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最高の告白は人によって形が異なる

[最高の告白は人によって形が異なる]

夕暮れの帰り道。一番悲しい時間だと僕は思う。楽しかった物が終わると告げるかのように赤い空は、きっと沢山の人の涙や笑顔を見ていた事だろう。薫が飲み物を買いに行っている途中、公園で空を見上げてながらそんな事を考える。後ろからザクザクと少し茶色がかった芝生を踏みつける音がした。


「ちょっとさ、お姉さんお一人?」

と話しかけてきたのは明らかにガラの悪い男二人組だ。

「えっ、ぼ…私ですか?」と咄嗟に一人称が変わってしまう。

「そそ、そこの可愛いお姉さん」

ありがとう。でもな、

「今からお茶しない?」残念ながら僕は男だ! だが、そんな事を言っている場合じゃない。なんだこの昔ながらのナンパは?

こんなのフィクションの中だけじゃ無いのか? どうしよう。相手はガタイの良い、ついでにガラの悪い男二人だ。対してこちらは自分で言うのも癪だが、チビでスカートを履いている変な人だ。

変人ではなく変な人だ。ここ重要。

「すいません。連れがいるので」と引いてみたが、

「こんな可愛い子待たせる方が悪いよ」と一周されてしまう。なんだそのヘンテコ理論は?もしかしてお前らも変な人か?

てかやばっ反論しないと……。

「あのっ、本当にやめてくださいっ」と全力で嫌がってみるが、

「少しお茶するだけだから」と手首を掴まれる。血の気がひけ、流石にヤバいと感じた次の瞬間、

「おい、クソデカ野郎。何してんだ?お前」と聞き覚えのある声が鋭い刃のように耳に入る。今一番聞きたかった声だ。いつもより何トーンも低い声だが。

「あ?なんだお前。俺達はお前なんかにキョーミないの。あるのはそっちのかわい子ちゃん。それにお前何様なの?」

わぉ、横暴だな。 

「俺はこいつの彼氏だよ?お前こそ何様?どこの門の野郎だ?」とガンを飛ばす薫はいつもより目の切れ味がよく、怖かった。後ろに梟が見えた。正直ビビった。あの目線は人を殺せてしまうだろう。そして、男達は諦めて去っていった。どちらかと言うと、恐れてどっかに行ったのが正解だと思う。最後まで態度の悪いやつだ。それにしても門ってなんだ?そんな事を頭の中で巡らせる。そんな時視線を感じ上を見ると、薫が申し訳なさそうにこちらを見ていた。僕と目が合うと、恥ずかしそうに目を逸らし何も言わず僕の手首を引っ張りながら芝生を踏みつけた。

だが、先程の男たちとは違い優しい手だった。


やばい、今みやちゃんの彼氏って言っちゃった。

どうしよう! てか、彼女だよね。いや、どっちだろう?可愛い、上目遣い最高だな。やばい可愛い。今、手掴んでるよね。やばっ尊死しそう。


「みやちゃん、あのさ」と誰もいなくなった公園でベンチ。横ら並びで座る彼らは目を合わせない。沈んで行く夕陽がしっかりと見えるそのベンチに腰をかけ、彼らは先ほどよりも優しい夕日に照らされ頬を赤く染めていた。それは本当に夕日のせいだろうか?

「どうしたの?」

「もし、よかったらさ」言葉が所々で詰まっている。喉から出ているであろう声はいつもの余裕さは無く、一生懸命だった。

風が吹き、髪が靡く。葉の揺れる独特な音が耳に微かに届き、その少しの沈黙は短いようで長い時間だった。今回の沈黙は何にも埋めてはくれなかった。

薫が頑張って付けてきただろう少し高そうな時計は、太陽の朱色を反射している。そんな時計の針がもうすぐ五時を指そうとしていた時だった。都が薫の顔を掴み目を合わせた。そしてじっと薫を見て口を開く。

「ねぇ、言いたいこと一緒だと思うからさ

一緒に言おう」と真面目な顔で言う彼はすごく絵面的には面白い。そして、一瞬キョトンとした表情を作った彼女だったが、

「いいよ」と笑った彼女の顔は先程まで怒っていたのを感じさせない程優しい顔で返事をくれた。そして目を合わせたまま、二人で息を吸う。

「せーのっ」

『僕(私)と付き合ってください』

二人の声は互いの耳にしっかり届いた。

目を二人でパチクリさせ、数秒経った後二人で笑った。そんな幸せの一ページが彼らのアルバムに増えただろう。

『よろしくお願いしますっ』


夕日の下桜の木が満開を迎えた。

そんな二人の後ろ姿は幸せに満ちた物だったとか。

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