第122話-鍛冶屋の主人-
「さて……中に入ろうか」
アスクはこの土地には珍しい木の扉を入口を触りながらスティナの方へ向くと
微笑みながらそう言う、スティナはその言葉に頷き、アスクが開いた扉の
中へ足を踏み入れると……そこは十二畳ぐらいの大きな部屋があり
壁には剣、槍、斧など数々の武器が飾られている
そして、そのお店のカウンターらしき場所までアスクが歩くと店の中で
誰かに声をかける
「やっと来たぞ、俺の依頼なんだが、この子のために武器を作ってあげてくれ」
すると、奥の木の扉が開かれ、茶色のぼさぼさの短い髪を右手でかきながら
あくびをした男性はアスクに話かける
その服装は茶色の服の上下で作業服にも見えるが、髪はぼさぼさ
髭は無精髭があり、清潔感はない
「……あー、すっかり忘れてた……そういえば大会は今日だったな
石もちゃんと用意してある、で……何を作ればいいんだ?」
「俺じゃないよ、この子が頼む武器を作ってあげてほしい
種類は『ツインダガー』、形とかはこの子、スティナちゃんに聴いてくれ」
アスクにそう言われた男性はスティナを睨むようにじろじろと見る
それをしばらく行った後、武器をハンマーなどで打つ場所まで歩いていくと
スティナを手招きする、その行動に少し困惑したスティナはアスクの顔を見ると
『大丈夫、行ってきな』と優しく声をかけてくれたので、スティナは
その場所まで歩く……そして、男性は適当なツインダガーを壁から何個か取ると
スティナの前に並べて……スティナに質問する
「で……どんな武器を作りたい? 基本的なスタンダートはこれ
少し工夫をしたいなら刃を曲げればいい、投げたりするなら短い持ち手
スティナ……だったけ? 君はどの形がいい?」
「えっと……私は『暗殺者』が持つような鋭くてナイフみたいなダガーが
欲しいです、それと長さは……これよりも短いのがいいかもです」
スティナが指さしたナイフは長さ的には『35cm』一般的なナイフとも言える
しかし、それよりも短くと言われると……戦闘用の武器なのか少々悩んでしまう
もちろん、鍛冶屋の主人もスティナの話を聴き、左手を顎に当てながら
何やら考えると……無言と歩き出し、奥にある大きな木の机の引き出しをあけ
大きな紙をだし、机の上にあるペンで何やら書き始める
その光景に茫然としているスティナの横にアスクは近寄り、声をかける
「大丈夫、あいつなら君の要望どおりの武器を考えてくれるよ
見た目は……少々期待外れだが、鍛冶の腕前ならこの街1とも言って良い」
「そ、そうなんですか……でも、私の言い方ちゃんと伝わった……かな?」
「大丈夫だろ、ああやって図面か、スティナちゃんに見せるために書いて
いるんだ、もしも少し想像と違ったのならまた言えばいいだけさ
アイツはスティナちゃんが納得いくまで付き合ってくれる、そう言う奴だよ」
「わかりました」
そう言った後、スティナとアスクは机の上で作業している男性の背中を見て
終わるまで、そこで待機している事にした
それから……しばらくたった頃、男性はスティナを呼び、机の上の紙を
見るように勧める、スティナはその紙を覗き込む形で見ると驚いた
そこには、武器の長さ、形状、持ち手、それに使われる材料
スティナの要望にあった、暗殺者用に鞘は小型の物で持ち運びに優れる形
長さもスティナが想像していた長さ……25cmぐらいの小型の物とぴったり
の図が今、目の前の紙の中に広がっている
「これでいいか? 何か不満があるなら書き直す
刃は持ち手の約2倍、持つ人にもよるが、小刻みに動く暗殺者には
ちょうど良い長さになっていると思う」
鍛冶屋の男性はけしてスティナ自身が使うとは言わない
それはスティナを見て理解したのだろうか、それとも先程スティナを見ただけで
その辺の事を察し、理解してしまったのかはわからないが
スティナは男性に笑顔で答える
「はいっ! 不満はないです、あ……でも1つだけお願いが」
「なんだ? 俺に出来る事ならやるぞ?」
「この武器に名前を掘って欲しいんです、できれば銀で」
「名前か、両方の武器、別々に掘ればいいのか?」
「できれば右手に持つ方でお願いします」
「わかった、で……その名前はなんだ? 今覚えておく」
「名前は『ミヤ・ステイラー』、できれば英語でお願いします」
「心得た、依頼主の依頼通り仕上げる……今は丁度午後三時ぐらいか……」
男性は窓の外の時計塔の針を見て、時間を確認すると材料をそろえながら
スティナとアスクに動きながら聴く
「……そうだな、五時間……いや、三時間で完成させよう
完璧な物を『今日中』に渡したいだろうしな、全力で取り組もう」
「え?! 今日中にできちゃうんですか?!」
「まぁ、こいつなら余裕だろ、簡単武器だけなら30分、1時間もあればできるし
それに……かかる時間は短いがその辺の鍛冶屋の数十倍は丁寧さ」
「そう言う事だ、その辺で時間を潰すのもよし、その辺の丸椅子にでも座って
待っていても構わない、好きなようにしてくれ」
そう言うと男性は作業に入ってしまう、その光景にスティナは驚きを隠せないで
いるが、アスクは言ったって冷静で、端っこ置かれた木の丸椅子を2つ
カウンターの手前まで運ぶとスティナに声をかける
「外にでたってやることはないし、ここで見学や武器を見ているといい
見ている事、どんな武器をあるのか見るのも勉強だしね」
「わかりましたっ」
スティナはアスクに言われた通り、丸椅子に座るとアスクと一緒に壁に
かけられた武器を眺めながら話を始める