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第119話-高速の剣技-

「じゃあ……ちょっとだけ『暴れ』させてもらうね……!」


フィリシアはスティナに走り込む、それは先程とまったく変わらず

武器を自分の横に構えた、ただの突進のように見える


『……くるぞ、スティナ、フィリシアの最高の一撃が』


「んっ」


スティナは武器を両手で持ち、フィリシアの一撃を抑えようとした直後

観客席らしき場所……先程主催者の男性に連れられて行った場所は

広場から出て階段を上に登った場所にある

そこからエステはスティナに大きな声で叫ぶ


「それじゃ防げない!! スティナ!! 弾き返せ!」


エステさんの叫びの直後、フィリシアは走っていた場所から姿を消す

消すと言っても地面を走っている、それもかなりの速度で体を屈めながら

地面すれすれに顔を付けるぐらいの勢い、そしてなによりその一撃に賭ける

フィリシアの目はスティナの武器を捉えている


「防げるものならっ……いくよっ……」


その場からスティナめがけて斬りかかる……それをスティナが剣で弾いた時には

フィリシアはスティナの背後に回っており、その場に着地したと同時に

またスティナに斬りかかる……それを何度も何度も繰り返す


「おい……あれはなんだよ……アスクさん、説明してくれ」


「あれか? 見ての通りだよ、フィリシアが放つ最強の一撃……いや

 あれは高速の剣技だな、たしかに見た目も突撃力も高い、だが」


「だが? あれはどうみてもスティナが不利すぎる……」


「そうかい? あの技は防がれ続ければフィリシアの負けなのさ」


「どういうことだ?」


エステはフィリシアの剣技を見て、反撃する手段はない、そして一方的に

スティナが押され、あのまま敗北すると思っているのだろう

それをわかってか、アスクはひたすらにフィリシアの攻撃を防いでいる

スティナを指差し説明する


「……あんな動き、俺がやったとしても耐えられる物じゃない、持って5分だろ

 たしかにあの動きが何十分と続くならば『最強』なのかもしれない

 だけど、あの動きは足に負担がかかりすぎている、フィリシア自身

 女性だがその辺の雑魚に負けるほどじゃないにしろ、あの動きは負担が多い」


「負担は理解できたが……ようは持久戦になればの話だろ?」


「だからよく見ろ、スティナちゃんは剣の中心を外してひたすら攻撃を耐えている

 君の言いつけをちゃんと守ってな……それが功を制している

 もしも君が注意しなかったら今頃は……スティナちゃんの剣が折れていた」


「……まじかよ、でも……あの状態のままじゃ

 スティナが反撃できないのに変わりはないだろ?」


「そうかい? 君は割と目が腐っているようだ、もうちょっと冷静に

 君の仲間の『武器』をよく見て見ろ」


「……? ……ま、まさか……スティナはあの状態でも攻撃してるのか?!」


「その通り、一撃を防いでもう一撃目が来る瞬間に剣を振っている

 さっきも言ったが、この試合は本人を傷つけてはならない

 ようは武器だけを狙いに来るのがわかっていれば武器は振れるし

 フィリシアの負担を増やすのにはいいのさ」


「……なるほど、スティナのほうが意味をちゃんと理解していたのか」


「さて、説明はもういいかい? そろそろスティナちゃんの反撃だ」


アスクがそう言った直後、フィリシアさんの足が縺れ、地面に片膝を付き

レイピアを地面に突き刺し、立ち上がろうとするが、足が震えている

それにゆっくりと近づくスティナがいる


「すごいです、あれほどの剣技を見せてくれて……」


「ふふっ……すごかったでしょ? 私の50回の連撃は……」


「はい、武器が折れちゃうかと思いました」


「うそつけっ……全部『芯』を外してたくせに……」


「そんな事はないですよ、防いだ所、刃がぼろぼろになってますし」


『……このまま会話を続けて……足の震えが戻れば……』


そうフィリシアが心の中で思った時……スティナは先程のフィリシアが

行ったように体を屈め……フィリシアに突撃する

フィリシアから見てその動きは『自分の動き』ように見える


「……フィリシアさん、今の技、模倣させていただきます」


「っ!」


フィリシアは慌ててレイピアを構える

しかしフィリシア自身、その剣技の弱点は良く知っている

持つ武器は軽く、それも一撃与えた直後に次の動作に移らないといけない

レイピアや軽めの武器ならできるのだが、スティナが持っている剣はできないと

心の中で思っていたのだろう……それは一瞬で覆される


『嘘でしょ……?! この子、さっきの私の行動をそのまま真似してくる?!』


スティナはフィリシアのレイピアだけを狙いひたすらに剣を振るう

それはフィリシアが行った高速の剣技の模倣……のはずなのだが

それは模倣ではなく、技その物となっているかのように小さく修正が見られる


フィリシアのレイピアの中心に剣を振り、金属音が響いた直後には

スティナはその場にいず、フィリシアの頭上を一回転して飛び

逆側に着地すると、その場で再度剣を振るう、その動作によって

足の負担は下げる事は可能、思いっきり片足に重心をかけるよりは

両足で着地したほうが負担は少ない、そう考えたスティナは最小限の動きで

フィリシアに襲いかかる


「もう一度……もう一度……続いてもう一打!」


スティナはその場で三回の斬りをする、その動きはフィリシアから見れば

無駄な動きかもしれないが、足を『一瞬休める』それが何よりもこの攻撃には

重要な繋ぎとなる、その無駄な動きにフィリシアは剣を振り止めようとするが

スティナの姿は目の前にいず、右側に右足を大きく回し回転するように動くと

剣を左手に持ち替え、レイピアに一撃を入れる


「それは単に『数を増やす』だけの一打、私のには遠く及ばない!」


「そんな事はないっ……この一撃は全てに繋がる」


「スティナちゃん……何を言ってるの……?」


スティナの模倣と考えについていけないフィリシアは困惑するばかりである


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