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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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潮を吹く機械

作者: 平田智剛
掲載日:2026/11/01

K県。


「彼氏をレイプして、殺しました」


県警の窓口で、真帆は泣きながらそう告げた。


真帆は「男の潮吹き」という話を聞いたことがあった。射精後も男性器を刺激し続けると、男性は悶絶する。それでも続けると、女性のように液体を噴き出すことがあるという。


真帆は彼氏に試してみたくなった。


最初は彼も同意していた。だが、射精して数秒後、顔を歪めた。


「やっぱり苦しい。もうやめて」


「男の子でしょ。我慢しなさい」


「お願い、本当に無理だよ」


「吹きなさい」


真帆は彼を押さえつけ、手を止めなかった。彼は身をよじって嫌がり、悲鳴は懇願に、懇願はかすれた息に変わった。そんな彼の苦しむ姿を見ているうちに、真帆の下半身は熱くなっていた。彼の目から光が失われていく。それでも真帆は望んだ反応を待ち続けた。


ついに彼が潮を吹いた。その瞬間、真帆は絶頂に達していた。


「吹けたじゃん! 頑張ったね!」


返事はなかった。


「……直人?」


真帆は彼の顔をのぞき込んだ。


「直人! 直人!」


話を聞き終えた警察官は、ただ一つ確認した。


「射精するまでは同意していたんですよね?」


「はい。でも、やめてって何度も……」


「それなら不同意じゃないでしょう。途中で起きた事故ですよ。お帰りください」


帰り道、真帆は思った。


女の犯罪は、犯罪として数えられない。そりゃ犯罪者は男ばかりになるわけだ。


どうしても償いたかった真帆は弁護士を雇い、検察庁に出頭した。弁護士は戸惑った。罪に問われた人を守ったことは何度もあるが、罪に問われない人を罰してほしいと頼まれたのは初めてだった。


検察官は、警察に帰された後も自ら出頭した真帆の姿勢を高く評価し、寛大な判決を求めた。裁判官も「あなたもつらかったでしょう」と真帆を気遣った。


法廷で直人は「被害者男性」と呼ばれ、その苦痛は真帆の反省の深さを示す材料になった。


この法廷で被告は、壊れた機械を惜しむ善良な女性だった。


認められたのは不同意わいせつ罪だけだった。直人の死との因果関係は立証されず、判決は拘禁刑一年六月、執行猶予三年。裁判官は真帆の将来を考慮したと述べた。


判決後、真帆は弁護士におずおずと尋ねた。


「控訴したら、もっと重い刑にしてもらえるでしょうか」


「検察官が控訴しない限り、被告人側の控訴だけでは刑を重くできません。刑事訴訟法でそう決まっているんです」


「私は自分の性的満足のために、彼をいたぶり殺したんです。何度罪を認めても、刑務所にすら入れてもらえないんですか」


「それに、私のしたことはレイプじゃないんですか。どうして不同意性交等罪にならないんですか」


「法律でいう『性交等』には、性交や肛門性交、口腔性交のほか、女性器の中や肛門に指や物を入れる行為も含まれます。でも、あなたがしたことは当てはまりません」


「じゃあ、肛門や口を犯さなければ、男性器をどんなに虐待してもレイプにならないんですか?」


「不同意わいせつにはなります」


「不同意性交には?」


「なりません」


「女性器の中に指を入れれば性交等になるのに、男性器をどれほど虐待しても、そうは呼ばれないんですね」


真帆には、それが男の尊厳を女に劣後させる宣告のように聞こえた。


「そんな弱い立場の直人を、私は性欲を満たすための道具にしたんだ……」


弁護士は何か言いかけたが、結局、何も言えなかった。


真帆は判決書を見つめた。彼の「やめて」は書かれていた。それでも「レイプ」の文字はなかった。


女のレイプは、レイプとして数えられない。そりゃ性犯罪者は男ばかりになるわけだ。

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