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第03話 『人間』に育てていただきたいのです

 僕の心を読んだのか、僕の顔に出ていたのか分からないけど、立て続けにチェックを入れられてしまった。そんなに僕はスケベそうに見えるんだろうか?

「それだけですか? なにかレポートを書けとか、そういう宿題みたいなものは?」

「別段何もございません。江川崎様と一緒に暮らした記憶は、すべてこの子のメモリーに記録されますから、江川崎様の主観によるレポートなど必要ございません。ただ、この子を、本当の妹として、大事に扱っていただければいいのです」

 「など」って強調するのが、なんかちょっとイラっとした。

「そんなことで役に立つんですか?」

「パピーウォーカーという制度をご存知ですか? 盲導犬候補の子犬を、一年間ほど一般家庭で育ててもらうというものです」

「…まぁ、聞いたことくらいなら」

「優しいパピーウォーカー育てられた子犬たちは、人間のことが大好きになります。それと同じように、この子を、人間好きの、『人間』に育てていただきたいのです」

「なるほど」

 僕は極力冷静ぶって、相槌を打った。人の役に立てるうえ、こんな可愛い女の子と、うれしはずかし同棲ライフが楽しめる。すごいじゃないか、極上じゃないか。

「……しかしながら、今回のモニターを、『女の子と一緒に暮らせてラッキー』などと、安易には考えないでくださいね」

 またしても住良木は、僕の心を読んだように先回りした。

「私がタイプ004をモニターの方々に託す理由は、さっきも申し上げたとおり、この子たちを人間にしてほしいからですが、これには危険も伴うことなのです。この004は、形の上では003の発展型ですが、中身はまったく別物です。特に、頭脳に関しては」

 住良木は、ちらりと少女に視線を移した。

「具体的に申しますと、003までの感情回路は、嬉しいときは喜び、腹が立てば怒る。そういうものでした」

「それは、普通なのでは?」

「江川崎様は、悲しくても笑ったり、嬉しくても怒ったりしたことはございませんか? また、怒りや悲しみを堪えたり、他者の喜びを自らの喜びとして感じ、自分は悲しくとも、笑って見せたりしたことが。人間の感情は、喜怒哀楽の札を気分に合わせて上げ下げするような簡単なものではないのですよ。例えるなら、板の上にボールを乗せて、転がり落ちないようにバランスを取っているようなもので、すべての感情は地続きなんです」

 分かるような、分からないような。

「……ですが、これをそのままの形で実装いたしますと、なにをしでかすか分からない危険な機械が世に出ることになります。なにしろ、感情に境目がないのですから。かと言って、他者に危害を及ぼさぬように強制をかけるというのであれば、方法が違うだけで、003までとまったく同じ、ただのロボットになってしまいます。そこで、微妙なさじ加減を実生活で学ばせていただくために、モニターが必要だったのです。『人間に育てる』という意味がお分かりいただけましたか?」

「ええ、だいたいは」

 と、答えてはみたものの、僕はいささかがっかりしていた。

今までの話を総合すると、これは金持ちオッサンならびに爺さんの若返り健康グッズであるらしい。それはいい。でも、その金持ち爺さんたちに危険が及ばぬよう、僕たちのようなモニターを実験台にしようという虫のいい話なんだ。

 要するに、僕には当面、もしかしたら一生関係のない世界の出来事で、実際のところ、モニターやっても、二度と手の届かない大金持ちライフの一端を垣間見せられた僕は、心に羨望と憧憬を埋め込まれて、人生を斜めに見るようになったりするわけだ。

 で、結局残るのは、ちょっとした粗品と壊れた価値観。プラス、この子がなにかしでかした際のリスクと責任。こいつは、まったく割に合わない話じゃないか。

 そう考えてみると、急につまらなく思えてきた。

 突然鎮火するモチベーション。

「もちろん、全ての個体を同じようにモニターに預けていたら、埒があきません。ですから、何十人かいるモニターの中で、最もいい子に育て上げた方のデータを、このシリーズの市販タイプにフィードバックさせる予定です」

「そうですか」

 なかば興味を失っていた僕は、なんとなく相槌を打ちつつ、「プロトタイプってことは、この子がガンガルで、市販タイプはズムみたいなもんか?」などとろくでもないことを考えていたが、次の住良木の言葉で目が覚めた。 

「そして、優秀なモニターの方には、謝礼としてSIS・SYS004を、フルセットでプレゼントいたします」

「なんと!」

 再び燃え立つモチベーション。

「この子をいただける、ということでございますのんか?!」

「はい。この子と、コンテナをセットでございます」

 ありがたいことに、住良木は僕がテンパって変な言葉遣いになったのも関知せず、的確に質問の答えを返してきた。

「ぷふっ」

 しかし、宇内と定井には感知されてしまったようだ。

 うるせぇヤローどもだ、と心の中で毒づきつつ、これ以上失態を演じることがないように、僕は深呼吸した。そして答えた。

「是非、やらせていただきまにょう!」

「にょう? ……ぷふっ」

 噛んだことを宇内と定井に気づかれてしまったが、そんなこと些事だ小事だ細事だ。要するにどうでもいいってことだ。そういうことなら話は違う。危険を冒す値打ち大有りだ。

 でも、データだけ取ってバックレられても困るから、身元確認をしておかないと。苗字と携帯の電話番号しか載ってない名刺なんて、ぜんぜん信用できない。

「今更ですけど、この子、どこの会社の製品なんですか?」 

「……うーん。確かに、当然の疑問でございますわ。私としても、申し上げたいのはやまやまやまやまやまやまなのですが、今はちょっと申せません。ただ、誰もが知っている有名なメーカーですから、ご心配なく、とだけ申し上げておきます」

 先ほどまでの住良木とは、打って変わった歯切れの悪さ。でも、本当は言ってしまいたいって思ってるのが、ありありと分かる。

 ロボットを作ってたメーカーというと、S・オニーか? アホンダラか?  

いや、意外とダンバイだったりして。

ガルプラの、特にプレシャスグレードなんか、歩き出さないのがウソだってくらい、緻密にできてるもんな。あと、大穴としてガセも予想に入れとこう。

「……では、とりあえず信用しておきます」

 なんとなく折り合いがついたので、僕は住良木の心中を察してやることにした。

「感謝いたします。それでは、この子の名前と性格の設定をお願いします」

「名前と性格……」

 名前だけじゃなく、性格も設定できるのか。

 名前はともかく、性格なんて、RPGの女性キャラみたいに、軽々しく決めていいもんじゃないだろう。なんと言っても一生の問題だし。

 いやいや、一生ものと言えば、名前だって一生使うものだから、ノリで気軽に決めていいわけがない。どんな年代になっても違和感のない名前でなくてはなるまい。

 一生着られる服のデザインなんてないのに、名前にはそれが求められる。難問だなぁ。

 でも、この子は年をとらないんだから、今のままのイメージで命名しても構わないってことにはならないか? 

いや、でも、外見は変わらなくても、内面は成長するのかも。

ああ、……ううう。僕は思わず頭を抱えた。

 結局、なにひとつ手抜きはできないってことか。僕って典型的なA型人間だよなぁ。 

「お好きな女性はいらっしゃいませんか。ユーザーの方々には、今好きな方の名前をつけたり、昔好きだった方の性格などに似せる方も、結構いらっしゃいますわよ?」

 焦れたのか、住良木が助け舟を出してくれた。

「好きな人……」

 と考えて、最初に浮かんだのはもちろん香澄ちゃんだ。

でも、香澄ちゃんの性格は嫌いじゃないけど、ていうか好きだけど、ひとりでも持て余し気味なのに、あんな性格の子が周囲にふたりもいたら、きっと二倍、いや、マグニチュードの数え方みたいに、ひとり増えるごとに三十二倍くらい疲れてしまうに違いない。

 そういう経験はないのに、強く確信できた。間違いない。

「じゃあ、こうしてください」

だからあえて、僕は香澄ちゃんと正反対の性格を選んだ。大胆で突拍子もない香澄ちゃんに対し、おとなしくて物静かな妹。これは、きっといいバランスだと思う。

香澄ちゃんがONだとしたら、この子はOFF。

香澄ちゃんが太陽だとしたら、この子は月だ。

目を閉じたままの少女の顔を眺めながら、僕はひとりで納得した。

「ああ……!」

「どうかなさいましたか?」

「この子の名前、決めました。『るな』にします」

「わかりました。ルナティックの『ルナ』、でございますわね?」

 なぜわざわざその単語を持ち出すのか。

「音はそれでいいですけど、平仮名で『るな』です」

「はい。混ぜるな危険、の『るな』ということですわね?」

 なぜわざわざそんな中途半端なところを抜き出すのか。

「……柔らかい感じがするでしょう?」

「ええ。ら行は口当たりがよろしゅうございます。平仮名ですとなおさらですわ」

 そう言って住良木は、「にやり」と笑った。

決して「にこり」じゃなかった。


「ポン、ポン、ポンと。はいこれで設定終了です。起動オッケーの状態になりましたので、江川崎様に最後の組み立てをしていただきましょう」

「組み立て?」

 さっきもそう言っていたけど、このユニット一式に、僕が手を入れられるところなんて、あるんだろうか?

 ……と思っていたら、その直後に意味が分かった。

 住良木が目くばせすると、細いほうの男、確か宇内だったと思うけど、そいつが女の子用の服を取り出したのだ。

「く、組み立てって、まさか」

「目が覚めたときに裸では、るなちゃんもきっと驚くでしょうから」

 と、宇内から受け取った服を僕の前に突き出した。予感的中だ。

「それを僕がやるんですか?」

「他に誰が? 裸のままでお連れした理由をお考えください」

「……嬉しいくせに」

 にやりと笑って定井が口をはさむ。黙ってろ、コノヤロー。

「まず、るなちゃんをクレイドルから降ろしてください。ただし、耐久度は人間に毛が生えた程度に作られてますから、優しくお願いしますね?」

「……毛は生えてないけどな」

 にやりと笑って定井が口をはさむ。うるせえっつんだ、コノヤロー。

 結局、なし崩し的にやらされることになってしまったので、僕は、部屋の床より一段高くなっているトイレ風ボックスの中に片足を踏み入れた。金属のひんやりした感じが靴下越しに伝わる。

ためらいながら、るなの背中とひざの裏に手を回して、横抱きにした。

『ふ、ふおおおおぉ。や、柔らかいぃーー!』

 口には出さなかったけど、その例えようのない感触は、指先から脳へ猛スピードで伝わると、勢い余って跳ね返り、全身を駆け回った。

 ただ、その身体は冷たかった。電源が入っていないせいか、室温程度の体温だった。

 そして重かった。

「よっ、と。お、おお?」

 慎重に持ち上げにかかる。

 香澄ちゃんより小柄なのに、かなり重い。抱えたことはないけど、間違いなく香澄ちゃんより重いはずだ。おそらく六、七十キロはあるんじゃないだろうか。

 たぶん僕は、まだ頭のどこかに「この子が機械だなんて嘘だろ」と、疑っている部分があったと思う。それがこのとき、完全に消え去った。人間そのもののように見えて、やはりこの柔らかな身体の中には、金属のパーツがぎっしり詰まってるんだ。

「重いでしょう?」

 僕の心を読んだように住良木が言った。「そうですね」と答えようとしたけど、それを待たずに続きが始まってしまった。

「すべてを人間同様に、という目標を持って開発開始したのですが、重い身体を支えるために骨格が重くなり、その身体を動かすために駆動系も重くなり、剛性を保つためにさらに重くなり、重い身体に人間らしい挙動をさせるために人工筋肉を強化したらますます重くなるという巨大化、重量増加のスパイラル。この子を軽くすることを考えたら、自分のダイエットのほうがよほど楽なくらいですわ。……この点につきましては、もっとこだわりたかったのですが、結局、ここまで軽量化した時点で上からゴーサインを出されてしまったのです。それが心残りで、心残りで……」

 これはおそらく、僕に聞かせたいんじゃなくて、住良木が、彼女自身に言い聞かせる決意表明だったのだろう。

「しかし、いずれ、技術のイノベーションによって克服して見せますわ!」

 中腰のまま長広舌に付き合った僕は、がくがくする膝をなだめつつ答えた。

「……期待してますよ」

 そのままゆっくりとコンテナの外に運び出そうとしたが、なにかに引っ張られ、思わずるなを落としそうになった。

「おっ?」

 覗き込むとチューブがあった。るなの両足の間に、便器のような形のクレイドルから、三本のチューブがつながっていたのだ。

「あああ、え、と。ううう」

 なんと説明していいのか分からず、僕は住良木に気づいてもらえることを期待して、言葉にならないうめき声を上げた。 

「……ああ、それは充電と各種オイルの注入、排出チューブです。供給も排出も終わっていますので、外しても大丈夫ですわ」

「は、外すって、どうやって?」

「変圧器についているレバー。そう、その後ろのタンクみたいなものです。そのレバーを下げればチューブは外れます」

 最初に言ってくれよと思いつつ、るなを膝の上に座らせ、片手を空けて流水レバーそっくりのレバーを操作する。言われたとおりにすると、「パキュ」という湿った音とともに、三本が束になったチューブは同時に外れ、クレイドルの中に引き込まれていった。

「ではこちらに」

 住良木の指示するとおり、畳の上にるなを横たえた。

 さっきは隠れていた部分。胸のてっぺんとか、へそのちょっと下とかがあらわになる。

 美少女フィギュアのパンチラでさえ心ときめく彼女いない暦イコール年齢の男子高校生には、それが人工のものだなんてことは関係なく、と言うか、それはどう見ても作り物には見えなかった。単なる、一糸まとわぬ美少女のまぶしい裸体がそこにあった。

「ううう。目がチカチカします」 

「……光化学スモッグかよ」

 にやりと笑って定井が口をはさむ。黙ってろ、コノヤロー。

「まずこれを」

 住良木がくしゃっとなった布切れをつまんで、目の前でヒラヒラさせる。 

「ぱ、ぱぱぱぱん……! これも、ですか?」

「まぁ。江川崎様は、下着をお付けになりませんの?」

「……はさむぞ」

 にやりと笑って定井が口をはさむ。うるせえっつんだ、コノヤロー。

「穿いてますよ、パンツくらい。でも……」

「女の子の下着を穿かせるのは抵抗がある、と?」

「あたりまえじゃないですか」

「……はぁ、そうですか」

 芝居がかった動きで、住良木が絶望を表現する。

「そんな大げさな……」

「では、仕方ないですね。このお話はなかったことに」

「え……? ああ。う……!」

 ぱんつを穿かせるのがそんなに重要なことなのか?

「これは非常に重要な作業なのです。これができないようでは、この子をお任せすることはできませんが……」

 そんな。ちょっと待ってくれよ。そんないきなり。心の準備が。僕には無理なのか?

 でも、ちょっと。いや、かなりもったいない気が。やっぱり。ううう。がんばれ、僕。だけど。

 頭の中で緊急僕会議が開催されたが、意見百出で結論が出ない。

「……わかりました。次点の方にお回しすることに致しますわ」

 僕の返事を待たずに住良木は、焦れたように言った。

「じ、次点……」

 そんな、もうちょっと考えさせてくれたって。

「次点がどんな方なのか存じませんが、この子のことを江川崎様より大事にしていただけるとは限りません。もしかしたら陵辱の限りを尽くされて、壊れてしまうかも。例えそうなったとしても、可哀そうに。『おとなしくて物静か』などという性格に設定されたこの子は、誰にも打ち明けられず、誰を恨むこともできないのですわ」

 嫌なこと言うなぁと思いつつ、るなの顔に視線を移す。口元にかすかに笑みを浮かべたその顔は、まるで夢を見ているかのようだ。

「安らかに眠っていますわ。この後訪れる運命を知らずに……」

 呟きながら、軽く握った指の背で、すべやかな頬を撫でる。

「悪いお兄さんに引っかかってしまったわね、るなちゃん。自分の好みに調教した妹を他人に陵辱させて悦に入るなんて、鬼畜の所業よね、キ・チ・ク・の!」

「だ、黙って聞いてりゃ言いたい放題! 誰がキチクですか、誰が調教しましたか、誰が悦に入りましたか! 人聞きの悪いこと言わないでください!」 

 僕の叫びを無視して住良木が、「この負け犬め」といった目つきで見た。

「……分かりましたよ、穿かせたらいいんでしょ!」

 住良木の手からぱんつをむしり取る。

その刹那、住良木がニヤリと笑ったのが見えた気がした。

要するに僕は、うまく乗せられてしまったってことらしいけど、もう後には退けない。

「ぱ、ぱぱぱぱん……くらい、なんですか。こんな、ちっちゃい布、物の数ではありませんよ。恐るるに足らずですよ!」

 ちっちゃいからこそ難物なのだけれど、必死の強がり。

「色即是空、空即是色」

 ムクツケキ大男がお経を唱えながら、四六の蝦蟇のごとく脂汗を流しつつ女子用ぱんつを握り締める姿は、ある意味地獄絵図。

「ハラソーギャーテーボジソワカー」 

 変な感じで般若心経を唱え、自らに落ち着け落ち着けと命じ続けた結果、ある程度落ち着いたものの、それが落とし穴だった。

 落ち着いてるなの顔をまじまじ見たところ、ほしかげの一年生の間では有名な美少女、樺沢聖美になんとなく似ていることに気づいた。いや、気づいてしまったのだ。

 気づいた後は意識してしまい、もう大変だ。

 エロ本のグラビアに、好きな子の顔写真をコラージュした経験のある者は、少なくないだろう。実際に切り張りせずとも、「この身体の上にあの子の顔が乗っていたなら……」などと想像したことがあるなら、それはすでに経験者と言える。

 経験者なら分かるだろうが、見知らぬ女のとりたてて魅力のない身体と、グラビアアイドルより数段劣る、顔見知りであること以外特筆事項のない顔が合体した瞬間、まったく別のものへと変貌する。

 カードゲームで、クズカード二枚を組み合わせると意外な効果を現すようなものだ。

 平面の写真ですらそうなのに、立体ならなおさらだ。親鸞聖人なら、「平面なおもて興奮す、いわんや立体をや」と言うに違いない。

 絶対だ。

 さらに、ただの女の子ではないのだ。学校のアイドルだかマドンナだかにそっくりなのだ。それが目の前で全裸になってると来ちゃ、分速一万四千回転でマニ車をぶん回したとて、この煩悩は調伏せしめることはできまいと思われるほど。

 リキッド・スネールの有名なセリフ、「煩悩を持て余す」を地で行く有様。

 心臓が早鐘を打ち、舞い上がった血圧は容易に鼻の毛細血管を破裂させ、鼻血となって流れ出した。

 汗だくになるし、のどは渇くし。女の子は着せ替え遊びなんかしてたけど、こんなの、どこが楽しいんだろう?

 ……というわけで、僕は悪戦苦闘の末、るなに服を着せた。

「ミッションコンプリート」

 宇内が親指を立てて小声で言った。確かに、一仕事終えたくらい僕は疲れていた。


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