第124話-完成されし武器-
それから、また数時間過ぎ、窓の外が夕焼けに照らされた頃
鍛冶屋の男性が2つのナイフを持ち、スティナの前に立ちと武器の説明をする
「完成したぞ……これが頼まれた武器だ」
その形状は『ナイフ』であるが、ナイフに見えない
持ち手部分は最初に見せてもらった通り、木を使われており
グリップ、持ち手部分も改良されて、刃部分との境が見えないように調整され
刃はまっすぐと伸びているが刃は細く短い
そしてなにより目を引くのが、そのナイフを仕舞う2つの鞘
それは茶色の革を使ったナイフ入れ、それも中に仕舞う刃の部分はそのまま
でも収納可能で中の革が斬れることはない
「すごい……この鞘、一体なんの革を使っているんですか?」
「これか? これはリザードと言われる魔物の皮だ
見た目は緑色の鱗なのだが、鱗部分を削ると肌色の物がでてくる
それに茶色の染色し、厚い部分を削って鞘入れにした」
「リザード……」
「リザードは龍を小型にした魔物で、4本足で水辺周辺に住んでいるんだよ
だけど凶暴で肉食だから、狩りに行くものも少ないかな」
スティナがリザードと言う名前を聴いて首を傾げた直後
アスクが真横でスティナに説明をしてくれる
その説明を終えたのを確認すると男性はスティナにある物を見せる
「あと、これ……頼まれた物だ、これでいいか?」
スティナが男性が指差す部分を見るとそこにはスティナが言った通りの
ミヤの名前が銀色で掘られている、黒い刃に銀色の名前
名前が目立ってしまうが……その目立ちこそ
この武器を光らせてくれるようなそんな気持ちになる
「えっと……この武器の名前はなんですか?」
「名前……? ツインダガーじゃだめなのか?」
男性が首を傾げながらスティナの質問に答えると
アスクは溜息を付き、左手を頭にあてながら言う
「武器に名前ぐらい付いてる物だろ……ショートソードにしかり
本に載っている武器にだって名前はあるだろ」
「そう言う物か……じゃあ、スティナ……君が付けてくれ
これは……スティナの物だから」
「え?! 私がなずけ親に?! えっと……」
「ふと思いついた物で良いんだ、それこそがこの武器に与えられた
たった1つの名前であり、そのお友達と共にあるための名前なのだから」
アスクは鍛冶屋の男性が両手で持っているツインダガーの上に片手を置くと
そうスティナに笑顔で伝える
「……じゃあ、えっと……『キリング・オブ・ダンス』ってどうでしょう?」
「キリング・オブ・ダンス……戦場の踊りか……なるほど、スティナちゃんは
この武器を持ったお友達が戦いの場で踊るようにこの武器を振る姿を
思い浮かべたのか……良い名前だと思うよ、な?」
「ああ、俺もそう思う、ではこの武器『キリング・オブ・ダンス』を
スティナ、君に託そう」
「はい、ありがとうございます」
スティナは男性からナイフ2本を受け取ると、背中の腰部分に2本取り付ける
その姿をみたアスクは微笑みながらスティナに言う
「スティナちゃんはダガーも似合う、ロングソード2本なんて物騒な物を
持たないで、ナイフにすればいいと思うのに……そういえば、先程の大会で
使ってた武器は闘技場に投げ捨てて来たのだが……まぁ、いっか」
「……俺が後で回収に行こう、捨てられた武器にも命はある
俺はそれを綺麗に作り直して、ここに並べるさ」
「売る気がまったくないのにか?」
「あるさ、スティナみたいに『物の価値』がわかる人間になら売るさ
それ以外のどうでも良い客なんていらねぇよ」
「お前は本当に……よくそんなんで店やってられるな」
「お前と違って金には余裕あるのさ、今なら家1つ買える」
「……意外と武器売ってるじゃないか」
「そんな事より、スティナを待たせているぞ……行かなくていいのか?」
「おっと……そうだった、今からスティナちゃんの服とかを買いに行くんだ」
「そうか……まぁ、気が向いたらスティナを連れてまたこい
その時は……飲み物の一杯でもだしてやるよ、じゃあな」
そう言うと男性は頭をかきながら奥の扉へ姿を消す
それを見送った後、アスクはスティナの肩を叩き言う
「さて、スティナちゃん、約束の武器と、もう1つの約束
服屋を案内しよう」
「はい、おねがいします」
アスクはスティナを連れてお店を出て行く
その後のこの場所はどこか静かで……まるで誰もいなかったような
そんな空気を醸し出しそうな……そんな一部屋になる