光の価値◇
短め
お気に入りにしてる方は、失礼だけどどんな神経をしていらっしゃるのか
無論、興味ありませんよ?
輪廻はもう言うまでもなく殺人鬼だ。ただ無差別じゃなくて、輪廻の輪廻たる由縁がある。
輪廻は六人しか殺さない。殺してる時点で、しか、で済む問題じゃないが。だけど輪廻は六人殺して、戻ってくる。さながら六道輪廻のように。
『終わりまで続けるって言ったが、実際終わりなんてくるのか? 確かあの女の周りが輝くか、あの女自身が輝くかなんだろ? それって終わりが来なくないか』
「輪廻は、雛乃の周りに大した奴が来ないと思ってるのか それとも雛乃が輝かないとでも?」
『どっちもだね』
子供・男性・教徒・悪人・適当・格闘家、輪廻はそういった六人を殺す。餓鬼道・畜生道・天道・地獄道・人間道・修羅道に沿った六人を。
ホントなら輪廻はもっと大勢殺せるのに、そうしない。そういった枷を自ら付けて、戻ってくる。俺に会うために。
どちらかと言えば、俺に会うときは、そういった六人を殺してくるだけだが。
『駄作が言うように、あれは完璧だ だからこそ、あれ以上の奴らが、偶然でも周りに集まるなんてない それに、駄作という最高の影がいるのに、あの程度の輝きしかないようじゃダメだね あれは完璧故の完成品だ、だからあれ以上は求められない』
濃淡の違いと似たようなもんだ、と笑う輪廻。
それは俺が影として本質的に染まっているから、と言われているのか。まぁ意味はわかる、白い一面に黒が映えるように、影の中に光は眩しい。
ただ輪廻は、そんな状況であるのに雛乃の輝きは足りないという。
全く同意見だね。
「だからって止める理由にはならないさ そこまで言うのは何でだ? 諦めたとして、何をしてほしいんだ?」
『普通に生きれば良くね? 駄作の考え方、観念は面白い なのにあの女に付いているだけで、その本領は発揮されてないだろ? 駄作は駄作が思う程、普通じゃないのさ いや、普通だけどな』
「壁を越えた話か? 力は使うもので、使われるものじゃないってやつ」
『そう 力を持ちすぎた故に、他が上手いこと言いくるめて利用する それはどうでもいい、つまり駄作は、普通過ぎて、寧ろ普通を越えたって話だ』
「過大評価だ」
寧ろ過小評価か、興味ないけどな。
輪廻はことあるごとに、俺を雛乃から離れさせようとする。それで輪廻の特になるようなことはないのに、なぜかそこにこだわるね。
「肝心な理由を聞かせろよ 俺を雛乃から離そうとする理由を」
『おう ぶっちゃけ、こっちにこい』
「こっち、ておい」
何を抜かすかと思えば、とんでもないこと言い出してきやがった。
『普通過ぎて普通じゃない それは輝いてるって意味じゃなくて、むしろ光を奪うラインまで来てるのさ 影として普通を全うし過ぎて、闇になりかけてるのが現状』
先の見えない混沌たる闇。だから光が射しても、そこが晴れることはない。それか光の射した先に、何もないからか。
けど、俺は雛乃の影として今までやってきたのに、それを今更否定されるなんてな。
「なんて皮肉だよ」
『でも興味ないんだろ?』
「まぁね」
『駄作だな 試しにあの女から、一週間でも離れてみろよ それで輝きを失うようじゃ見込みないし、逆に輝きだしたらお役御免だ』
別れの言葉はなく、気づいたら消えていた。そういう感覚を与えるように、輪廻は俺の前から離れていった。
一週間離れてみる、ね。
「それは少し興味がある」
なら手始めに、二時間過ぎた今、雛乃の元へ戻らずにいてみるか。
輪廻と話した内容が、頭の中で蠢く。もしかしたら、俺が興味あるのは行為自体だったのかもしれない。
目的と行為の逆転、行為することが目的。俺に例えるなら、興味があるから雛乃の影をしていたが、いつのまにか影をしていることに興味がある。
「とんだ駄作になりそうだぜ」
次から駄作の展開が変わる