第121話-鉄は武器へ、武器は鉄へ-
「ふむ……スティナちゃんは仲間のためにこの大会に出場したわけだね」
「はい、そうです」
「わかった、それなら折角のオーダーメイドだ、一緒に鍛冶屋の所に行こう
そうすれば、スティナちゃんが気にいるツインダガーができるはずだ」
「いいんですか? それなら、ぜひお願いします
あと『アインセット』石ってなんですか……?」
「アインセットはこの近辺で取れるんだが、とても数が少なく流通量は少ない
だが、そのかわりに『耐久』、『切れる』事にに優れた武器を作るのには
とても便利な石でね、普通に買ったら高級武器になるんだよ」
「そうなんですかぁ」
アスクとスティナの会話を遠くで聴いていたエステはフィリシアを背中に背負い
アスクに向かって言う
「おい……この寝てる子はどうするんだよ」
「ん? ああ、その子の寝泊まりしてる宿は知らないな、エステ君
よければ君が止まっている宿にでも連れて行って休ませてくれ」
「俺が運ぶのかよ……て言うか……アス……主催者はどうするんだよ」
「私か? 私は今からスティナちゃんを鍛冶屋まで連れて行かないといけない
だから、その子を事を頼んだぞ……というわけだ、スティナちゃん
鍛冶屋まで案内しよう、付いてきなさい」
「はい、お願いします」
スティナはエステを無視するかのようにアスクに着いて歩いていく
その背中をエステは茫然とした気持ちで眺めると、一呼吸置き
自分が今世話になっている『アスミル家』に向かう事にした
『……俺も男なんだがな、男と女1人にしていいのかよ……
まぁ、俺が信用されているって事か、そう言う事にしとこう』
そう思いながらエステは『フィリシアをおんぶ』したまま闘技場を後にする
そしてアスクは闘技場を出るとスティナの横を歩きながら来た道を戻った後
街の別の方向へ歩いていく、その道中、スティナはアスクに話かける
「えっと……えっと……主催者さんはこの街に詳しいんですね」
「ん? ああ、自己紹介をしてなかったね、私はアスクと言う
この街に滞在してる日は多くてね、覚えてしまったんだ」
「そうなんですかー、アスクさん、ところで賞金の方も貰えるんですよね?」
「おっと……副賞の事だね、はい、『50,000』ナハトだよ」
「ありがとうございますっ」
スティナは嬉しそうに1,000ナハト紙幣が50枚束ねられた札束を花束のように
抱きしめるのを見て、アスクは微笑みながらスティナに質問する
「賞金は何に使うんだい? もしかして欲しい物でもあったかな?」
「はい、お友達の服を買おうと思って」
「そっか……それなら武器のオーダーメイドが済んだら服屋も案内しよう」
「いいんですか?! いろいろありがとうございます」
「いやいや、可愛いスティナちゃんの頼みだ、叔父さんにまかせておきなさい」
「はい……でも、そろそろサングラスは取ってください、目立ってます」
「……ふむ、それなら『こっち』にしよう」
そう言うとアスクはサングラスを胸ポケットにしまい、銀色のメガネをする
始めからそっちすればよかったんじゃないかなとツッコミしかけたスティナだが
合えて、その件に突っ込みするのはやめたおいた
『しかし……武器もお友達のため、服もお友達のため……
この子は他人のために頑張れる子なんだな……よし、服屋に付いたら
私がスティナちゃんに似合う服を買ってあげよう』
そうアスクが思った時、道通りの果物屋の男主人がアスクに声をかける
「そこのお父さん! 隣の娘さんに新鮮な果物食べさせてあげなよ!」
それを聴いたアスクはスティナの顔を見て……思わず吹き出しそうになる
それを知ってかスティナはほっぺを膨らませて怒っているように見えるが
それがまた幼く感じ、さらに吹き出しそうになるアスクであったが
店の主人に『急いでいるから、また来るよ』と片手を上げ、言うと
スティナに謝る
「ごめんごめん、たしかにスティナちゃんは身長と顔が童顔だから
子供に見えてしまったね、そうだ……女性に年齢を聴くのは悪いが
年齢を教えてもらっていいかな?」
「……16です」
スティナは怒ったようにアスクからそっぽを向くとそう答える
それを聴いたアスクは少し腕を組み……1人納得したように歩きだす
それに少し疑問を感じたスティナはアスクに話かける
「何……1人で納得してるんですか、16歳でこんなって笑いたいのですか?」
「いや、違うよ……立派レディなのに子供扱いして悪かったね、スティナさん」
「今頃、さんからちゃんに戻しても変わりませんよ、叔父さんだって子供が
いるかもしれない年齢なんでしょうし……別に構いませんよ」
「そっか、それならスティナちゃんと呼ばせてもらうよ」
スティナが言った子供の部分には触れず、スティナの部分だけ触れた当たり
スティナは少し気になったが……さほど気にする事もないと思い、それ以上
聴く事はなかった……そしてそれからしばらく街の中を歩き
1つの錆びれた感じのする鍛冶屋の前でアスクは立ち止まるとスティナに言う
「ここだよ、名前は『IRON THE WEAPON WEAPON THE IRON』
意味は鉄は武器へ、武器は鉄へ、って意味なんだよ」
『IRON THE WEAPON WEAPON THE IRON』
『鉄は武器へ 武器は鉄へ』
その言葉は武器全てを物語る言葉、鉄から武器は生まれ、武器はまた鉄に戻る
その繰り返しが何千、何万……何十万と言う武器を生み、いろいろな事に
使われ、そして武器の寿命を終えるとまた鉄に戻り、また新たな武器となる
その言葉を理解できる物がこの世界にいるか……武器は所詮武器と思い
使っている人間のほうが多いのだろう、その言葉、意味が理解できる者こそ
この扉を開ける事ができる
「まぁ、昔話の伝承の1つさ……所詮物は物と思っている時は理解できない
それをこの武器屋は証明してくれるのさ」
アスクさんはそう言いながらその鍛冶屋の入口の上にある木の看板を指さし
ながらスティナに伝承と言葉の意味、このお店を教えてくれる