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君は世界一美しい

[君は世界一美しい]


「君の好きな物はなんですか?」

こんなありきたりの質問が僕は大嫌いだ。

僕は昔から可愛いものが大好きだった。フリフリの洋服とか兎に角可愛いものが好きだ。

なんでこうなったのか……。それは従兄弟が面白がって昔から可愛い服装をさせていたのが始まりだ。

「や〜可愛いよ。都」

「本当ね。可愛いわ」と従兄弟と母さんがいい、自分も気にってしまった。

だが、世間は世知辛い。

「お前、可愛いの好きなの?変なの」

「男なのに?」と周りから人がいなくなっていく。世間はどんだけ個性を謳っても受け入れられてはくれない。外の明かりとは対照的に僕の心は黒で塗り潰されていた。

どうしてもどうしても孤独で、寂しかった。

その日から僕は人には隠すようになった、

僕は孤独に耐えられるほどそんなに強い人間ではなかったからだ。

そして、数年後転校した先の小学校では一切知られていない状態を作り上げた。

その状態は自分が望んだはずなのに、悲しく心に穴が空いたような感覚が続いた。


十数年後

僕は高校生になり、転校前の土地へと戻ってきた。正直前、揶揄ってきていた奴らに会うかもしれないという不安が大きかった。だが僕は帰ってきた。大きく深呼吸をし、少し暗い外へと足を踏み出した。大きな舞台の始まりは何年経っても心が躍るものだろう。僕はここに居ると主張するかの様に地面を固く踏みつけた。


心の落ち着きを取り戻しながら道を歩く。桜が綺麗なその道は彼を歓迎するように桜を散らせ宙を舞わせた。

そんな時だった。太陽が先ほどよりも明るく輝き、僕を照らす。紺色の髪が綺麗に光る。

「みやちゃん?」その声を聞き、僕は振り返る。そして彼の紺色の瞳の額が大きく開かれ、瞳をあらわにした。心臓がドクドク鼓動を打つのが聞こえる。

その声の主は僕の幼馴染の星北 薫だった。肩までのピンク髪を一つに結び、女子にしては吊り上がり、キリッと細い目つきはあの頃と変わらない。身長は……、僕よりも高くないか? 緊張が体中に走り回る。「薫……。」僕の力の無い声は彼女の耳に届き、こちらへ走ってくる。

「「久しぶり」」

桜が咲き、青空がより映える道で、新しい春が始まった。


私の友達は、男子にしては可愛い顔をしている。昔から可愛いものが好きで、そこに囲まれている姿はまるで天使だ。

そんな彼は、桜の妖精かと見間違えるほど

可愛くそして、愛らしく成長していた。

そして、さっきの彼は大天使の降臨の様に輝いていた。いや天使と比べるなんて可哀想なぐらい美しかった。

太陽よ。いい仕事をするではないか。


二人は桜が咲き誇った、天国と見間違えるほどの綺麗な道を歩きながら話をしている。

「ねね、都はさ今も女装してるの?」

「うん、最近は自分で買ったりもできるから」そんな会話をしながら学校に向かう彼らの姿は青いページの一ページ目! と言う感じだ。

少しの沈黙は桜の綺麗さで埋め尽くされ、薫が重々しく口を開いた。

「あのさ、最近ね。私男装にハマってるの」

「えっ?」都は驚いた顔をしており、薫は照れ笑いをしている。

「やっぱさ……、変かな?」

「いや、めっちゃ似合うと思うよ!」

「っ、ありがとう。」


始業式が終わり、下校時刻になった。鐘の音と共に出てくる生徒の中には都もいる。


僕は校門の柱に寄りかかり薫を待っている。

「みやちゃんっ!」元気な声と共に肩に手を置かれた彼の肩はビクッと震えた。

「薫、驚くからいきなりはやめてね」

「すんませーん」

「あと、呼び方変えて。」

「え〜、やだな。」二人は学校を後にし、歩き出した。二人の雰囲気はまるで、付き合いたての甘い蜜の頃のようなものだったとか。


「今日遊べる?」とニィと笑う薫の顔は否定権は無いぞ?っと訴えてくる。

「いいよ!遊ぼ」と返事をすると彼女は悪戯っ子の顔を浮かべ、

「勿論女装してきてね」と言ってきた。

「えっ?」予想外の発言に一瞬時が止まったのかと思った。晴天の空の下止まった彼に追い討ちをかけるかのように、

「勿論私も男装していくから」とニコッと笑った彼女の顔を忘れることは無いだろう。その時の顔は何よりも美しく、逆光もあってかどこか切なさを感じさせる笑顔だった。


「変じゃ無いよね?」クルッと一周回り服を見る。服がふわりと揺れる。

足全体が隠れる長さのロングスカート。落ち着いている色のクラシックロリータはフリル少なめだ。化粧をし、ウィッグを被る。勿論みんな大好きロングだ。

「いってくるね」と言い、靴を履く。

「今日も可愛いわよ。行ってらしゃい都」

母は自分の事を娘ができたみたいと喜んでいた。そんな母に感謝しながらドアノブに手をかける。

ドアを開け目に飛び込んできた景色はいつもより輝いているように思えた。


少し歩いた後、電車に乗り待ち合わせの場所へと向かう。僕たちは東京の近くに住んでいる。友達に見られたら困るからと言う理由で東京まで出ることになったのだ。だがなぜ、駅から一緒に行かないかというと、

薫が「みやちゃんなら、わかる!」とごねたからである。これは一種のゲームである。僕を見つけられるかの、本当にしょうもないゲームだ。


電車を降り、ホームを見渡していると、

「みやちゃん〜!」名前を呼ばれて振り向いた。手を振りながら歩いてくるのは、とてつもないイケメンだった。周りが発光している

「薫だよな?」

「うん?そうだよー。みやちゃん」そこにいたのはハーフアップをした高身長イケメンだ。スラリとした体型に、小さい顔。そりゃ女の時点でかなりカッコよかったし、可愛かったけど。中世的な雰囲気は悪魔のそうな美しさだ。

「チョーゼツかわいいじゃん」

なんだろう。

この女慣れしているチャラい雰囲気は?

「あ……,ありがとう」

「よし、行こうか!」


少し前 駅のホームにて、

あれってみやちゃんだよな?可愛くね。やばい可愛い!(語彙力消失)

やばいキョロキョロしてる! 可愛い。

気合入れてメイクもしてきたし、コーデもそれなりにいいと思うし。てか、あれクラロリだよね?可愛すぎでしょ。連れ去られちゃう可愛さだよ、あれ。

よしっ平常心、平常心

「みやちゃん〜!」


そこからは二人で化粧品を見に行ったり、服を見たりなかなかに充実した午後を過ごした。買ったものが小さめのバックに入るわけもなく、薫が持っている。何故そうなったかというと……。

それは数分前のことだ。

店を出て「持つよ」と手を伸ばしてきた薫に対して、「女の子に持たせんなんて」と最初は遠慮していた都だが、持った瞬間肩が悲鳴を上げたので持ってもらうことになった。側から見たら中身はともかく女の子が大きな荷物を持つ絵面だ。薫が持った方が安定する。というのが事の転末だ。

暫く歩いていると都が、気になっていた抹茶フェアをやっているカフェの前を通った。

「みやちゃん入りたいの?」

「えっ、いいの?」

「いいよ(笑)」と二人は店内に入る。少しレトロな店内には、音楽が流れており良い雰囲気だ。

「カップル様ですか?でしたらこちらの特典が付きますが……。」茶髪の髪を一つに結った女の人が訪ねてきた。

「ちっ、違います」咄嗟に否定した都を薫は見つめていた。その時の都の顔は見えなかったが、少し赤くなっているのを鋭い瞳は見逃さなかった。


そうか、側から見たらカップルに見えるのか。少し恥ずかしいな。あんまり意識していなかったが、よく考えたらイケメンを連れ回す変な女なのでは?

やばいじゃないか。周りの嫉妬が目に浮かぶ。

ごめんなさい……。


席につき、メニューを見て注文する。中には宝箱の様にキラキラとしたスイーツが並んでいた。目を輝かせた彼は本当に可愛かった。と後に薫が語った


二人用の席は対面する形で話していても、つい目を逸らしてしまう。

「ちゃん、みやちゃん!平気?」

「っえ?何が?」うわっ眩しっ。顔近い。イケメンの高画質は死人出るよ。女子?そんなの関係ない。

「店入ってから全然顔みて喋ってくれないじゃん。どこか悪いの?」

「えっ」あー確かに顔見ると緊張すんだよな。イケメンすぎて。それに……。

「みやちゃん私の事、嫌いになっちゃた?」 

「いや、そうじゃなくて」子犬のような目で見ないでほしい。罪悪感でいっぱいになりそうな心は苦しかった。

「い、イ」そんな言葉を遮り、

「抹茶パフェでございます。」と、机の上に置かれたパフェは美味しそうである。一気に表情が明るくなり、目が光が宿る。

「ありがとうございます」と返事をする彼はおもちゃを与えられた子供のような純粋に喜んでいた。


前にいる不服そうな彼女を尻目に僕はパフェを連写する。

「動かないものの連写っているか?」嬉しそうな人を前に文句を垂れ流すのはやめなさい。せっかくのイケメンが台無しですよ。

心の中でそう思いながら僕はスマホを置いた

「いただきます」手を軽く合わせ、手にスプーンを持つ。ふわふわのクリームの中にスプーンを沈め一杯にクリームをすくう。

そして口に入れた瞬間美味しさが広がるその感覚はスイーツならではだろう。そんな彼を二つの瞳がジッと見つめていた。凛とした目だったが彼女のキャパオーバーはすぐそこだった。


どうしよう。目の前の子ちょー可愛いよ。

いやみやちゃんなんだけど。

なにそれ口一杯に入れて、幸せそうな顔して。どこぞの女子よりは可愛い。てかみんな敵じゃないくらいは可愛い。こっち見てくんないかなぁ。


結局最後まで彼が彼女の顔を見ることは無かった。


「ありがとうございましたー。」カラン、とドアについているベルが鳴り、店を出る。

「あー楽しかったな」

「うん。楽しかったね!みやちゃん」


二人は夕陽の向こうへと歩き出した。

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