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World∞

作者: AL_MarK

AL_MarKです。

初めて小説を書きました。矛盾があったり、稚拙な文章で読みづらいかと思いますが、一生懸命書きましたので読んでみてください。


題名は、World∞(インフィニティ)です。

読切用として書いてみました。


今後の成長のためにも、感想を頂けたらとても嬉しいです。

よろしくお願いします。

とある高校の廊下で、二人の男子生徒が最近はまっていることについて話していた。

「おい、ワールド∞って、知ってるか?」

「ああ、知ってる知ってる。最近流行の携帯ゲームだろ?俺もやってるぜ。ほら。」

と言って自慢げに携帯画面を見せた。

「おお!すげー強え!なあ、隣のクラスの世中(よなか) 彩人(あやと)、あいつ、ワールド∞のポイントランキングで日本一らしいぞ!」

「マジか!じゃあ、頼んで見せてもらおうぜ!」

走り出す二人。そして教室に入り、目的の少年を発見した。世中 彩人と呼ばれる少年は、寝ているのだろうか、一番後ろの窓際の席で伏せていた。二人は顔を見合わせ、声をかけた。だが、ピクリとも動かない。二人の内の一人が肩に手をかけ軽く揺さぶってみた。すると世中 彩人は、二人がギリギリ見える位置まで顔を動かし、片目で二人を睨みつけた。その目は不気味に赤かった。

「ひっ!」

少年たちはあまりの怖さに一目散に自分の教室に走っていった。そして、彩人はむくりと上体を起こし、カバンから鏡を取り出した。

(昨日は徹夜でワールド∞やったから、目が充血してら。)

上を向き目薬を点し、軽く瞬きをした。そして携帯を取り出し、画面を見つめる。そこには、小さくて赤いドラゴンが騎士の格好をしていて、なにやら上機嫌な様子だ。

(今日も、かっこいいなー!)

そう思いながら、満面の笑みを浮かべた。意味があるのかはわからないが、ドラゴンの頭らへんを指で撫でていた。周りの痛い視線を気にするつもりはないようだ。すると、担任の教師が教室に入ってきた。

「今日は転校生を紹介する。みんな、仲良くしてやってくれ。」

同時に教室がざわついた。

「転校生だって!イケメンがいいねー!」

「確かに!でも、世中みたいなやつは嫌だけどね。」

「だねー(笑)世中はイケメンで運動も勉強もできるけど、友達いないし、なにより重度のオタクだからね。マジないわー」

と言って世中を見ると、またもや睨みを効かせていた。

「ひっ」

少女たちはそれ以上世中 彩人の事は話さなかった。

ふー、と彩人はため息をついた。

(オタクを馬鹿にするやつは許さん。)

その表情はなんともかたくななものであった。

(それにしても転校生か。かわいい女の子がいいなぁ。そしてちょっぴりセクシーな・・・)

妄想が膨らむ彩人。

(あぁっ、でもダメダメ!俺には“ばあちゃん”がいるんだ!友達なんかいらん。俺はお前一筋だ!うん!)

と、また携帯画面のドラゴンを見た。どうやらこのドラゴン、“ばあちゃん”と呼ばれているらしい。そしてにんまり微笑んで、先生に携帯を使っているのをばれないように、また頭を撫で始めた。撫でることに没頭していたのか、隣に人が立っていることに気付かなかった。そしてその人は彩人の肩に手をそっとのせた。先生だと思いハッとした彩人は勢いよく立ち上がり、

「すいませんでした!没収だけはしないでください!」

と頭を下げて謝った。だが、その足元はどう見ても女子生徒のものであったので、おや?と思いながら見上げた。そこには彩人が描いた理想の女性が立っていた。

「そのトカゲさん、とてもかわいらしいですわね。」

「あ、あ・・・」

(かわいい!!)

かわいすぎて、一瞬何も話せなかった。教室の窓が開いているせいか、長い髪が少しなびく。目が合った瞬間、彼女の瞳の輝きに吸い込まれそうだった。さらに気づいてしまった。一目惚れしてしまったということに。そして携帯画面を見せて、ドラゴンを指さした。

「そそそ、そうなんです!このドラゴンは“ばあちゃん”って言って・・・」

こんな世中 彩人は見たことがない。クラス全員がそう驚いていただろう。そして彩人がドラゴンの名前を“ばあちゃん”にしていたことにも驚いてたはずである。しかし彩人は重要なことを忘れていた。

「おーい、世中―。お前後で携帯指導。職員室来いなー。」

「あっ」

血の気が引いた。彩人にとっては携帯が全てだったからである。その時、転校生の女の子は彩人の手を握った。

「ひぇっ!?」

びっくりして声が裏返る。

「わたくし、花咲(はなさき) (みのり)と言います。これから・・・よろしくね。」

「世中 彩人・・・です・・・」

(あぁっ・・・!!!)

恥ずかしい?嬉しい?よくわからない感情で心がいっぱいになり、顔が真っ赤になった。そしてどうにもできなくなって、机に伏せてしまった。実は、きょとんといている。

(なんていうかこの気まずさは・・・早退するしかないな・・・)

携帯指導と花咲 実から逃げるため、彩人は早退を決意したのだった。


緑が生い茂る河川敷の空は、雲一つもなく、まるで一枚の画用紙に青いペンキを全てぶちまけたかのようだった。そしてその土手を、一人の男子高校生が歩いていた。そして彼は一つため息をつき、つぶやいた。

「今日は大変だった・・・でも、転校生の花咲さん、かわいかったなぁ。ちょっと胸も大きかったし・・・」

実の豊満な胸を思い出し、少し顔を赤らめた。彩人は土手の坂に座り込み携帯を取り出した。

「“ばあちゃん”、今日も冒険しに行こうか!」

その言葉に呼応したのか、“ばあちゃん”は嬉しそうに見える。そして彩人は冒険スタートのボタンを押した。


青空は、徐々に濁りだし、やがてきれいなオレンジ色に染まった。

<バッテリー残量10%>

その文字が携帯画面に映った時、彩人はもう夕方だということに気付いた。

「・・・やっば!!もうこんな時間か!そろそろ帰らないとな。」

まさか朝から夕方までやるとは・・・若干の反省をしながら立ち上がり、帰路につこうとしたとき、後ろから甲高い声で呼び止められた。

「おぅい、世中 彩人くーん。僕たちと遊ぼうよー。」

振り向くと約10人程の不良たちが立っていた。その集団の中央にいる声をかけた不良は、不良とは思えないほどきれいな顔で鼻立ちも良く目もパッチリしていて、まるで女の子のようであった。周りと比べると相当な差で、枯れた花たちの中に一輪だけきれいに咲いている花があるようだ。集団に囲まれた彩人だが、それに臆することなく集団をかき分け帰路に着こうとした。

「なんだよ、またお前らかよ。邪魔邪魔。」

どうやら知り合いのようである。

「待てよ!今日という今日は決着をつけるぜ!」

女の子のような不良が声を張った。何か因縁があるのだろうか。

「だーかーらー、ナンバー1イケメンは唐沢(からさわ) (ほむら)、お前だよ。じゃあな!」

振り返ることなく彩人は歩き出した。しかし彩人の前に不良二人が立ちはだかった。

「土下座しろよ世中・・・土下座してあなたがナンバー1イケメンだって言えよ!」

それを聞いた途端、彩人は焔のほうに向きなおり、惜しげもなく深々と土下座した。

「あなたがナンバー1イケメンです。」

そう言って立ち上がり、何も言わずに歩き出した。

「くっ・・・!!!お前ら、世中を押さえろ!」

そう言うとすかさず二人の不良たちが彩人の両腕を押さえた。

「違うんだよ・・・それじゃ俺の気が収まらねえんだよ・・・ずっとナンバー2って言われていたやつの気持ちがわかるか?わかんねぇよな・・・お前の顔に、傷つけてやるよ。」

右ポケットからナイフをゆっくり取り出した。

「なっ!やめろ焔!早まるな!」

「俺が、一番なんだぁぁぁぁぁ」

「くっそ!」

焔が彩人に切りかかろうとしたとき、彩人は掴まれた両腕を軸に、逆上がりのような形でナイフを持っている腕を蹴り上げた。ナイフが高く舞い上がる。それと同時に彩人のポケットから携帯が落ちた。

(しまった!)

落ちた携帯を見た焔は、ニッコリ笑顔で拾った。

「そういえば小耳にはさんだんだ。世中 彩人は携帯ゲーム、ワールド∞のナンバー1ランカーっていうことをさ。」

「だったらなんだ!携帯返せこのやろう!」

「くく!なんだ!そういう必死な表情もできるんだねぇ!!その顔を見たかったんだよ俺はさぁ!」

歯を食いしばる彩人。そして彩人を押さえる人数が二人から四人に増えた。

「まずはこれをぶっ壊すよぉぉぉぉぉぉ」

焔は携帯を両手で握り、折ろうとした。

「や、やめろぉぉぉ!!!」

焔が携帯に力を入れた瞬間、銃声が河川敷に鳴り響いた。

バチィィ!!!

その銃弾は焔の手を弾いた。弾はBB弾。銃はどうやらエアガンのようだ。

「うぁっ!」

それと同時に携帯が落ちる。

(俺の携帯!“ばあちゃん”ちゃん!)

彩人、拾おうとするが複数の不良に取り押さえられ体を動かすことができない。そして焔が手を痛みを堪えて叫ぶ。

「誰だよぉぉぉぉ、邪魔すんなよぉぉぉぉ」

河川敷の遠い遠い場所に、全身が黒色の服でまとまっていた。マントの様な物も羽織っている。そして拡声器を持っていた。

「誰かって?僕の名は、ゼロ。この世に蔓延る悪を断ち切り、世界に平和と自由をもたらし暗躍するスーパーヒーローだ。」

と、セリフめいたものを言い切った。それを聞いた彩人は、

「か、かっこいい!!!!!!」

ゲームで出てくるようなセリフだったからだろうか、目をキラキラと輝かせた。

そしてゼロは、エアガンの銃弾を切り替え、また撃った。その銃弾は、焔やその他の不良たちではなく、焔の足元に飛んで行った。

「・・・マグネティックギガバースト!!!」

その銃弾は彩人の携帯に当たると破裂し、中から粘り気の強い液体のような物が携帯についた。その後ゼロが何かをかざすと、携帯はゼロのもとへと飛んでいった。どうやら彩人はまたもや感動した。

「マグネティックギガバースト・・・魔法みてえだ!そしてこの技名のセンス、あいつ絶対オタクだ!」

オタク仲間かもしれないというだけで彩人は嬉しかった。高校ではゲーム好きな人がいても、誰も彩人の話題についていけなかったため、友達という友達ができなかった。

「て、てめぇざけんなよっ!携帯返せよ!」

せっかく手に入れた彩人の弱みを盗られた焔が悔しそうに叫んだ。

「それはできない。何故なら僕もこの携帯を弱みにするからだ。」

《え、えーーーーー》

一同、驚嘆。

「そして僕は!」

しゃべり続けるゼロ。

「彩人くん、初めて見た時から君が好きだ!」

《えーーーーーーー》

ドン引きである。

「と、いうわけで彩人くん、この携帯を返して欲しかったら、僕についてきてくれ。」

そう言って彩人たちと反対の方に歩き出した。だが、焔は食い下がる。

「ま、待てよ、そいつは俺の獲も・・・」

焔が言い切る前にゼロは途端に振り返りエアガンを撃った。その弾は焔たちの前で爆発した。

「うわっ!」

これを見て腰を抜かす不良たち。彩人を押さえる力が弱まった。彩人はその隙を逃さず、腕を振り払い、走り出した。

「待て世中!まだ決着は・・・」

またもさえぎるように拡声器の声が。

「もう諦めろ。まだ彩人に近づくというなら、さっきの爆発よりも威力の高い、ファイナルバーニングエクスプロージョンを撃たせてもう。」

それを聞き、たじろぐ不良たち。

「こいつきもちわりぃ!退くぞ!」

と焔は言って、不良たちを引き連れ帰っていった。

一段落し、ゼロのもとに駆け寄る彩人。

「あ、ありがとう・・・ゼロ。助かったよ。」

ピタリと立ち止まるゼロ。小声でぼそり。

「褒めてくれた・・・」

ゼロは頬を少し赤くした。彩人には聞こえなかったが、彩人は何故か寒気がした。

「それよりこれ・・・」

ゼロは携帯をさしだした。

「あっ・・・ありがとう!!!」

パッと花が開いたような笑顔を見せた彩人。その笑顔を見てゼロは照れた。顔を赤くしているゼロに彩人が尋ねる。

「それよりゼロは、なんで俺のこと知ってたんだ?」

少し間を空け、答える。

「小学校の頃から、見てたから・・・(照)」

(えっ・・・)

ゼロの言葉に彩人はもはや恐怖し、震えた。

「それでわかったんだ。」

ゼロが再び話す。

「ななな、何が、わかったんだ?」

若干怯えながら尋ねた。

「君が“ワールド∞”のプレイヤーだってことにね。」

それを聞き、目の色が変わる彩人。

「!!もしかして、ゼロもやってるのか?」

「もちろん。でも、君がやってるワールド∞とは違う。」

「?どういうことだそれ。」

「それを教えるたいから、ついてきて欲しいのさ。君なら真実と向き合い、戦うことができると思ったんでね。」

と言ってゼロは歩き出した。

(真実?戦う?なんだよそれ!めっちゃ気になる!)

ゼロとの距離が空いたので小走りでゼロに追いつく彩人。

「なあ!ゼロのモンスター見せてくれよ!」「えっ・・・そんなに見たいのかい?(照)」

「いや下ネタじゃねえよ!」

「ですよね。」

傍から見ると仲のいい友達に見えた二人だが、実際はなかなか複雑な関係なのであった。


きれいに染まっていたオレンジ色の空はもうどこにもなく、あたりは暗くなり、一番星が見えていた。二人は高級住宅街に入った。歩くこと数十分。とてつもない豪邸が現れた。そしてその門の前でゼロは立ち止まった。

「ここが、僕の家。」

若干謎の照れが入っていた。

「マジかよ・・・なんか塔みたいのもあるぞ。建築法とかに引っかかるんじゃ・・・」

「世の中、お金でなんとかなるのさ、彩人くん。」

彩人は、さっきとは違う恐怖も覚えた。

「さあ、あの塔に行くよ。」

と言って、パスワードを入力し、門を開けた。ここまで来ると、急に不安になったが、同じことを繰り返す毎日に、現実世界に飽き飽きしていたことを思うと、不安や恐怖がなくなった。ゴクリと唾を呑みこみ、よし、と自分に気合いを入れて、彩人も門をくぐった。塔の下までくると、塔がより一層高く見えた。一番上の階だけ明かりがついている。中に入り、エレベーターの前で、ゼロがまたパスワードを入力した。するとエレベーターの扉が開いた。二人は速やかに乗り込んだ。ゴウンゴウンと動き出すエレベーター。少し沈黙があって、ゼロが話し始めた。

「彩人くんって、自分のモンスターのこと、“ばあちゃん”って呼んでるよね。その・・・おばあちゃんに似てるモンスターなのかい?見たことなくて・・・」

ずっと気になっていたことなのだろう。だが、おばあちゃんに似てるモンスターという言葉は少し失礼と感じて、若干申し訳なさそうに尋ねたのであった。それを聞いて吹き出す彩人。“ばあちゃん”を見せながら話し出す。

「はは、違う違う!ヴァルキリーフレアドラゴンのヴァをとって“ヴァーちゃん”なんだよ。」

(ど、どんなネーミングセンスだよそれ!紛らわしいよ!いや、それよりヴァルキリーだって!?聞いたことないぞそんな種類のモンスター!)

ヴァーちゃん自慢をしている彩人の話はゼロの耳には全く入らず、拳に力が入っていた。

(これで、世界を救えるかもしれない。)

そしてエレベーターが、チン、という音とともに止まった。なかなかの勢いで扉が開く。

「やっと着いたのか!」

と、彩人はゼロよりも早くエレベーターを出た。部屋は研究室のようだった。すると何かが走ってくる音が聞こえ、そちらの方を向くと、得体のしれない動物が彩人の顔に飛びついてきた。

『おかえり零―!!!』

「ぶほぉあっ!」

割と重量があるのか、彩人はそのまま押し倒された。そして両手でその動物を顔から外した。

「こ、これ・・・ドラゴン!?」

驚愕する彩人。

『あれ?あ、よく見たら零じゃない!これは失礼致しました。』

と言って小さなドラゴンはお辞儀をした。全体的に黒色で、額には黄色のクリスタルがついていて、腰には左右に銃が装備されている。そして耳がちょっと垂れている。

「コラ、イリオス。僕の客人になんてことするんだい。」

『ごめんごめん、エレベーター使う人は零かじいじしかいないから間違えちゃったよ。』

零とイリオスと呼ばれるドラゴンは、当たり前のように話しているが、彩人は感動の渦の中心にいた。

「ほほほ本物のドラゴン・・・しかもドラゴンがしゃべった!!!それに零って・・・」

「ああ、僕の名前は黒瀬(くろせ) (れい)っていうんだ。そしてこのドラゴンは・・・」

と、説明しようとしたときに、突然部屋の巨大モニターのスイッチが入り、白髪だが、年を感じさせないような、ちょっぴり太ったおじいさんがモニターに映った。しかも顔が画面に近い。零と彩人もそれに気づいた。

「じいじ!近い近い。」

「じ、じいじ!?」

「ドラゴンの説明はわしからさせてもらおう。・・・ん?なにやら零が好きそうな少年じゃな!ひっひ」

「そういう冗談はよして!じいじ!」

少し照れている零。このやり取りを見て彩人は怯えることしかできない。

「冗談じゃ。そのドラゴン、イリオスはわしが作ったんじゃ。もちろん・・・えー・・・君!、なんて名前じゃ?」

「世中 彩人です。」

「そうか彩人か!もちろん彩人くんのモンスターも作ることができるぞい!」

「ちょっとじいじ!下の名前で呼ばないでよ!」

(・・・もういいよその話は・・・)

彩人、涙がぽろり。そして彩人はあることにきづく。

「そうだゼロ!結局話ってなんなんだ?君がやってるワールド∞とは違うとか、真実とか戦いとかさ!」

「そうだね・・・そろそろ話さないとだね。」

彩人に緊張が走る。

「彩人くんには、僕と一緒に宇宙を救って欲しいと思ってるんだ。」

「う、宇宙!?それどういうことだ?宇宙で何か起こっているのか?」

「じいじ、あの映像を。」

すると、じいじはモニターから消え、一つの惑星が映った。

「この惑星は・・・?」

「この惑星はまだ名もない星。何光年も先の星さ。ちょっと見ててくれ。」

しばらくすると、その惑星がだんだん黒ずんでいくのがわかった。そして一部分が赤くなっていき、大きくなって、その中央が光っている。

「!!!これは・・・」

「これはこの星が浸食され死んでいく動画だ。実はこの赤い部分は花なんだ。その下に幹がある。最初は種が植えられて、星のエネルギーを吸い取って花を咲かせる。花の中央に輝いているのは実だ。その実からはその星と同じ大きさのエネルギーがあるとわかった。僕はこの浸食を止めたい。そして彩人くんにも手伝ってもらいたいと思っている。」

「ちょ、ちょっと待って!なんでこの浸食は起きるんだ!?自然現象じゃないんだろ?」

「もちろん、人為的な事であることは確かだ。しかし、誰の仕業かは全くわからない。確かな目的もわからないが、数日後、この光がなくなっていることから、恐らく星のエネルギーを集めていると考えられる。だから浸食をおこなっているやつを探し出し、やめさせる。いつ地球にも種が植えられるかわからないからね。」

彩人、一考し、深呼吸をする。

(これって、かなり現実離れしてないか?非日常の世界。俺はそういう世界を求めていたんだ。ここでやめたら、もうチャンスはない気がする!)

「・・・わかった!俺、ゼロと一緒に宇宙を救うよ!」

ゼロはきょとんとした。思っていたよりもあっさり彩人が決意したからだ。だが、それもすぐに喜びに変わった。

「ほ、本当か!う、嬉しいよ!もしかしたら死ぬかもしれないけど、一緒にがんばろう!」

彩人は固まった。だが、それはすぐ溶けることになる。

「まあ!楽しそうなお話ですわね!私もご一緒させてください。」

彩人と零は、背後から聞こえた女性の声に驚き、一斉に振り返る。

「は、花咲さん!?どどど、どうしてここに!?」

急に現れた実に驚き、焦る彩人。それを見てちょっと苛立つ零。

「君はどうやってこの場所を知って、どうやって入ってきたんだい?パスワードがかけられているはずだが。」

「実は河川敷で世中くんを見つけまして・・・その後をついていったら大きな門が!パスワード?ありましたわね。適当に、ピピピって押したら扉が開いたんですの。・・・あら、こんなところにかわいいトカゲちゃんが!よしよし~。」

イリオスは実に抱きかかえられるが、抜け出そうとじたばたする。

『助けて零!こいつ、なんだか異様に柔らかいぞ!』

その光景を見て彩人は羨ましい、と切実に思った。そしてこの零は話を戻した。

「その花咲さんとかいう人は置いといて、早速モンスターを作ろう、彩人くん。」

「モンスター!!!ヴァーちゃんをついに手にすることができるのかぁ!!!」

彩人はこれ以上ないくらい目を輝かせた。その時、実は、まだイリオスとじゃれあっていた。

「申し訳ないが、ここに左手を置いてくれないか?少しちくっとするけど、我慢してね。あと、ワールド∞のデータを利用するから、携帯貸して。」

「お、おう。」

携帯を渡し、左手を置くと、ヴーン、と機械が起動し始め、手の下の台が光始めた。そしてピンポン、という機械音と共にアナウンスが流れた。

<指紋認証完了。血液を採取します。>

すると、左手人差し指に軽い痛みが走った。

「いてっ。指紋認証って、ワールド∞と一緒だな。あれも指紋認証でその人個人のオリジナルモンスターを生み出せるんだよな。」

<手を、外してください。>

そう言われて、彩人は手を外した。

「そう、この機械にはワールド∞のデータも組み込んであるからね。そしてじいじは、血液を使ってモンスターを作ることに成功したんだ。同じ遺伝子だから性格もほぼ同じになるみたい。」

「ってことは、俺が二人ってこと!?確かに、ゼロとイリオスも似てる!」

<解析完了。具現化します。>

すると、隣にあるカプセルが動き始めた。

「ついに!ついに!ヴァーちゃんと会えるんだ!!」

彩人は今までしたことのない興奮と希望を抱いた。

<解析完了。具現化します。>

もう一度同じ機械音が後ろで流れたので、二人はおかしい、と思い振り返ると、実がカプセルの前でわくわくしていた。

「私のトカゲさん・・・!」

彩人と零、こける。

「あの女、どこまで勝手なんだ。」

零がぼやく。その時彩人のカプセルから機械音が。

<具現化に成功しました。>

と流れると、カプセルがプシュー、という音とともに開いた。煙も中から出てきている。彩人は高鳴る鼓動を抑えられなかった。そして中から勢いよく何かが飛び出てきた。そのまま彩人の胸に飛び込み、彩人は押し倒された。

『ずっと・・・ずっと会いたかったよ!彩人!』

ヴァーちゃんはそう言った。当然なのだが、同じことを彩人も思った。

「俺も・・・ずっと会いたかった!」

そう言うと二人は抱き合い涙を流しあった。それを見ていた零は、微笑ましい様子で眺めていた。

「良かったね・・・彩人くん・・・」

だが、こちらも忘れてはいけなかった。

『あなたが私のマスター・・・私はフェアリー族のディオネですわ。よろしくね。』

実の前には小さい妖精がいた。髪型は実と似ていて長く、前髪の分け方も同じだ。その妖精を見て実は、

「か、かわいい・・・トカゲちゃんを期待してたけど、このちびっこちゃんもかわいいわぁ~。」

『えぇっ、ちょっとガーン!』

なにやら賑わっているようだ。そこに彩人が声をかけた。

「あの・・・花咲さん。本当に、俺たちと一緒に宇宙を救いに行くんですか?」

彩人は真剣に尋ねた。

「もちろんです。私も、今の生活にはうんざりしてたんです。それに、宇宙を救う三人の少年少女たち!なんて、かっこよくないですか?」

最後の言葉には何も言えなかった。彩人もまさに思っていたことだからである。彩人はこの言葉で、実が俺と同じ気持ちで、宇宙を救いに行きたいと言っているのがわかった。

「じゃあ、花咲さんも行こう!いいだろ!?ゼロ!」

零は軽くため息をついて、つまらなそうにうなずいた。

実に笑みがこぼれる。

「ありがとうございます!ゼロくん!」

「彩人くんのおかげだってこと、忘れないように!」

ふん、と鼻を鳴らし、じいじ、と呼んだ。するとまたモニターにじいじが映った。

「おお、準備ができたか!おや、なんじゃ女の子が増えとるじゃないか。」

「どうも~」

実、にっこり会釈。

「か、かわいい娘じゃな!」

ちょっと照れるじいじ。

「じいじ!」

「わかっておる!もうスターライトゲートの準備はできておるぞ!隣の部屋に向かうんじゃ!」

「よし、二人とも、ついてきて。イリオス、おいで。」

「よっしゃ!行くぞ、ヴァーちゃん!」

『ガウア!』

扉を開ける零についていく二人。扉の向こうには、広い部屋があり、その奥には、丸型の大きな扉がある。扉といってもドアノブなどはなく、扉の縁から内は、光り輝いている。そのSFチックな扉を見て彩人と実は興奮を抑えられなかった。

《おぉ~!!》

ここで彩人に一つ疑問が浮かんだ。

「なあ、スターライトゲートってなんなんだ?」

「スターライトゲートは、じいじが開発したワープさ。星の光を辿って目的の星までワープするから、最短距離で行けるし、なにより速い。」

彩人、ふむふむと納得するが実はポカンと口を開け、はて、といった様子だ。

「さあ、早速ゲートに入るよ。目的地は、まだ地球では名前もつけられていない星だ。」

その言葉に慌てふためく彩人。

「ち、ちょっと待って!心の準備が・・・」

「私は準備万端です!」

「そんな!」

希望、興奮、不安・・・色々な想いが彩人を包んでいた。それに気づいたのか、零はそっと声をかけた。

「扉はいつでも自分の目の前に開かれている。気持ちが整ったらでいい。僕らのタイミングではなく、君が行きたいと思うタイミングで行こう。」

その言葉を聞いて、彩人は力んでいたものがなくなった。一度大きく深呼吸をし、目を閉じた。そして、

「よし!行こう!!!」

実、大きくうなずく。零は微笑み、彩人の手をとった。

「ここから僕たちの旅は始ま・・・ぶぐふぇっ!!」

「紛らわしい感じで言うな!」

彩人のパンチが零に直撃した。

「あらあら、仲がいいんですのね。羨ましいですわぁ」

「あ、いや、これは全然仲良くないんですよ!」

「彩人くん、今のは重い一発だったよ・・・てへ。」

彩人が無言で殴りかかるが零は華麗にかわした。当てるまで殴りにかかる彩人。それを見てクスリと笑う実。そんなやりとりをしながら、三人はゲートに入っていった。そしてその後ろで三匹は、やれやれ、といった様子でゲートに入っていった。


(・・・眩しい・・・ここは、どこだろう。)

一瞬光がより強くなると、だんだんと辺りが見え始めてきた。周囲はジャングルとまではいかないが、緑豊かで、まるで地球にいるかのようだった。見たこともない三角形の葉の植物や、見たこともない昆虫、そして巨大な鳥が飛んでいた。気候は暖かく、生物が成長しやすいんだな、と納得できるものであった。

「ついに・・・来たんだな・・・!」

彩人が感極まりながらつぶやいた。

「ワープって、ほんとあっというまでしたわね。あら、見たこともない蝶々ですわね。」

実は相変わらずの調子である。

「この星の環境が地球に似ているというのは助かるね。」

零はそう言いながら周りを観察していた。さらに続けて零は言う。

「彩人くん、僕はさっき死ぬかもしれないって言ったよね?」

「ああ、そういや、言ってたな。一体どういうことなんだ?」

「私も気になります。」

「それはこの星に植えられた種が・・・」

と説明しているときに、零の携帯が鳴りだした・

<ピピピピ・・・接近するシードエネルギーを発見、シードエネルギーを発見。>

一気にこの場が緊張感に包まれた。

「ちっ!もう見つかったか!!」

「お、おいゼロ!シードエネルギーってなんだよ!敵か!?」

「その通りだよ彩人くん・・・詳しい説明は事が済んでからね!」

するとまた携帯が鳴りだす。

<上空にシードエネルギー発見。数は1です。>

全員が上空を見上げる。そこには巨大な蝶・・・ではなく、蝶の羽を持った蛇がいた。触覚も生えている。だが、その色は全体的に黒くなっており、まるで影のようだった。

「まあ、先ほどの蝶々、あんなに大きくなっちゃって・・・」

《いやあれ蝶ではないだろう!》

蛇はこちらに狙いを定めて急降下してきた。「これ・・・どうするんだよゼロ・・・」

彩人はびっくりして腰が抜けているかのようだった。だが零は携帯を手に持ち、襲いかかる蛇を見ていた。その姿を見て、かっこいいと思った。あんな化け物みたいなのを目の前にしてすくまないなんて。その時零は彩人を横目で見た。

「見ててね彩人くん。僕のシンクロを。」

「え・・・」

「イリオス!シンクロだ!!!」

零は携帯のシンクロボタンを押して叫んだ。

『待ってました!』

【シンクロ!!!!!】

零とイリオスは紫色に光だし、互いに混ざり合った。蛇はその輝きに目を眩ませている。

「シン・・・クロ・・・」

彩人は、呆然とした。が、俺もシンクロしたいと思った。そう感じたとき、ふと下を向くと、ヴァーちゃんも彩人を見ていた。

(俺たちもシンクロしたいな!)

と、お互いに顔を見合わせた。やがて紫の光が収まりだし、形がくっきりしてきた。そして零が現れた。しかし、全くシルエットは異なっていた。両腕がイリオスのような腕になり、指までドラゴンであった。どんなに重たい引き金でもひけそうなくらい、大きい。さらに両手には巨大な銃を持っている。銃口も相当な大きさだ。頭にはイリオスの垂れた耳が生えていて、小さな羽と尻尾が生えていた。その姿はまさに竜人であった。彩人はあまりのかっこよさに目を奪われていた。

「醜き大蛇よ、暗い暗い闇の中で永久に眠れ。」

と言って銃口を蛇に向けた。蛇は構わず零に向かって突進した。それと同時に銃口から紫色の光がこぼれ始めた。

「ダークネスエナジードライブバースト!!!」

「すごい技きた!」

次の瞬間、二つの銃口から紫色の巨大な球体の弾が撃たれた。その二つの球体は蛇に向かう途中で混ざり合い、さらに巨大になった。その大きさは蛇よりも大きくなっていた。そしてその弾は蛇に直撃する。すると蛇はもがきだし、そのまま紫の球体に吸い込まれていった。そしてその弾は空の彼方へと飛んでいった。

「ふぅ・・・なんとかなったか。」

そう言うと巨大な銃は塵となって消えてしまった。緊張が一気に解けたのか、彩人と実はその場でしゃがみ込んでしまった。

「はは・・・予想以上だ・・・」

「今のは、どういうことですの?さっき見た蝶々さんとは大きさが違いましたわ。」

零は、二人の手を取り立ち上がらせた。

「・・・種は、異星から来る者を拒む性質があるらしい。異星からの来訪者に対し、種は星のエネルギーを使い、攻撃する。」

実、ハッとする。

「だからさっきの蝶々さんが攻撃してきたんですのね!」

「そう、そして種はもう既に根を張っているのだろう。根はこの星の生物を感知し捕え、エネルギーを吸収する。逆にエネルギーを送ることもできるんだ。

「さっきの巨大化はそういうことだったのか・・・」

彩人は納得した。零はさらに話を続ける。

「僕たちはもう、種に見つかっている。さっきのような敵にいつ襲われるかわからないから、彩人くん達もシンクロするんだ。」

と言い切った時に、またあの機械音が流れた。

<シードエネルギー発見。数は、2です。>

零は、再び銃を召喚する。今度は一つの銃に銃口が六つついている。それを両手に持った。

「僕が一匹引きつける!彩人くんたちでもう一匹頼んだ!」

と言って走り出した。敵は上手く二手に分かれた。

彩人たちに向かって牙を見せながら突進してくる敵。

「くっ・・・やるしかないのか・・・!これが、俺が選んだ道なんだ!行くぞヴァーちゃん!!」

『がうあ!!!』

彩人、携帯を真上にかざす。

【シンクロぉぉぉぉぉ!!!】

カッと赤い光がその場を包んだ。彩人とヴァーちゃんは赤い光となって、華麗なダンスを披露しているかのような動きを見せた。敵は光に一瞬戸惑った様子だったが、目標を実に定めた。

「あら、これはどうしましょうねぇ」

『そんなのんびりしてる場合ですの!?私たちもシンクロしましょう!』

ディオネがもっともな意見を言う。が、

「私、携帯をあの研究室に忘れてきてしまったんですの。」

ディオネ、目が点になる。

『え、えーーーーー』

構わず接近する敵。それに対し勇敢に立ち向かおうとするディオネ。

『私が、盾になります!』

「ディオネちゃん・・・やっぱりダメーーー!!!」

そう叫ぶと実はディオネの前に出た。

『ど、どうして!?』

「あなたは私ですもの・・・自分が自分を守らないで、誰が守るんですの!?」

それを聞いてディオネ、実の隣に来る。実もディオネの意思を受け取ってか、一度だけディオネを見て前を向いた。そして敵がもう目の前まで迫って、実たちは目を閉じた。

「やらせるかよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

彩人の声が響き渡る。右腕が巨大なドラゴンの腕になり、その手にはさらに巨大な大剣を持っていた。左腕は若干細く、籠手のようなものがついている。彩人は実たちの前に立ちはだかり、剣で敵を弾き飛ばした。

「大丈夫ですか!?花咲さん!」

彩人の声に気付き目を開ける実。

「世中くん!私・・・いや、私たちなら大丈夫ですわ!ありがとう!」

「褒めてもらって、嬉しいですっ!」

弾かれて少しひるんだ敵は目標を彩人にして襲いかかる。

「お前・・・今朝俺を・・・オタクを馬鹿にした女に顔が似てるな!オタクを馬鹿にするやつは、許さんっ!!!」

彩人は大剣を持ち上げ、思い切り振りかぶり、迫りくる敵を叩き切った。敵は真っ二つに切れて、そのまま土に溶けていった。

「ふぅ、危なかった・・・」

そこに駆け寄る実。

「世中くん!」

「は、花咲さん!」

彩人、このまま抱き合うシーンを妄想するが、そう上手くはいかない。

「この腕すごいですねー!とげとげしてますね!」

「あ・・・はぁ・・・」

がっかりする彩人に、敵を倒したのか、走って戻ってくる零。

「彩人くん!上手くシンクロできたみたいだね!ケガとかは大丈夫だった!?」

「まあ・・・見た目な・・・」

首をかしげる零。

『聞かないであげてください。ふふ』

ディオネがにこやかに話す。そして零はなんとなく悟ったのか、少し怒り口調になった。

「さ、早く種を破壊しに行くよ。」

同時に早歩きにになった。

「あ、待ってくださいよ~」

「そうだよゼロ、ゆっくりいこうぜ!」

二人ののんきな言葉にイラついた零は、振り返って怒った。

「君たちは宇宙を救う気があるの・・・!!!」

何かに気付いた零は途端に走り出して、彩人たちの背後に回り込んだ。彩人と実は、急にどうしたんだという風に後ろを向くと、次の瞬間、まばゆい光と共に零は炎に包まれた。そして零は黒こげになり、前に倒れこんだ。それを見て言葉を失う彩人。

「・・・!!!」

「い、いやああああああ!!!」

気が動転する実。ハッと殺気に気付いた彩人は空を見上げた。すると、先ほどの零が撃った紫色の球体の弾よりも大きい炎の玉が飛んできていた。彩人はとっさに大剣を盾代わりにし、炎の玉を弾き飛ばした。炎の玉が飛んできた方を見ると、ゆるやかなくせのついた金色の長髪が目立ち、顔には怪しげな仮面をつけている人物が宙に浮いていた。そして謎の仮面をつけた人物は、地上に降りて言葉を放った。

「のいあうHんヴぃえJんヴぁKMV?」

彩人と実は仮面の男が何をしゃべっているのかわからなかった。それを察してか、すぐに日本語で話してきた。

「種の様子を見に来たら、まさか言語の切り替えができない下等種族と出会うとはなぁ。もしや貴様らが最近私の邪魔をしている者たちか?」

「お前が種を植えているやつか!」

彩人は相手の質問には答えず、声を荒げて言い放った。

「私の質問には答えてくれないのかな。まあ、今のが答えと言ったところか。君の質問に答えよう。そう、私が種を植えている者だ。」

彩人、何か言おうとするが、その前に実が仮面の男に尋ねた。

「なぜ星を殺してまで、エネルギーが欲しいんです!?」

男は鼻で笑って答えた。

「当然、この宇宙を支配するためだ。現在我々の種族では、この宇宙を誰が最初に制覇できるかという競争をしているのだ。ふっ、だが宇宙は広くてな、あと数億年はかかりそうなんだ。小さい星のエネルギーは、寿命を延ばすのに使わせてもらっているよ。」

彩人、歯を食いしばる。

「なんて勝手な事をぉぉぉぉ!!!!」

彩人は仮面の男に向かって斬りかかった。

「この種族には話し合いが通じなさそうだ。」

「それは!お前もだよ!!」

仮面の男は斬られる直前にバリアのようなものを出した。彩人の大剣はそれにいとも簡単に弾かれた。

「ぐっ・・・!」

「おっと、そういえば自己紹介が遅れたな。我が名はゼダス。宇宙を支配する者だ。」

「ふ・・ざけるなぁー!」

彩人は再び突進するが、ゼダスが指を鳴らすとバリアから先ほどの炎の玉がいくつも出てきて、彩人を襲った。

「くっ、なんて数だよ!」

どうやら炎の玉は操ることができるのか、自在に動いていた。彩人は懸命に大剣で弾いたが、背後から来た球に直撃し、零と同じように黒焦げになった。

「世中くん!!私も、戦います!」

まだ気絶してなかったのか、彩人は声を振り絞った。

「は・・な咲・・さん、・・逃げて・・・」

だが、その言葉は実には届かなかった。

「あなたの種族はダメな種族です!他人の文化を壊して、それを支配して・・・それをするのがあなたたちの文化であり、生き方ならば、それこそ下等種族です!!」

「口が達者な女だな・・・。今の言葉、我が種族を侮辱したものとみなし、私が代表して貴様を殺してやろう。」

と言って指を鳴らした。同じように、バリアから炎の玉が出てきたのだが、さっきよりも大きい玉が一つ現れた。

「特大のをくれてやる。」

同時に玉が実をめがけて飛んでいった。しかし実とディオネは、それに恐れることなく、炎の玉を見つめ、腕を広げ立っていた。その様子を見ている彩人。

(・・・花咲さんを・・・助けたい・・・死なせたくない・・・)

そう思っていると、心の中でヴァーちゃんの声が聞こえた。

『俺も助けたい!気持ちは・・・彩人と一緒だよ!あいつを倒そう!そして花咲 実を守るんだ!!!』

薄れゆく意識の中で、心臓が大きく鳴ったのがわかった。同時に彩人の携帯が鳴り響く。

<シンクロ率100%。シンクロ率100%。>

その瞬間、彩人は金色と赤色の光を放ち始めた。そしてそのまま立ち上がり、実たちの前に立った。

「世中くん、危ない!」

炎の玉が光輝く彩人にぶつかる。だが今度は炎にのまれていない。片腕で動きを完全に止めた。そして光が徐々に収まっていく。変貌した彩人の姿が現れる。光は足元から収まっていった。見えてきた足は鋭くて大きいドラゴンの爪。スネあたりからは、ヴァーちゃんが着けていた騎士の鎧が。さらに鎧は上半身まで続いたが、右腕だけは鎧がなく、先ほどと同じ、ドラゴンの腕である。しかし異なるのはその腕が炎を纏っているということだ。そして、大剣も見当たらない。頭の部分が現れてきた。兜を装着しているようだが、どちらかというと軽量タイプの兜のようで、顔もちゃんと見えている。牙が生え、眼つきも鋭くなり、瞳の色が赤色に変わっている。太く強靭な尻尾、どこまでも羽ばたけていけそうな羽。その姿はまさに竜人だった。そして彩人は炎の玉を握り潰した。竜人となった彩人を見て不敵に笑うゼダス。

「ふふ・・・ふははは・・・おもしろい!おもしろいぞ下等種族が!ならばこれを受けてみよ!!」

ゼダスは再び空へ飛び、バリアを大きく広げ、無数の炎の玉を出現させた。

「私の計画の邪魔はさせんよ!」

一斉に放たれる炎の玉。彩人は、燃えさかる右腕を天にかざした。すると掌から炎が数メートルのぼり、徐々に凝縮されていく。同時にオレンジ色に煌めく大剣が出来上がっていく。その光を見て実は独り言をこぼした。

「きれいな光・・・まるで、太陽の光みたい・・・」

光の剣が出来上がると、彩人は翼を使いゼダスの方へ飛び始めた。迫りくる炎の玉を剣で切り裂き道を作る。そしてバリアまでもう少しのところで剣をまっすぐ伸ばし、突き刺すように突進した。

「くふは!このバリアは誰にも破れぬのだよ!」

構わず突き進む彩人。剣先がバリアにぶつかる。なかなか突き破ることができない。バリアに苦戦する彩人に実が叫んだ。

「世中くん!負けないで!オタクを貫き通してぇーーーー!!!」

彩人、その言葉が耳に入ったのか、右腕の炎が大きくなっていく。

ディオネ、実につっこみを入れる。

『いや、っていうか今オタクどうでもいいでしょ!』

彩人、ピタリと動きが止まる。

(どうでも・・・いい?・・・オタクが・・・?)

右腕の炎が消えていく。それを見てゼダス、

「諦めたようだなぁ!今から貴様らを葬り去って・・・」

「・・・わけねーだろ・・・」

彩人は何かを呟いている。そして爆発した。

「オタクが、どうでもいいわけねぇだろぉぉぉぉ!!!」

その瞬間、右腕に再び炎が纏う。そしてさっきよりも炎が強くなった。同時に光の剣も大きくなった。彩人は距離をとって、剣を突きだし、もう一度突進した。

「何度やっても無駄だ!潔くあきらめたまえ!!!」

「だあああああああああ」

渾身の力を込めた彩人は、バリアを突き破り、バリアはガラスのように散った。驚愕するゼダス。

「なっ!!馬鹿な!このバリアが破られるとは・・・!」

そして彩人、剣を大きく振りかぶる。

「オタクを馬鹿にするやつは・・・」

ゼダス、とっさに小さなバリアを出す。が、

「許さんっ!!!!!!!」

彩人は、そのバリアごとゼダスを豪快に叩き切った。

「・・・こんな下等生物に・・・覚えていろ・・・」

そう言ってゼダスは黒くなり、塵となった。戦いが終わり、空から降りた彩人。着地と同時に一瞬パッと光り、ヴァーちゃんと分離して、そのまま倒れこんだ。実は彩人にかけよった。

「大丈夫ですか、世中くん!?」

「花咲・・・さん・・・」

と言って、手を握った。

「俺はあなたを・・・守れて良かったです・・・」

そう言って目を開けると、目の前には零がいた。

「彩人くん・・・僕のために戦ってくれたんだね・・・ぽっ」

驚嘆する彩人。手を振り払い勢いよく立ち上がる。

「げっ!!ゼロかよ!お前死んだんじゃねーのかよ!!あ!さっきの言葉はお前に向けてじゃないからな!!」

「わかってるよ彩人くん。恥ずかしいんだよね?」

彩人、無言で殴り掛かるが、零は、知っているとでもいうようにヒラリとかわした。その様子を見て実は微笑む。

「世中くんも、ゼロくんも、無事でなによりですわ。」

と言って、二人の後を追いかけた。また、その三人の様子を後ろで眺めていた三匹は、顔を見合わせ、やれやれ、というようにため息をついたのだった。

END


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[良い点]  三人の微妙に噛み合っていない掛け合いに爆笑しながら読みました。スケールの大きい物語、勢いのある展開も良かったです。面白かった!
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