんど嘘を混ぜて言うんだよ」
そんな時、大声によって起きたのかエステの背中で寝ていたフィリシアが目を覚まし辺りを見回すとエステに話かける
「……どうなってるの? 何かあった?」
「こいつらが俺が君を誘拐したって言ってるんだよ、説明しても信用しないし」
「あー……そう言う事、そこの警備兵さん達、この人に害はないですよ
至って普通の青年です、私が疲れて寝てしまったのを運んでくれてたんです」
「本当かい?」
「本当です」
「怪しいな……こいつに脅されてるじゃ?」
その時、フィリシアはエステの背中から降り、目の前の男性の胸ぐらをつかみ
睨むように小さな声で言う
「いい加減にしたら? あんたの点数稼ぎで時間の無駄
しいては私の睡眠時間と……この人の背中1人じめできないじゃない」
「……失礼しました」
フィリシアが警備兵から手を離すと怯えた様子でもう1人の警備兵を連れ
そそくさとその場を後にする、先程のフィリシアの言葉を聴こえなかったのか
エステは笑顔でフィリシアに話かける
「助かった……あやうく詰所まで連れていかれる所だった」
「え? ああ、そうだね……しかし今の騒ぎで目覚めちゃった
えーと……少しデートしましょ」
「名前わからないんだな、まぁ……俺もだけど、えっと
俺の名前はエステ、『エステ・クレイム』だ」
「エステさんね、りょーかい、私の名前は
『フィリシア・アーティベルク』、年齢は18」
「18か……俺もちょうど18だ、同い年同士仲良くしよう」
エステはそう言うと右手を差し出しながら
笑顔でフィリシアに握手を求めるとフィリシアは恥ずかしそうに握手すると
小さな声で言う
「こちらこそ……よろしくね」
その後、フィリシアは小さな声で『私を女の子って見てくれて嬉しかった』
と言ったのだが、エステがそれを聴きとる事はできなかった
「さて、エステさん、デートしましょ、デート」
「起きたと思ったらそれか……まぁ、時間もあるし
何か買いたい物があったら付き合うぞ?」
「そうね、じゃあせっかくだから、エステさんの服買いに行こう
だって貧相って言われちゃってたし」
「おい……もしかして起きてたのか?」
「へ? ……起きてないから、今さっき起きたばかりだから」
「じゃあなんで貧相って言われたの知ってるんだよ」
それはフィリシアがエステの背中が居心地が良く、寝ているフリを
しばらくしてたとは言いづらく……小走りしながら後ろを振り向き
エステに向かって笑顔で言う
「女の感かなっ、まぁ……行こうよ」
「……そういうことにしとくよ」
エステは右手で頭をかきながらフィリシアの後に続き歩いていく