第3話-拳の真実-
「えっと……私はスティナ・フィーナベルクって言います」
「知っている……さっさと準備をしろ」
私は言われた通り、武器が置いてある所に行き、武器を選ぶ
先程使ったショートソードはリドラーさんの手によって2本共、元の位置ある
「これでいきます」
私が選んだ武器は『ロングソード』
ナックル相手に長さがある武器を使うのは少し狡い気がしたが
気にしない事にする。
「はじめるぞ……!」
リクと呼ばれた男性は小刻みなステップを踏みながら私に接近してくる
私はそれを防ぐように左手で持った剣を左側から横に払うが……
「軽いな……本気でこないと死ぬぞ?」
私の横払いを右手のナックルで軽々と受け止めると私の懐に踏込
左手でお腹を狙ってくる。
「っ……」
私は間一髪の所で横に避け、安心した所にリクは右のナックルで殴ってくる
それを私が剣で受け止める、重みがあり、後ろに滑るがまだ……いける。
その滑ったお陰もあり、リクとの距離ができていて
ナックルの距離には届かない位置にいる。
「……いくぞ」
リクは再度踏み込んで来て左手のナックルを私のお腹めがけて突き出す
その攻撃を後ろに避けた時である。
「甘い、俺のナックルはまだ伸びる!」
そう言うと黒色のナックルの溝から小型ナイフが出てくる『ギミック式ナックル』
「……まだ避けて見せます」
私はその攻撃をしゃがんで避けて、リクの足めがけて足払いをする
しかし……私の細い足ではリクを転ばす事ができず、後ろにステップして
距離を取り、剣を構える。
「ふん、一撃当てたぐらいで、続けるぞ」
リクは再度私の懐に入り込もうと足を動かした時
私はある事に気づく、ギミックがあるのなら……それを使えばいいのに
攻撃射程も伸び、便利になると言うのに、それを使わないと言う事は……
私は剣で突き出す、これは一か八かの一撃
避けられば負け、上手く『当たれば』私の勝ち。
「……避けるまでもない」
リクはそういって左手の拳で突出し受け止める
突き出したナックルによって私の剣を折ろうと考えたのだろう
私の突きはリクのナックルの溝に吸い込まれる。
「ぐ……」
リクが少し声をだした所でリドラーさんが戦いを止めた
理由は簡単だ、私が剣を突き刺したのはナックルのギミック部分
その部分を押し込んで鋭くなったナイフをリクが装着してる手を刺したのだ。
「ふぅ……上手く言った」
私がその場に座り込むと離れていたヒーナさんが近寄って来て私に話かけてくる。
「……まさか、あんな方法を試すとは、スティナ中々やるね」
「本当の殺し合いなら負けてたと思いますけど……ね」
「いや、拳を使う者には十分すぎる一撃だ、しかしよくギミックに気づいたね」
「1回使った後、次も来なかったので何かあるのかなって思って……」
「なるほど、あれは1回限りの技だからね……それに気づくとは」
1回限り、ギミックとしてナイフはでるのはいいが収納するための
ナイフの持ち手の部分や刃が逆様に収納されてしまうため
その部分を押し込まれるとナイフが持ち主の手を刺す。
それに気づいたスティナをヒーナは称賛しようとしたが言うのをやめた
それによってスティナが弱くなってしまったら元もこうもないのだから。
「さて、リク……スティナちゃんの事は認めたか?」
リクの手の手当をしながらリドラーが質問すると罰の悪そうな顔な言う。
「まぁ……避ける事がメインで荒削りですけど……いいんじゃないですか」
「リクが女を褒めるとは……初めての事じゃないか?」
「ギミックを止めたのは彼奴……スティナだけですからね」
そう言うと手当の終わったリクは私の元にやってくる。
「スティナ、お前は強くなる……精々頑張れよ」
「ありがとう、リク……これからよろしくね」
リクは私の言葉に後ろを向きながら左手を上げひらひらと振るとどこかに行く
それを見送った後、ヒーナさんは大きな声で私に言う。
「今日は歓迎会だ! 腕によりをかけて作ってやるからな!」
そういってヒーナさんもどこかに行ってしまうが……
それを聴いたリドラーさんは真っ青な顔で私に言う。
「ヒーナは料理できないだ……というかここの連中は『生』か『焼く』
それぐらいしかできない、歓迎会と言っても丸焼きぐらいだろ……」
前途多難な歓迎会が待っているのはたしかである。