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俺が歌姫、彼女は貴公子 〜男女逆転して配信始めました〜  作者: 乙希々


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1/9

始まりの曲。

突然の新作です。


他の作品と並行して連載していきますので、ぜひ応援してください!

ITUKI「──はーい、みんな! 『Mirageミラージュ』のチャンネルへようこそ! ボーカルのITUKIいつきでーす。よろしくねっ!」


KUON「ど、どうも。ぎ、ギターのKUONくおんだ。この動画を視聴してくれてるみんな……感謝してる(ボソッ)」


ITUKI「ちょっとKUON、声ちっちゃい〜。もっとちゃんとみんなに挨拶しなきゃ!」


KUON「ご、ごめ……いや、悪かったな。でもみんな愛してるぜ(キラッ♡)」


ITUKI「もう、バカなの? じゃあ、早速いっちゃおっか! それでは聴いてください! わたしたち『Mirage』の始まりの曲──」



『見せかけのかわいいだっていいじゃん!』


 作詞 ITUKI

 作曲 KUON

 編曲 Mirage



 ──見せかけのかわいい もう嫌だ


 ルージュも マスカラも 本当のわたしじゃない


 そんなこと わかってる


 けどね


 それでも自分を隠すの


 見せかけだっていい


 そう信じてる


 小さな瞳も


 薄い唇も


 輝くことを 願ってる


 だからわたし 今日も嘘つき


 だって みんなで輝きたいじゃん──


 ──────────


 ─────


 ──





 ◇


「──おい水瀬、お前バンドをクビな」


 舞台袖から響く轟音。機材の匂いが充満するライブハウスの楽屋。


 開演まであと30分と迫ったそのとき、リーダー兼ボーカルの新庄海斗しんじょうかいとが告げた、あっけないたった一言が、俺、水瀬樹みなせいつきの思考を停止させる。


「あはは……なんだよ急に、いきなり冗談キツいって……」


 メンバーの視線を集めるなか、俺は新庄に言い寄る。


「てか俺、なんか悪い事したか? ライブ直前で言われても、困るっていうか、気になって演奏をミスるだろ」

「あーそれ自分で言う? ちなみに今回のギター、もう打ち込みで済ましてるから。機械はお前みたいにミスらないしな」

「……そ、それはそうだけど、でもさ」

「つーわけで、これ決定事項だから、悪いけど部外者は楽屋から出てってくんないかな〜」


 と言い放つ新庄は、もう俺を見もしない。


 ベースの永井翔太ながいしょうたも、ドラムの佐木雄二さきゆうじも。


 そして、バンドの紅一点、キーボード担当の天野紗理あまのさりまでもが、俺を最初からいなかったかのように無視する。


 つまりこれは、新庄ひとりの独断なんかではなかった。バンドメンバー全員で話し合った結果だ。


 戦力外通告。


「……そうか、わかった──」


 だったら、今の自分が取るべき道は一つしかない。


「俺、出ていくわ」



 ◇


 ライブハウスを出れば、外はもう真っ暗だった。師走の夜は日が暮れるのが早い。


「さてと……これからどうすっかな──」


 今夜はてっきり、ライブの打ち上げで遅くなると思っていた……が、予定がすっかり空っぽになってしまった。


 普通なら、このまま大人しく帰るべきなんだろうけど、今はとことんメンタルがやられているし、まっすぐ帰るのも……正直しんどい。


 ここはひとつ、どこかの店でパーッと気分転換したいところだが、俺はまだ大学生……というか、未成年だし、そもそも金ないし。


 てな感じで、ライブハウスの入口で、ボーっと突っ立っていたら、観客らしき女子グループにヒソヒソと耳打ちされてた。


(……とりあえず、ここを離れよう。もう関係ねぇし)


 と、肩に掲げていたギターケースを担ぎ直した、


 そのとき。


「──ぁ、あの、すみません……」


 ふいに背後からの声で呼び止められる。


 振り返ると、ひとりの女子が俺を見ていた。


 ……いや、見下ろしていた。


(デカっ!?)


 というのも、真っ黒な服……というかゴシックロリータな装い(ステージ衣装?)の背が高い(たぶん175センチ超えてる)黒髪ロングの女子(同い年ぐらい?)が、俺を頭上から見下ろしていたりする。ていうか、身長の高低差がヤバい。ちなみに俺の身長は162cm。


「え、ええっと……なにか、用ですか?」


 びくりと体を引いて、おずおずと問いかけてみる。


 すると、なぜか、すらりとした長身が急にあわてふためき始めて。


「……ぁ、あの、ごめんなさい。わ、私は『アンリマユ』でボーカルを勤めていた如月久遠きさらぎくおんといいます」


 アンリマユ?


 ああ、そういえば、最近できた女の子だけのバンドがそんな名前だったっけ……たしか今夜のライブのセットリストにあったような?


「うん、知ってる」

「え? 嬉しいですっ」


(あれ、この子、笑うと凄くかわいいかも?)


 そのデカい身長はさておき、目元が涼し気なクール系美少女。


 でもボーカルって感じじゃないな。後ろで渋くベースを刻むとか、ドラムをバシバシ叩くほうがしっくりくる。ゴスロリ服だって全然似合ってないし。


「で、そのボーカル様が俺になんの用? つうか、こんなところで油売ってて大丈夫か? そろそろライブが始まる時間だろ」

「へ? オレ……い、いえ、ごめんなさい。実は私、さっき、ボーカルをその、なんていうかクビになってしまいまして……」


 クビ……? 


「……ま、まさか、ライブ直前で、とか?」

「あはは……そうなんですよ〜、ひどすぎます。あんたクビね、もう帰っていいから、ってリハ直前で言われちゃいました」


 マジか……。って、今の俺と全く同じじゃん。


「それは同情するよ、まったくひどいよな、せめてライブの前日に言ってくれよ、こっちだって考える時間とか、心の準備が必要っていうか……」

「ですよね……」

「だよな……」


「あはは……」「えへへ……」


 はあ……なんかハブられた同士、しんみりしてしまった。このどんよりとした空気、もう無理。


「じゃ、じゃあこれから頑張って! お、俺も如月さんのことを陰ながら応援すっからさ」


 だから俺は、早々にここから立ち去ろうとした。


 ……が。


「あ、ちょ、ちょちょちょっとまってくださいっ!」


 ガシッと手首を掴まれてしまう。つうか、いてぇよ、握力がハンパなくない?


「てか、なに!? 誰かに慰めてもらいたいなら他をあたってくれ、俺は傷のなめ合いなんてまっぴらなの!」

「……傷のなめ合い、ですか?」

「そうだ、俺もさっきバンドを追い出されたんだよっ、悪いか!」

「そそ、そうなんですか」

「そう!」


 と勢い任せにまくしたててから、ちょっと言い過ぎたかも? と我に返った。俺は恐る恐る顔を上げる。こうしないと彼女の顔がよく見えない。


 すると。


「えへへ……やっぱり、樹ちゃんもバンドを追い出された口なんですね」


 なんか、にへらにへら笑っている。つうか、なんで俺の名前を知ってるの? それに樹ちゃんって。たしかに俺は水瀬《《樹》》。もろ下の名前呼びじゃん。ほぼ初対面なんだけど。


「え、ええっと、うんまあ、その」

「もしやと思って声を掛けたんですけど、正解でした」

「……ん、正解? ああ、そうだよな、俺、そんなに負のオーラが出て──」



「水瀬樹ちゃん、私と二人でバンドを組みませんか?」



「たのか──は?」 


 自虐の途中、気の抜けた声が出た。


 つうかなにそれ、流行のバンドアニメみたいなお約束、まさか自分が体験するとは。


「私たち《《女の子》》二人で、新バンド結成です!」


「いや、お断り……へっ? オンナの子?」


 てか、俺、男なんですけど!?

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