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普通じゃないだろ?◇

読んでくれた方ありがとう


 一定の距離、大体一、二歩分くらいの間を開けて俺は雛乃と並ぶ。学校で頼まれた買い物に付き合っているのだ。これ以上近づくと雛乃が嫌がるから近づくかず離れずといった感じか。

 別に近づきたい訳ではない、どちらかといえば近づきたくない。後ろからの嫉妬にも似た殺意があるから。

 雛乃は基本、一人では買い物に行かない。その理由は興味ないので聞いたことはないが。友達とよく行っているようだが、今回その友達は部活のようなので俺が付き合う。

 他の男とは、まだ流石にそういう仲にまで発展したという話を聞かないし、つまりは幼馴染みである俺しか行ける奴がいない。

 「買い物って何買うんだ」

 「服とかお菓子とか、まぁ色々」

 「あっそ」

 何回も言うが、雛乃は完璧である、容姿だけでなくスタイルまで。そのためナンパされることが多々あるらしい。友達といるときは、やんわりと断りを入れるそうだが、俺がいるときは何もしない。

 何をせずとも俺が守ると分かっているから。

 『なぁそこのかわ』

 「早く買い物行きたいだろ」

 そこの可愛い娘、とでも言いたかったのだろうが、一々喋るまで付き合う必要はないので、口を開いた時には、俺はもう股関を蹴り上げていた。悶絶しながら押さえているのを無視して俺たちは行く。

 雛乃自体それには気にも止めず足を進める。感謝の言葉はいつも通りない、これが当たり前だと言わんばかりに。別に感謝されても興味ないから、一向に構わないが。


なぜ俺が、ここまで雛乃を助けるかというと、すでに習慣みたいなものだからだ。昔は雛乃みたいに完璧な奴は、将来世間を賑わす人物になるから汚点を付けられない、とか考えていたような気もする。

 簡単にいうと、雛乃は幸せになるべきだ。

 実際はどうか知らないが、少なくとも今までは何不自由なく生きてたんじゃないかと思わなくもない。興味ないが。

 「知ってる? 最近また殺人事件が多発してるの」

 「あぁ 最初は結構離れてたのに、段々こっちに近づいてるんだっけ」

 「そう! もしかしたら今ここにいたりして!」

 「ないね」

 店に着くまで暇な時間、メールも粗方返し終えて時間を持て余した雛乃が、俺にそんな話題を振る。チョイスは女子高生として微妙だが。

 殺人事件ね、それはそれで興味ないな。興味ないから幅広く知識を持てる、浅いけど。

 「ナイトはその人に会ったらさ、どうするの」

 「時と場合による」

 「じゃあ私と二人で人気のない場所だったら」

 「そんな状況はあり得ないから」

 「まぁね」

 そんな関係にはならない、そう二人して公言してるようなものだ。あくまで俺は雛乃の幼馴染みとして、雛乃は幼馴染みの便利な奴として、変わらずいるだけだ。

 どうせこの会話も何とかして聞いてるってことは分かってるんだ。だからいい加減に、その執拗な殺意を収めてほしい。

 「お前もだよ、輪廻」

 「え?」

 「独り言さ」

 あるいは気の迷いか。

 流石に街中じゃ無理だろうけど、人気がない場所だったら止めるのは不可能。それにいつ、隣にいる雛乃に移るかわからない。気まぐれだから、ちょっとした理由が仇となる。

 例えば完璧だったり。

 あるいは、普通過ぎたり。

 「あ、ここだよ」

 「どれくらいかかる」

 「軽く見積もって二時間くらい?」

 「ん」

 俺は一緒に買い物をしない。そういう関係に思われたら、雛乃が嫌だから。付き合うのは変な輩から声が掛からない店までの話、後はまた帰る時に入り口で待っていればいい。

 タイミングとしてはいい。


 雛乃が店の中に入ったのを見送ったら、路地裏に入る。人に見られないようにするのは気が折れるけど、まぁ何度もあったことだし慣れた。路地裏をドンドン進んで、これ以上は進めない突き当たりで振り返る。

 そこには一人の小柄な殺人鬼がいた。

 言わずもながら、連続殺人事件の張本人。

 『邪魔だったし駄作に殺意振りまいてたし、適当に潰しといたけど 別に構わないだろ?』

 「顔を見られてなければな」

 『そこは大丈夫だ もし見られたら今頃死んでるぜ 安心しろ、気絶ぐらいで済ませたから』

 「ならいいけど」


 赤い、少し錆びたような赤いフード付きのパーカーを被り、一見短パンに見えるデザインのスカートを穿いた奴。その赤はどうやってついた色なのか、わからない。まず興味ないし。

 『で、まだ続くみたいだけど時間はどれくらい?』

 「二時間くらいらしいけど」

 『あまり話し合えないな 足りない分は、また夜にでも』

 「ん」

 普通過ぎる俺に、汚点が一つ。殺人鬼と知り合いです。

 『んじゃ、サクッと話し合おうぜ駄作』

 「嫌な擬音だよ輪廻 お喋りな殺人鬼なんて見たことない」

 これが俺の、唯一普通じゃない、殺人鬼輪廻との、13回目のコンタクトだった。

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