表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/57

第43話 環境に厳しい女

 マヤ達は、毒竜ラスティネル討伐に出発した。




 討伐隊は4人と小規模なので、移動手段は馬車だ。


 8本足のゾンビ馬、スレイプニルが引いている。


 この馬車、マヤが辺境伯領まで乗ってきた時よりさらなるアップグレードが(ほどこ)されていた。


 空間魔法を応用した技術が、組み込まれているのだ。


 おかげで外から見たサイズよりも、客室内が広い。


 4人乗っていても、スペースにはかなり余裕がある。


 極上の乗り心地を誇る座席で、皆は(くつろ)いでいた。


 


 討伐隊の面々は、軽装だ。


 武器・防具を身に着けている者はいない。


 移動中まで装備していたら、重さで疲れてしまう。


 ゼロサレッキの空間魔法で、異空間に収納しているのだ。


 瘴気の洞窟まで辿(たど)りついてから、身に着ければよい。


 途中で毒竜以外の魔物から襲撃された場合には、マヤが不死者(アンデッド)を召喚して対応する。


 そういう計画(プラン)だ。




 カインの服装は、布製の鎧下。


 戦闘に入る時、全身鎧を装着する。




 クレイグは、相変わらずの執事服。


 戦闘時も、これの上から胸当てを追加するだけだ。




 オズウェルにいたっては、旅人の服にマントを羽織っただけ。


 彼は戦闘に入っても、この恰好のままだそうな。




 そして、マヤはというと――




 なんと、(しっ)(こく)の美しいドレス姿である。




 最初はニアポリート家の地下牢で引き籠っていた頃着ていた、野暮ったいローブで出発しようとしたのだ。


 だがレイチェルや辺境伯家のメイド達に、止められてしまった。


 「いくら魔物討伐とはいえ、ダサすぎる服装は却下」と。




 黒を基調に、ところどころ紫の()(しゅう)(ほどこ)されたこのドレス。


 (じつ)は凄まじい魔法防御力を誇る、(じん)()である。


 名を、【(よい)(やみ)のドレス】という。


 首なし騎士(デュラハン)のゲオルグ達が、迷宮(ダンジョン)の奥深くで発見したお宝だ。


 マヤは「フリフリして動きにくい」と嫌がったのだが、レイチェルに押し切られて着る羽目になった。


「魔法攻撃である毒竜の吐息(ブレス)から、身を守るためです。それと辺境伯夫人なのだから、見た目も大事にしてください」


 と。




 馬車はウィンサウンドの都市防壁から出ると、速度を上げた。


 久々にマヤの乗る馬車を引けて、スレイプニルはテンションMAXなのだ。


 ひとりダービーを始めてしまう。


 御者を務めるレイチェルが減速させようとするが、あんまり言うことを聞かない。




 速すぎて、あっという間に大森林の入口まで辿(たど)り着いてしまった。


 木々が邪魔をして、ここからは馬車で進めない。


 マヤ達は、馬車から降りた。




「クレイグ。ラスティネルが封印されているという、瘴気の洞窟はどの辺りにあるの?」


「あの山の(ふもと)です」




 クレイグが指差す山は、かなり遠い。




「なるほど。けっこう遠いわね。普通は3日かかるというのも、納得できるわ。普通に徒歩で、森の中を進んだ場合の話だけどね。……貴方(あなた)達、道を作りなさい」




 マヤの呼び掛けに応じ、2体の(がい)(こつ)が異空間から出現した。


 死霊の魔導士(リッチ)四天王のうち、2人。


 ゼロサレッキとリリスコである。


 彼らはマヤから魔力を受け取ると、(いっ)(しゅん)で肉体を再生させた。


 絶世美男子の姿で、2人同時に風の大魔法を行使する。




「「【トルネードランス】」」




 リッチ達の手から、瘴気の洞窟の方角へ。


 巨大な竜巻が、横向きに発生した。


 竜巻は突撃槍(ランス)となって、大森林の木々をなぎ倒してゆく。




 竜巻が過ぎ去った(あと)は緑と大地が(えぐ)られ、道ができていた。




「地面がガタガタで、このままだと馬車が走れないわ。……道を(なら)しなさい」


 次に出現したリッチは、ナーガノートとトノルミズルだ。


 最初の2人と同じように、肉体を再生させてからの大魔法行使。


 今度は土の大魔法だった。




「「【ランドフラッテナー】」」




 抉れていた地面が生き物のように動き、平坦な道ができてゆく。


 地球の舗装道路も、真っ青な平坦(フラット)っぷりだ。




「さあ。これで、馬車に乗ったまま進めます」




 マヤは仲間達の(ほう)を振り返り、誇らしげに言う。


 しかしカインとクレイグは、大規模自然破壊にドン引きしていた。


 「いくらなんでも、やり過ぎじゃないかな~」と言いたげに、(ほお)をピクピクさせている。


 絶賛していたのは、オズウェル・オズボーンぐらいのものだ。




「素晴らしい! リッチを4体も同時に使役し、大魔法を使わせるとは……。死霊の姫君は、素晴らしい魔力をお持ちですね。さあ、お疲れでしょう。これをお飲みください」


「この水薬(ポーション)は……。魔力回復薬ですか?」


「我が商会、自慢の商品です。並みの魔導士なら2~3人分を、魔力満タンにするだけの回復量があります」




 マヤはしげしげと水薬(ポーション)の瓶を眺め回していたが、やがて興味を失ったようだ。


 飲まずにオズウェルへと返す。




「お気持ちだけ、受け取っておきます。私には、必要ありません。自然回復させた(ほう)が、魔力の成長に繋がるし」


「18歳以降は、魔力が伸びにくくなると言われていますよ。まあ魔力が大きい人間は伸び幅も大きいので、死霊の姫君なら今後もそれなりに伸びる可能性はありますが……」


 オズウェルは少しガッカリしたように、ポーションの(びん)をマジックバッグへとしまった。


「魔力を(いち)()(てき)増幅(ブースト)させるポーションなどもございますので、入り用でしたらお声がけください」






 ――魔力増幅ポーション。


 そんなものを飲んだら、マヤ・ザネシアンはさらに手が付けられない存在になるかもしれない。




 カインとクレイグは、ぶるりと()(すじ)を震わせた。








お読みくださり、ありがとうございます。

もし本作を気に入っていただけたら、ブックマーク登録・評価をいただけると執筆の励みになります。

広告下のフォームを、ポチっとするだけです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓他にはこのような作品を書いています↓

異世界に召喚され損なったオッサンが、チート能力だけ地球に持ち帰って現金無双
【女神のログインボーナスで毎日大金が振り込まれるんだがどうすればいい?】~無実の罪で職場を追放されたオッサンによる財力無双。非合法女子高生メイドと合法ロリ弁護士に挟まれながら送る夢のゴージャスライフ~

異世界で魔神討伐をして得た超人的な力で、高校野球界を蹂躙せよ!
【異世界帰りの勇者パーティによる高校野球蹂躙劇】~野球辞めろと言ってきた先輩も無能監督も見下してきた野球エリートもまとめてチートな投球でねじ伏せます。球速115km/h? 今はMAXマッハ7ですよ?~

格闘と怪力で、巨大ドラゴンをフルボッコにする聖女の恋愛と冒険譚
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

近未来異世界で繰り広げられる、異世界転生したレーサーの成り上がり物語
ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

ファンタジー異世界の戦場で、ロボヲタが無双する
解放のゴーレム使い~ロボはゴーレムに入りますか?~

幽閉されし王女が護衛の女騎士(♂)から攫われて、隣国で幸せになる話
【緑の魔女】と蔑まれし幽閉王女が、美貌の女騎士から溺愛されて幸せになるまで ※なお女騎士の正体は女装した隣国の皇子であるとする

― 新着の感想 ―
[良い点] 前回、不安だったけど、今回で妙に安心しました。 そうやった。マヤちゃん、魔力オバケだったね。 オズウェルがことごとくふられまくっているのが、だんだんツボに入ってきましたw めげない眼鏡、好…
[良い点] し、森林ーーー!!! プレゼントに興味ないと言われちゃったオズウェルくん可哀想() 瓶ごとぽいっと捨てられなくて良かったね(*゜▽゜*)
[一言] はっはっは、手に負えませんなあ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ