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俺が歌姫、彼女は貴公子 〜男女逆転して配信始めました〜  作者: 乙希々


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2/9

新バンド結成?

 ──開演前のライブハウス、それも観客が押し寄せてくる入口前で、ぎゃあぎゃあ騒ぎ立てるわけにもいかない。


 という訳で、俺たちは近くの某ファミレスチェーン店に場所を移すことにした。


 そこで同年代の女子とテーブルを向かい合わせるという、極めて貴重な経験に緊張しつつ、俺は冷たいコーラを一口飲んでから口を開く。


「それで、俺らハグレモノ同士でバンドを組みたいってこと?」

「はい! ……あ、でも『ミストラル(俺が所属していたバンド名)』の水瀬樹みなせいつきちゃんが、まさかの男の子だったなんて、意外でした」

「意外も何も、どこからどう見ても男だろっ、あと、ちゃん付け禁止な」


 そう言っても、実際の俺は背も低いし(162センチ)、体つきも細いし(48キロ)、おまけに声もハスキーで、女子にみえなくもな……じゃなくて、今はドリンクバー混ぜるな危険! を幸せそうにちゅうちゅうしているこの女についてだ。


「それで、話を戻すけど、如月きさらぎさんって」

「あ、久遠くおんって呼んでください、私も樹ちゃんと呼びますから」

「またちゃん付け……まいいや、じゃあ久遠さん」

「さん、はいりません」

「ぁ、はい、じゃあ、く、久遠で」


 人生初、女子の下の名前、呼び捨て……は、ちょっと恥ずい。


 そんな折、俺が頼んだパンケーキ、如月……じゃなかった、久遠の海鮮ナポリタン、そしてハンバーグセットが運ばれてきたので、話は一時中断……って、こいつ、がっつり食うよな。


「で、さっきの続きだけど、仮にあんたと」

「久遠です」

「あぁ、ええっと、それで仮に、くく、久遠と二人でバンドを組んだとしてさ、ボーカルとギターは俺たちとして、ベースとドラム、あとキーボードもいるよな……で、当てはあるのか?」


 こいつと組むかどうかは、ひとまず保留として、とにかくビジョンだけは確認しておきたい。特にメンバーの関係性は重要なポイントといえる。ついさっきバンドを追放されたばかりだし……つらい。


「えーと、そうですね──」


 久遠は、追加で注文した苺ショートをフォークで突っつきながら。


「とりあえず今回は、私たち二人で……、それ以外は……えーと、随時募集? って、感じです」


(おいおい、完全に見切り発車かよ……ってことは、キーボードパートとリズムベースとドラムは、シーケンサ(自動演奏)で打ち込みか……打ち込み? またかよ、俺のギターは打ち込みで十分、ああそうかよ、そうですよ)


「──えーっと……なんか私、樹ちゃんの黒歴史、突っついちゃいましたか?」

「い、いや、大丈夫……」


 テーブルに突っ伏したまま、俺はかろうじて声を絞り出す。ああ、なんか色々どうでもよくなってきた。


「ではでは、話を続けちゃいますね。まずは、一言。私、如月久遠きさらぎくおんは、今日をもってライブハウスでの活動を終了します!」

「は?」


 ガバっと顔を上げた。


 何言ってるのコイツ、たった今まで俺と「バンド組みましょ!」とか、某バンドアニメみたいなこと言ってたじゃん! ウソなの? 俺、もしかしてからかわれてる?


「……言ってる意味が、わからない、けど」

「そのままの意味ですよ。えーと、簡単に言っちゃうとですね、アナログだったバンドの拠点を、デジタルにアップデートする、てな感じですね。樹ちゃん、理解できましたか?」

「アップデート、でーと……じゃなくてさ、俺らみたいなアマチュアバンド……いや、まだバンド組んでねぇけど、つうか、ライブハウス以外どこで活動するんだよ」


 ライブハウスはバンドグループにとっての聖域だ。唯一無二の場所といえる。


 なのに、そんなバンドの登竜門みたいな場所、活動の拠点から外す? 信じられん。こいつバカなの?


「ああ、わかったわかった。ひとりで勝手にどこでも好きなところでやってくれ。じゃあそういうことで」

「あー、ちょ、ちょっと樹ちゃんっ、は、話を最後まで聞いてください〜!」

「は、離せ、腕引っ張んな、っイててて──」


 と、一度はギターケースを担ぎ、席を離れかけた俺だったが、このまま大騒ぎして、店から追い出されてもなんだし、いちおう最後まで話を聞くことにした。


 断じて俺は、久遠の長身(175センチ超え)に屈したわけではない、ということを補足しておく。くそっ、せめてあと5センチ、身長があれば。

 

「ハァハァ……活動の場は、ずばりネットです」

「ネット? つ、つまり、『SNS』を拠点にバンド活動するってこと?」

「ですです!」


 たしかに、動画配信サイトに演奏を上げれば、それを世界中の人が見てくれるかもしれない。それならライブハウスみたいにチケットを必死に売らなくてもいいし、なんなら納得するまでテイクを重ねてそれだけを配信すればいい。あと……動画の収益も、魅力だし。


「…………案外いいかも」

「でしょでしょ!」


 とはいえ、うまくいくとは限らんけど。今やネットで曲を流すバンドなんて、プロも含めごまんといるしな。


 それでも──。


「……あの、それで樹ちゃんは私とバンドを組んでくれますか?」

「ああ、お互いバンドをクビになったことだし、これといって他にやることもないし、お、俺で良ければ」

「あ、ありがとうございますっ」


(まあ、しばらくは、ボーカル、如月久遠の横で、俺がギターを刻むのも悪く)



「ではでは、《《ボーカル》》水瀬樹、《《ギター》》如月久遠で、新《《ガルーズ》》バンドユニット結成ですね!」



 ない…………へっ? 


「えーと、ほんとはですね、樹ちゃんが女の子じゃなかったのが、ちょっと驚きでしたけど」


 そして久遠は、とびっきりの笑顔で。


「ふわふわメイクして、かわいいフリルの衣装を着せたら……、うん、ぜんぜん問題なし、ですねっ!」


「ぜんぜん問題あるわぁあ!」


 この期に及んで、まだガルーズバンドの線を諦めていない如月久遠、がいた──

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