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第118話-交わる剣先-フィリシアの目線-

スティナちゃんは実に『楽しい』人、なによりも……私を楽しませてくれる

それだけで十分、私の心は満たされた


今も私はレイピアを持ち、スティナちゃんに突撃をする

それは短い時間、短い語り合いかも知れない時間で渡り合える人と剣を交え

楽しめる事が何よりも大切だと私は思っている


どうして『楽しい』事に私は拘るのか……

それはこの街において、私より強い人間がいないからである

少し前は『ハンナ』とか言う女性が強いと言う話を風の噂で聴いたが

それは時間と共にどこかへ行ってしまった


それから何度も何度も闘技大会に参加したが私より強い相手はいなかった

『アスク・アスミル』と言う剣勇を見かけたと言う人もこの街に帰ってきた

らしいが……私と剣と交えた事は1度もない


「いくよっ……スティナちゃん、この一撃を止められるかな?」


「……全力で止めます」


私はスティナちゃんの目の前で足を止め、一回転する

それはスティナちゃんの体制を崩すと同時に攻撃を誘発するための回転

しかし、それに攻撃せず、剣を縦に構え、攻撃を防ごうとする


『横から薙ぎ払う!』そう私が思った時……一瞬だが私の脳裏に

スティナちゃんのカウンターで潰れる私の姿があった

だからこそ、私は回転だけをし……後ろへバックステップする


『……うん、今のは危なかったかも……もしも攻撃してたら

 武器事私が吹き飛ばされ負けしてたかも……んー血が踊る』


やっぱりスティナちゃんとこうやって戦えてる時間がとても楽しく

ずっと……ずーと……剣と剣を交え……お互いの気持ちを教え合いたい

そう思ってしまう


剣と剣が交わるだけで会話ができる? 普通はできないし金属音だけだと思う

でも本当に相手と楽しい戦いができる時だけ、剣と剣がぶつかった時

相手の声が聴こえるようなそんな感覚になる事がある

別に剣が喋るとか可笑しな事を言ってるわけじゃない、相手の思いと勝つ意志

それが乗っかった一撃を私は受け止め、弾き返したいだけだから


「次、いくよっ」


「私もいきます……!」


スティナちゃんは私が飛び込むと同時に剣を構え走ってくる

背は私よりも低いはず……それなのにあの足の速さ、そして迷いのない剣先

年齢はよくわからないけど……今まで戦ってきた誰よりも『尊敬』できる


「せっ!」


「っ」


スティナちゃんの横払いを私はレイピアの中心で受け止めながら空いている

片手でレイピアを中心部を抑え、折れないように保護する

しかし……実に一撃一撃が思い……私のレイピアの一撃も普通のレイピアよりも

威力はあると自負しているが……あの細腕から放たれる一撃は心が踊る


「次は私の番!」


私はレイピアで突きを放つ……それを高速で繰り返し何本の刃のように

繰り返し繰り返し……突きの連撃をするが、それを一発、一発見えているのか

剣の中心で防いでくる、どれだけの集中力を持って防ぎ続けているのか

それこそ誰かが攻撃の来る場所を教えているのか……そんな事はないはず

この場には私とスティナちゃんしかいないのだから


『よく防いだ……俺のお陰だな』


「……そうだね、たしかにロストのお陰かも……ありがとう」


『ああ、まぁ……あれだけの剣速を持った相手だ、落ち着いて行けよ』


「大丈夫、私は冷静だよ」


フィリシアに聴こえない、そんな会話を2人は繰り返す

あの連撃をスティナが防げたのはロストのお陰である

一撃一撃に思いを乗せ、スティナを捉えようとする攻撃はロストには易々と

読めてしまったのだろう、それをスティナには教えず、攻撃が来る位置だけを

スティナに教え、防がせた……ただ、それだけなのだが

フィリシアにとっては『スティナ1人で防がれた』と言う状態なのだろう


「面白い面白い……本当にスティナちゃんは面白いよ

 これだから新しい人と戦うのはやめられないっ!」


私は全力だすために髪を結んでいたリボンを取る

取ったからと言って何かが起きるわけでもない、ただ髪をばらつかせ

攻撃してる姿は『上品』じゃないと思ったためにリボンを付けた

でも今はそんな状態ではなく、今を楽しめと……私の心が言っている


「……はい、その綺麗な髪、靡かせるフィリシアさんは素敵です」


「褒めても何もないよ? それに……スティナちゃんの幼なそうな顔が可愛いわ」


「あ、ありがとうございます」


その時のスティナちゃんの苦笑はずっと忘れないだろう

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