おまけ 新米魔法少女の放課後
わたし...美咲と、友達の千紗は、先日なったばかりの魔法少女だ。
何の因果で私たちが世界の救世主に選ばれてしまったのか、何とどうやって戦えば良いのか、チュートリアルもヘルプマスコットも何も無い。
本当に突然だった。
ただ、一つ確かなことは...
ゴガアァァッ
グルルルルゥ
「うわああぁぁ、こっち来んなし!! あっち行けぇぇっ!!!」
「無理無理無理無理っ!! 死ぬ死ぬ、絶対死ぬ!!」
「魔法とか武器とかないの!? どうやって戦えってのよぉ!」
「説明書くらい何処かに付けとけよぉ〜!」
今この瞬間、死にそうな目に遭っているということだ。
「「うわあぁっ!! もう駄目だああぁぁっっ!!!」」
死を覚悟する私たち。
けれども、その瞬間は訪れなかった。
『トゥ』ゲシッ!!
「えっ?」、「何っ!?」
現れた変な着ぐるみに、私たちは救われたのだ。
• • •
『間にあったようだね、子猫ちゃんたち。
我こそは魔法少女の味方、ずんだマーーン!
そしてこっちがぁ〜、』
『あ、どうも。ずんだマンBLACK RXです。』
『何だよそれはよぉ〜!!
もっとやる気出せよ、【ずんだマッ! ブラッ! アーッエッ!!】ってよぉ〜。』
『...なんでクミ、そんなテンション高いの?』
『こういうのは中途半端が一番恥ずかしいんだよっ!!』
何だろうこの着ぐるみの二人組。化け物を目の前にしているのに、とんでもなくマイペースだ。
そして、そんな雑談の間も、黒い着ぐるみの方が魔法弾? を的確に浴びせ化け物達を寄せ付けない。後ろにも目があるみたいだ。
強い。この着ぐるみも敵だったら、今度こそ確実に終わりだ。
助けてくれたのだから、味方だとは思うけど...。
「ええと、あの、すいません。
本当に味方ってことで、いいんですか?」
千紗が尋ねる。
『そだよ〜。危ないところだったね二人とも。もう安心してね♡』
ずんだマン? がそう答えた。
「どうも、ありがとうございます...?」
『ほらクミ。なんか呆気にとられてるじゃん。』
『んじゃあホノカ。二人にフォローお願い。私、アレ、ボコしてくるわ。
オラァ!!』
どうやらずんだマン? がクミさん。黒い方...RX? がホノカさんらしい。
そして、クミさんが大暴れしている間に、ホノカさんが私たちに話しかけてきた。
『ごめんね二人とも。怖かったよね。』
はい。主にクミさんが。
• • •
彼女たちは引退した元魔法少女なのだそうだ。
「いやでもすっごい強いですよね!?」
思わずツッコむ私。
私たちはまだ戦い方すら知らない......教えられていない。
そういうとホノカさんは
『だよねー。私の時も何の説明も無くてさ。
クミ...あの子に助けて貰ってなかったら、今ここには居ないよ。』
と笑った。
笑えない。まったく笑えないよ。
説明無しは仕様かよ! どんなクソゲーだ。
『えっとね。変身すると出てくるバレッタの裏にね。触ると少しピリッと来るところがあるの。そこを3回叩くと、チュートリアルが始まるから。』
そんなん分かるかぁっ!!
というかどこ? 見つからない。
『分かりにくいよね。クミは自力で見つけたらしいけど、...んしょ、っと。」
ホノカさんはバレッタを見せるため、着ぐるみの頭を脱いだ。
うわっ!! なに? すごい美人なお姉さん!
「ああ。自分でいうのも恥ずかしいけど、魔法少女に選ばれる条件はね。“若くて美人でかわいい“なの。
あなた達もとっても美人だよぉ。
それとね。あっちで戦っているクミも、びっくりするくらい美人だから。」
その事実に既にビックリだ。
魔法や武器など使わず、素手で化け物を圧倒するクミさん。
勝手に熊みたいなのを想像していましたサーセン。
• • •
『クミー。そろそろ良いんじゃない? 帰っておいでー。』
『オッケイ!!
おい、いいかよく聞け。お前たちの行くところ“全て“に私たちは現れる。何、処、に、で、も、だ。』
アッ、ハイ。
ボロボロにされた化け物が素直に返事する。
化け物って喋れるんだ...
『じゃあ行け。...
ホノカー、二人ともー、お待たせー。』
意気揚々と戻ってくるクミさん。
えっ!? 化け物逃がしちゃうの?
『そうそう。
あの化け物はね。消滅させちゃうと新しいのが生まれるの。だから、消さない程度に、かつ仕返しする気無くすくらい、トラウマを植え付けるのがコツだよ。』
美人でおしとやかそうなホノカさん。
...と思ったけどこの人もやべぇわ。
『いやぁやったやった。
ホノカもフォローサンキュー。
じゃあ二人ともこれからも頑張ってね。ピンチの時には来るからね。』
『じゃあ帰ろ。
...お、早ーい。これなら子供帰ってくる前に買い物行ける!』
『ナイスぅ。じゃ、またね!』ヒューン
『またねー。』ヒューン
事もなげに化け物を退治し、そして飛び去っていった二人。そして残された私たち。
私と千紗は、呆然と二人が飛び去った方向をしばらく眺めていた。
• • •
数日前に突然魔法少女にされた私たちは、そして今日初めて化け物に遭遇した。
わけも分からず逃げて逃げて、逃げ回って、それでも逃げ切れなくて。
もう駄目だと思った。
そんな絶望の縁にいた私たちを助けてくれた“元魔法少女“のお姉さんたち。
強かったな。
あそこまで強くなれるのか。
引退した、って言ってた。
“魔法少女“には終わりがあるんだ。
私たちの目の前に、希望の光が強く強く差し込んだ。
教えてもらったバレッタの裏を3回叩く。
脳内に展開される魔法少女のイロハ。変身の仕方、魔法、武器、どれもこれもキラキラしていて、小さい頃の憧れの魔法少女そのままだった。
まったくもって腹立たしい。
でも、これを使って生き延びなければならない。
いや生き延びてやろうじゃないか。
めっちゃ強くなって、化け物をバッタバッタとなぎ倒してやる。
そしていつか、お姉さんたちみたいな、魔法少女の先の人生を生きるのだ。
...あ、でも、クミさん方向には強くなりたくないかも。
そんな事を考えながら、私と千紗は家路についた。
おしまい
「唸れ私のモーニングスターぁ!!」
「魔女っ子ステッキを鈍器にするの、ほんとクミって感じする。」
「丁寧に丁寧に逃げ道を潰して、一か所に集めたら裏がえしてドーム状にした結界を被せて、中に魔法弾を適量入れると、まとめて蒸し焼きにできるよ。」
「華麗なのにえげつない。さすがホノカ! 惚れる!」
美咲「...(やべぇよ)」
千紗「...(怖えぇよ)」




