第105話-ローラントの考え事-
「船も手に入ったし……これでどこにでも行けそうね」
ミナセがそう言いながら、砂場から船を見上げるがローラントは腕を組んだまま
困った顔で言う
「……いや、この船はもう使えんよ、降りる前に調べたが船の底に穴が何個も
空けられている、たぶんだが海に投げた奴らが空けたのだろう」
ミナセが船から放り投げた連中が恨み返しと言わんばかりに持っていた剣で
船の穴を空けた、それも海賊は船の事を理解しており、船の直しようにない
部分を狙って壊していった
「でも、木とか手に入れて修理すれば大丈夫なのでは?」
アイリスはローラントにそう言うと、ローラントは船をノックするように叩く
すると船を支えている部分の木に穴が空く
「この船自体、古かったし脆かったのだろう……こんな簡単に壊れると言う事は
このまま出航したら……海のど真ん中で船がぶっ壊れるな」
「じゃあ壊しちゃいましょう! 石はまだあるし、帰れるわね」
ミナセは笑顔でそう言うと始めは驚いた顔をしていた2人は少し考えると頷き
船を壊す事にした、誰かに利用されるなら壊した方が良いに決まっている
それも……壊すのに時間はかからなかった
理由はミナセが『ツヴァイヘンダー』、アイリスが大剣『クレイテス・ヘイム』
をぶん回し破壊して行く速さが早いからである
『あの2人……破壊専門の仕事に付いた方がいいような気がしてきたぞ……』
ローラントは1人、破壊され地面に落ちて行く板を拾い、長刺混で半分に砕く
それを1つずつ重ねて行き、山のようにする
「こんなもんだろ……あとはあの2人が壊し終わった後に燃やせば解決か」
ローラントが思った通り、2人がかなりの速さで船の解体……もとい破壊
が終わり、砂場に座り、一息ついている中、ローラントは長刺混の先体に
火をつけるべく……石を2つを用意し2つを打ち付け始める
その光景を不思議に思ったのか、ミナセはローラントにの座っている近くに
近寄りその行動を覗き見しながらローラントに話かける
「ねぇ、それは何をやっているのかしら?」
「これは昔の技術でな、石と石を打ち付け火花の原理を利用して火をつけるんだ」
「へぇ……でも、そんな事やらなくて簡単な方法あるわよ?」
「そうなのか? 木と木でできる方法もあるが、それ以外なら
ぜひ教えてほしいな」
「いいわよー、じゃあ少し離れてて」
そう言うとミナセは自分の持っているショートソード2本を構え2本を打ち付け
ながらある程度距離を取ると、走りながら剣と剣をぶつけて行く、それをしながら
板の周りを回りだし……その速度は目で追えないほど高速となって行く
そして、ミナセが止まった時には板に火が付いていた
「……ミナセ、君は今……何をやったんだ?」
「簡単な事よ、鉄と鉄がぶつかってできる火花を多くださせるために
かなりの速度で周りながら剣と剣をぶつけて火花をずっと散らしただけよ」
ミナセの言いたい事はローラントがやっていた石と石のやり方とさほどかわらない
しかし、並外れた身体能力を利用してからの火花散らしはミナセしかできない
とローラントは苦笑しながらミナセに感謝を述べると、火が板を全て燃やし
終わるまで、その場に座って休む事にした
「で、ここはどこなんでしょうね……辺り一面、森林みたいな……」
アイリスは2人が板を燃やしている間、周囲を探索に行き、戻って来た直後に
報告するため砂場に座り話を始めている
「んー……敵意のある感じはしないし……大丈夫じゃないかしら」
「しかしだ、この土地がどこの土地かわからん、用心するに越した事はない」
「それもそうですね、じゃあ私は警戒してますので休んでください」
アイリスはそう言うと立ち上がり歩いて行ってしまう
そのアイリスを見送った後、ローラントはミナセにアイリスの事を聴く
「ところで、あの子……アイリスさんはこんな状況に巻き込んでよかったのか?」
「別にいいじゃないかしら? 本人がいいって言ってるのだから」
「そんな簡単に……お前はほんとに楽天的なのか……娘を溺愛しているのか
よくわからない時が多すぎるぞ……」
「えーそんな事ないわよ、娘が一番だし、戦いも好きだし、それに楽しいことも
大好きだから……問題なくないかしら?」
「……そっか」
ローラントは呆れかえった顔でそう言う、ミナセと言う人物は『強欲』なのだ
自分の求めている物を全て手に入れ、自分の好きな事を全力で楽しみ
娘を守ると……それをできるのはミナセだけなような気がするが……
そこでローラントは1つ引っかかる事がある
『ミナセが強いのは理解している……だが、この強さはなんだ?
武器に秘密があるわけでもなし、容姿的に鬼とか魔人の可能性もない
ならば……一体なんだ……他の人間から見れば『化物』レベル』
「どうしたの? ローラント、何か困り事かしら?」
ミナセは黙ったままのローラントの顔を下から覗き込みながら笑顔で言う
その行動にローラントは少しどきっとする……この女はそう言う事にたいして
ものすごい疎い上に、相手が異性だろうと関係なくやってくる事だ
「いや、問題ない、この土地がなんなのか少し気になっただけだから」
「そう? 困った事があったら、私にどーんとまかせなさい」
ミナセは自分の胸元を叩きながらニヤケ顔で言う……その光景を見ながら
ローラントはさらに考える
『……それも筋力がすごいわけでもないのに大剣と片手剣3本、投げナイフ
難いのしっかりしている男性ならわかるが、こんなどこにでもいるような
奥さんみたいな人がこれほどの力があるのは……気になる』
ローラントはアイリスが戻ってくるまで、ひたすらにミナセが『強い』理由を
考えるが……その全ては『ありえない』事だったのであきらめる事にした