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貴方の誕生日は特別です 前編

[貴方の誕生日は特別です] 前編

いつからだろう。誕生日に興味がなくなったのは?


私は、元々そんなに誕生日が意味わからなかった。昔、友達の誕生日会に呼ばれた事がある。煌びやかな雰囲気が漂う一部屋にはカラフルな風船においしそうなケーキ。そんな中、happy birthdayという言葉を目立っていた。みんな楽しそうに笑っている。

自分が主役じゃないのに。楽しそうだ。

みんながその今回の主役を祝う。その為だけに、お金を払いものを買う。

誕生日の子も喜んでいる。何がそんなに嬉しいのだろう。楽しいのだろう?たかが他人が生まれて何十年たった事だけだ。親でもないし、親戚でもない。誕生日になったらからってすぐに成長するもんでも無い。だが、女の子はこういうのが大好きだ。何回も呼ばれるたびに只々手を叩き、歌を歌う。

こんなのに意味があるのかな。


私にとっては誕生日なんてプレゼントがもらえて、ケーキが食べられる日だった。特に特別な日と言う訳でもないだから、誰に言ったことのない誕生日。もう本当に温まり過ぎて、存在すら忘れてしまった。

いつか言おうと思って、けどいきなり言われてもおかしいだろうし……。だがら、人にも聞けなかった。昔からみやちゃんの誕生日を聞きたかったけど、聞けなかった。


耳に入る同じテンポでなる機械音。そんな音が私を夢の世界から追放した。


彼女の綺麗な瞳が朝の光を吸い込んだ。そんな景色に違和感を覚える。何だろう。

晴れているが、何だか冷えている色合いの部屋。日めくりタイプのカレンダーの日にちが自分の誕生日を示している。

派手なマークが付いている訳でもなく、只々日にちがゴシック体で堂々と書かれている。

二階建ての実家。古くなった焦茶の階段を踏み鳴らしながら下に降りる。


誕生日だろうが、無かろうがいつも通りの朝。暖かいはずなのに冷たく感じるご飯を口に運び、水を飲む。水の音が響くリビングには一人のピンクの髪を持つ人影だけが色を持っていた。

父と母は今、結婚記念日で出掛けている。


自分の部屋に戻り、服を着替える。

最近は男装をするのが好きだ。男装をするのが好きなのか、自分を隠すのが好きなのか?

ばっちりメイクをして、いつもよりかっこよくなった瞳には色が入っていない。鏡の前で呆然と自分の顔を見ているそんな時だった。機械音が部屋に響く。インターホンの音だ。

「何だよ。めんどくさい」いつもより低い彼女の声は苛立っていた。洗面台の白く光る電気を消し、インターホンをチェックする。

その画面に映っていた人物を見て彼女は目を大きく開いた。画面先でも伝わる神々しさ。そこ立っていたのは、都だった。少し照れくさそうに笑っている彼は本当に愛らしい顔、服を着ている。

何の服だろう?いつもよりカジュアルな服装という事はわかるが。


待って、何でいるの? 可愛い。やばい可愛い。やばい変じゃないよね? 

てか、何でいるの? 可愛い!

いつもの事ながらキャパオーバーの彼女の頭。


玄関の片開きのドア。手汗で湿っている手をドアノブにかけてドアを開けた。目の前に立っている彼を見て、

「いらっしゃい」と指を家の中に指すと

「お邪魔します!」とパァと顔を明るくして彼が入ってきた。彼の赤いスニーカーは、ほぼ色の無い私の靴に囲まれている。廊下を二人の足音が響き、使い古された緑のソファに腰をかける。暫くの沈黙、聞こえるのは時計の動く音だけだ。その静かさに我慢できなくなってきた時、

「どうしたの?今日何かあったけ?何もなくても別に来ても良いけど、」と声が出た。

「えっ?誕生日じゃないの?」と驚く都。

彼女の目が大きく開いた。そして、視界が鮮明になり目に色が入った。

今の今まで冷たい色だった風景が明るく色付いていく。胸が締め付けられるような感覚に、大きく鼓動を打つ心臓。

「知ってたの?」

「えっ?うん。幼馴染で彼女の誕生日くらいは知ってるよ」と自信満々と言う彼は本当に可愛かった。

「かわいい…」

「ありがとう?」と首を傾げながら言う彼は天使のような可愛さだ。……、声に出ていたか。

「でも、何でこんな早くに?言ってくれたら準備したのに。」

「いや、だってさ」

「うん?」

「大切な人の()()()()の一番はやっぱり欲しいじゃん!」

「えっ?」

私は思わずフリーズする。特別の日と言う一際頭に残るそのフレーズに。

その時彼が、ソファーの下に置いてた紙袋を手に取った。そして、プレゼントであろうその紙袋を差し出しながら、

「ハッピーバースデー」と笑う彼を目の前にして、今まで気づけなかった大切な事に気付かされた気がした。


みんなこんな気持ちだったのかな?

嬉しくて、本当に嬉しいとしか出てこないなこんな気持ち。みやちゃんの誕生日には何をあげようかな?

彼女の腕の中にある紙袋はクシャリと音を立てた。その中身は綺麗な桜の咲いたスノードームだった。


「ありがとう」と私が言うと、彼はバッとソファーから立ち上がり、

「よしっ、今から出かけるよ!」と意気込んだ。

「え?」

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