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魔術師の脅威

城では、隣国2国の王族関連数人と在人夫妻、ギルド長、そして

今回の主犯格を呼び、協定が結ばれた。

難航すると思われた会議だったが、マチから経緯を聞いたマチの父は

久しぶりにかつての姿、魔術師の正装で会議室に突然姿を現し

「私の妻の両親を汚す奴は誰だ。今すぐ処分してやる」

と、怒声を上げ室内で魔方陣展開させて

その場にいた主犯格以外の全員に『カールナー様、辞めて下さい』

『行方不明のあの、最強魔術師?』

「・・・・トーイ君、抑えて」

『カールナー様』

宥められて収められたというのが本当の話し。

しかも

「もし、ホテルや私の義理の両親に被害や実害が出るようなら

このトゥーレ・カールナーの名において、この世で一番恐ろしい目に

合わせてやる」


という呪いの言葉を吐いて、魔方陣と共に消えたことで

その場にいた誰もかもが恐怖に慄き、2度とする気がなくなるほどの

牽制になっただろうと、ギルド長からマチへ話が伝わった。

『しかし、意外な事が分かった。在人の娘と結婚していたのか。

あの暴君』

(暴君て)

さらにギルド長は、話を続ける。

『あれは、勤続7年で異例の出世した当時話題になった

若き宮廷魔術師長でな。ギルド長として、戦争時に何度か会っているし、

魔術省のひよっこの時から知っているんだな、これが。

突然、自分から退職受理して行方を眩ませて、どこへ行ったのかと

思っていたら、なあ』

「はあ・・」

『あ?待てよ。在人の娘と結婚しているということは、マチお前・・』

ギルド長の目がぎろりとマチを見据える。

「察して頂ければ」

『・・・・』

いつものようにギルド長と夕食を共にし、いろいろ雑談混じりに

話をしていたのだが、彼はついに真実にたどり着いてしまったということだろう。

『息子か。なるほど。だから、在人は隠していたのか。

ここで預かることで、お前さんを育てるつもりか』

「今考えると、そうなのかなと思います。ギルド長、俺も父のこと

知らなかったもので、何とも言えません」


『まあ、お前さんを在人の孫ということも知っている者も少ないから。

直ぐに君があれの息子だとは分からないだろう。

あの暴君が姿を消した意味もようやく分かった。

王からの呼び出しは、在人を通じて連絡出来ることも分かったことだ。

捜索は中止だな。

なあ、マチ。異世界人とのハーフと正当魔術師の子供となると、

どういう立場になるのか私には分からん。

初めて誕生した人族となることから、寿命とか魔力もだ』

「まあ、そうなりますよね。でも、いつも通りでお願いします」

(自分自身でも分けわからないよ)

その返答に、ギルド長は頷く。

『分かった。心得ておく』

段々と肩書きが増えていく。

マチは、自分の存在が酷く滑稽に思えてくる。

(なにしろ、あちらの世界では、こちらの血筋の意味なんてサッパリで

ただの一般人。目立つこともないんだ。この世界では、血筋で浮いてるなあ)


お茶を勧められて、カップに手をつける。なみなみに注がれた液体を

見つめながらため息が出てくる。

(これ以上の肩書は要らないな。しかし、まだ父の謎が。

聞いてもいいかな、聞かない方がいいのかな。ここはスッキリさせてしまうか)

「で、ギルド長」

『なんだ』

「ふと思ったことですが、父の両親は健在ですか?亡くなってますか?」

お茶を美味しく頂きながら、父の両親に会ったことがないことを

思い出した。そう父の謎は、父には身内がいるのかどうか。

そのマチの言葉に、ギルド長は動きが鈍くなる。

「あれ?どうしました」

『今更だが、あれの両親について、今思い出した』

「あれとは、父のことですか?」

『そうだ。カールナー家は、代々魔術師の家系で』

「家系で」

『王都の北側の領地で、魔術師の学園を経営している』

「へ、へええ」

(もう何も驚くまい)

でも、マチの目は限界まで見開ているし、身体が震えている。


北の国への脅威となるよう、彼ら一族が王の為に魔力がある者を集め

11歳から5年間魔術師になるよう教育している。

魔力が規定通りあれば、無償で入学が出来る。

入学試験では、国中から魔力を持つ者が集まってくる。

合格した者は、そのまま学園に

そうでない者達も多少の魔力を使って生活がしやすいので

そのままその領地へ住んでしまい

大小魔力のある者達の平穏の地として有名だ。


学園卒業後、魔力が多く魔術に長けている者は、

王都の魔術省へ入ることが出来、

その中でも攻撃系に長けている者は魔術部隊、

回復、治療系に長けている者は、医療部隊に配属し

それは栄誉とされる。


それ以外の卒業者もそれぞれの道へ進む。学校契約は、魔術で違反を犯した

事が発覚した者で、犯罪級であれば、学校側から魔力を奪われる。

「へえ、そんな学校があるんだ。俺は、今の商人向けの学校で十分かな」

マチ本人は、学園がどんなものか分からないが、今更5年も習うのは

気が引ける。

(年齢も年齢だしな。やっぱり俺は商人だな。魔術師ってガラじゃないな)


『お前さん、父親の両親に会ったことはないのだろう?

ということは、結婚したことも子供がいることも、たぶん

伝えていないだろうなあ。見つかった時、対処が大変だろう』

嫌な顔をさせる。

「まあ、成人しているから。親に早々迷惑を掛けられないな。挨拶くらい」

『・・あ、いや。お前の父親が悪いと思うぞ。カールナー家が

接触してきたら、対処方法とか父親には相談した方がいい。

あれの親と親族だ。よく知っているはずだ』

「そうだね」

『忘れていたが、あの一族で一番力があったのが、お前の父親だ。

その息子だからな。ギルドの訓練場で、しっかりと訓練しておいた方が

いいぞ。あの一族は魔術は上級者ばかりだ。

魔術でやられたら、お終いだぞ。母親は、話し半分しか聞かないし

父親は穏やかだが不機嫌になると背後から黒いものが見える』

「・・・分かりました」


その夜。

マチは、早速対策を考えるべきだと、父へ電話を掛けた。

「どうした」

「父さん。父さんが会議に乱入したこと聞いたよ」

ギルド長から聞いた話をかいつまんで説明すると、父は苦笑している。

「ははは、早いな。あのおっさん、口が軽いなあ」

(ギルド長、おっさん扱いかよ)

「そんなことより、余計な事を言って、俺の存在、父さんの両親や一族に

そのうちバレるかもしれない」

バレるという言葉に、父親は反応した。

「あ?そういえば。そうだな。うっかりしてた」

「明日から、魔術の訓練を入れていくつもりだけど。魔術の学校へ

行ってないから、父さん何か魔術に関する本とかないかな」

「ちょっと待て。今、渡そう」


それから5分後、茶髪から元の姿に戻った父親がマチの前に現れた。

「うわ」

学校で見た絵姿が少し年齢が上がったくらいなので

銀髪碧眼の渋いオジサンだ。女性は、ハンサムとかイケメンとか

言うかもしれないが。

「お、済まない」

「今、思ったけどさ。よくここまで直ぐに来ることが出来るんだな。

父さんの魔術は、一般的な物?どういう魔術?」

(普通は、どこにいるか分かっても、そこへ飛ぶのって難しいって

小説とかで読んだからな。父さんのはどういう原理なんだ?)

「ふふふ。それは俺が上級だからだ。お前も学んでみると分かる」



「これこれ」

父親は、空間から本を取り出した。

「これは?」

「魔法書。こっちの5冊は、魔術学校の。5年でこの5冊を学ぶ。

応用は自分でメモして、自分の魔法書を完成させるんだ」

5冊は、多少汚れがあるが、1冊が高さ10センチと分厚い。

次にボロボロの1冊を取り出し、それを分離させて手渡してくれる。

「オリジナル原本は、俺の魔術の源だ。原本のコピー本を

お前に渡しておく。そっちの5冊を読んでから、俺の本を読んで

お前自身に合う魔法書を完成させてみろ」

全くの新品で、紙が真っ白な本も一緒に手渡される。

「これに書き込みすると、これが俺自身が作る魔法書になるってことか」

「そういうことだ」

学校のテキスト5冊、父さんのコピー本、そして、

自分が作る真っ白な本の原型を手にして感動してしまう。

(うわ、これ制覇すると、俺魔術師か。嘘みたいな話だな。

ついさっきまでは、商人になることしか考えてなかったのにな。

魔術が習えるって、素晴らしい。小説の中だけの話しで、自分には全く

関係がないって思ってたからな。しかも父親から直々か。

父さんが最強魔術師と言われているなら、父さんを目指している奴も

いるかもしれないな)


「お前自身の魔法書が完成したら、他の本は返してもらう」

「分かった」

そこからどのように学習するのかのノウハウを聞き

どうしても分からない時は、指導してもらえる話しになった。

「俺が息子を弟子にする日が来るとは、感激だな」

「え?弟子?今まではないのか?」

「ああ。教えるよりもいろいろ実験することが先で、

家を飛び出してるからな。弟子なんていなかったな。

ああ、宮廷魔術師をしていた時は

弟子をとれとは言われていたが、面倒でな」


そう、トゥーレ・カールナーは、一族が経営している魔術学園を

5年で卒業後、宮廷魔術師を7年勤務した後、

その魔力と魔術が誰も追いつかず

最高位の宮廷魔術師長になったのに

自分の権限(師長なので)で、勝手に退職受理して放浪の旅へ

行ってしまい国から捜索願いが出されている。それは今でも。

王都を飛び出し、旅先でエリイに出会い、そのまま結婚。

今に至る。


「あ?今に至るって、仕事勝手に辞めて結婚で、そのまま両親とも

親族とも会ってないの?」

「そうだ。この世界ではよくあることだ」

「で、見つかったら、どうなるの?」

「・・・・厳しい両親だったし。親族も魔力とか魔術には煩いのが

揃っているから、結論からすると煩いかな」

父親の言葉に、マチは青ざめる。

「母さんとか爺ちゃんと婆ちゃん、トールス家に迷惑かからない?」

父親側の両親や親族の話しを聞くと、どうも見つかった時の心配してしまう。

「・・・。俺が何とかするつもりだが。いろいろ条件出したり

何かを引き合いに出したりと、交換条件とかで雁字搦めにされる

可能性もなくもない」

マチと父親は話をしていくうちに、顔がさらに青くなっていく。

「父さん、手に負えない相手ということだよね」

「ああ。間違いなく、正当で仕掛けてくる嫌なタイプだ。

在人に相談しに行こう」


まだ学校卒業でもないのに、ホテルへ戻ることは不本意だが、

これは家族がピンチだから許可してくれるだろうか。






11/22~24 お休みします。


11/25 再開します。10時頃を予定しています。

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