第107話-理解してみてわかる-
頭が良い、だから他の事が苦手でも問題ない
僕はそう思っていた
だからこそ……今まで体を鍛えたり運動することを避けていた
しかしミナセ達と出会い、一緒に旅をする中
頭が良いだけじゃ役立たない事の方が多い
『しかたない、僕は戦闘向きじゃない、強い人が、頑張ればいい』
そんな事を思っていた、だけど今は少しだけ前向きにやろうと決意した
だからこそ、僕は長刺混を構え、ハーピーと言う魔物と対峙すべく
1歩前に足を踏み出し、アイリスと連携するために動き出す
「私が動きを止めます、その隙に攻撃を加えてください!」
「いや、僕の長刺混のほうが相手の動きを止めるのに優れている
こういう時は適材適所と言うだろ? アイリスさんは止めを頼む」
「わ、わかりました……危なくなって私が壁になります」
アイリスは僕の動きを見ながらある程度の距離を取り、追撃の態勢に入るが
剣の持ち方が片手ではなく両手で『前』に構えており、僕が失敗しても
平気なように……整えているのだろう、それが少し悲しくもあった
まだ僕がアイリスに信用されていないと言う事
そんな中、化物……もとい、ミナセは164cmぐらいの身長で軽そうに
『ツヴァイヘンダー』を片手で振り回している
だが……僕は冷静になりミナセを見るとある事にやっと気づく
ミナセが持つ『ツヴァイヘンダー』はミナセの身長ぴったりになっている
元々の『ツヴァイヘンダー』の長さは2mを超えると言われているが
誰が作ったのか……それともたまたま、ミナセの身長に合わさったのか
それこそ偶然が偶然を呼んで必然になったのか……それは誰にもわからない
だけど、『ツヴァイヘンダー』を片手で楽々扱っている時点でミナセと言う
女性は少し……わんぱくなのかもしれない、と思う事にした
「さて……僕の武器は攻撃だけじゃないぞ」
アイリスがハーピーの滑空攻撃に反応すると同時に僕はその方向に
長刺混を伸ばす、長刺混は棒とも言えるが先体部分にナイフの曲がったような
物を取り付けてあり、引っかかりを利用することができる
飛んでくるハーピーの背中にナイフを引っかけ手前に引き込む
元々、滑空攻撃で勢いがつく中、さらに引きこむ事によって勢いはます
微調整された空からの攻撃に少しだけ誤差を加えるだけでハーピーは態勢を崩す
後は……刺した武器を引き抜き、アイリスにまかせるだけだ
「頼んだぞ! アイリスさん!」
「わかってます! この一撃で終わらせます!」
アイリスが立っている目の前にハーピーが飛んでくる、それ目掛けて
アイリスは大剣を振り下ろす……しかし、頭を狙わず、背中を斬り
ハーピーを地面落とすが……そのハーピーが動く事はなかった
「どうして……頭ではなく背中を?」
「一応同じ同姓ですよ? 顔は狙わない物です」
「……そうなのか」
「まぁ、そんなのはどうでもいいです、次の敵が来るかも」
「次も止めて見せる……」
しかし次のハーピーがこちらめがけて飛んでくる様子はない
もちろん、ミナセの足元に大量のハーピーの死体がいるが見なかった事にする
だが……このハーピーと言う魔物がこちらを狙う理由がない
魔物と言っても理性はあるはずだ、僕達が狙われるような代物を持っていたり
運んでいるのなら話は違うが……何か様子が可笑しい
『……あきらかに僕達を狙っている、それも何匹、何十匹と倒されているのに
引く気がない……何か『罠』でもあるのか……?』
そんな事を考えているとミナセの目の前に木の上、ハーピーから飛び降りたのか
1人の女性が両手に『スピア』を持っているが、その長さはロングソードと同じか
ロングソードよりも少し長いぐらい……それこそ、その長さなら他の武器が
使いやすいように見えてしまうのは僕だけなのかもしれないが……
アイリスがそれに気づき、ミナセに近寄ろうと走りだした時、ミナセは
アイリスが来る事に気づいたのか声をかける
「アイリス、こっちにこないで……あなたはローラントの援護
それから私の援護もお願い、ハーピーを牽制するだけでいいから」
ミナセが味方を頼ると言う事はそれほどの強者なのか……それとも
相手が1対1をご所望なのか、それは僕にもわからない
だからこそ、今できる『最大限』の事をするだけだ
「アイリスさん、ミナセのいる方向にハーピーをいかせないために
ここで追撃する……アイリスさんはハーピーを単独で狙いながら
僕の援護をお願いできるかな?」
「ええ、いいですよ……まったく少しは頼りになったと思ったら
人使い……それも女性を過労死させるぐらい使うとは」
アイリスは冗談交じりに笑いながら僕の顔を見る
僕はそれに冗談を交えて返す
「いや、アイリスさんは他のか弱い女性とは違うだろ?
なんていったってミナセの一番弟子なのだろう?」
「一番弟子かはわかりませんが……ようはミナセさんとの関係者は
女性とあろうとも扱いが変わると言うことですね」
「そっちのほうが考え方が簡単だからね、アイリスさんもそれのほうが
嬉しいだろ? 違うかい?」
「ええ、そっちのほうが嬉しいです、ミナセさんと一緒の扱いですからね
だけど……ローラントさんも早く私達に追いついてくださいね?」
「それは無茶ぶりだろ……」
僕はアイリスの言葉に溜息を付きながらそう答えると武器を構え
ミナセへ敵を行かせないため、アイリスと共に臨戦態勢を取る




