第21話 不死女神降臨
「え……? でも私は、貴女の旦那さんをゾンビに……」
「そのおかげで、こうしてまた夫と話すことができました。【死霊術士】たるマヤ様のお力がなくては、叶わなかったことです」
礼を述べてきたのは、タダーノの妻だけではなかった。
ゾンビ戦士達の家族と思わしき人々が、マヤの周囲に集まってくる。
「そうですじゃ。マヤ様のおかげで、戦死した息子と再会することができました。ありがとうございます」
「ただ魔物に殺されただけじゃ、悲し過ぎるよ。これからもどこかで戦い続けているのだと思えば、救いのある話さ」
「マヤ様は、最期に別れを告げる機会をくれたんだ」
「神聖教会の連中は、どうして【死霊術士】を悪く言うんだ? 何が魔王の【天職】だ。死した戦士に道を示してくれる、女神様じゃないか」
「その通りだ! マヤ様は女神だ! 不死者達の女神……不死女神だ!」
湧き起こる「不死女神」コール。
マヤは、何とも言えないむず痒さを感じていた。
「パパの手は、冷たくなっちゃったけどさ……。それ以外は、何も変わらないよ。おっきくて、ガッシリしていて……僕の大好きな手のままだ」
タダーノの息子は、愛おしそうに父親の手をさすった。
そんな息子の仕草を見て、タダーノは穏やかな表情を浮かべる。
紅い輝きを放つ瞳は、どこまでも優しかった。
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結局マヤ達は、街をパレードしながら帰る羽目になった。
いちどは異空間に戻したスカルタイタンや死霊の魔導士達も、再び召喚されてパレードに参加している。
小さな子供達が、せがんできたのだ。
「マヤさま、おっきなガイコツだせるんでしょ~? じょうへきのえいへいさんが、みたっていってたよ~。だしてだして~」
と。
子供達はスカルタイタンを見上げ、
「きゃ~! ガイコツだ~! こわい~。でもおっきくて、カッコイイ~」
と、はしゃいでいた。
スカルタイタンがうっかり人を踏みつぶしたり、建物にぶつかって壊しやしないかと、マヤは心配でたまらなかったが。
リッチ達はマヤから魔力供給を受け、肉体を再生させていた。
凄まじい美形の魔導士4人組に、沿道にいた女性達が悲鳴じみた歓声を上げる。
リッチ達もサービス精神旺盛で、それぞれ手を振ったり、あざといほどの笑顔を向けたりしていた。
サービス精神が行き過ぎたリリスコが半裸になり筋肉を強調し始めたので、マヤはスリッパで彼の後頭部をスパコーン! とはたく。
魔導士ばなれした筋肉に興奮し過ぎた何人かの女性が、鼻血を噴いて倒れてしまったのだ。
迷惑な美形である。
「まったく、もう……。これじゃまるで、アイドルね……」
まんざらでもないリッチ達に、呆れるマヤ。
しかし自分もウィンサウンドの住民達からアイドル扱いされていることに、彼女は気付いていなかった。
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パレードをしながら帰ったので、マヤ達がウィンサウンド城に帰りついた時にはすでに夕暮れだった。
ここでも、使用人達から大歓声で迎えられる。
カインやクレイグはもちろん、マヤもだ。
使用人達の中には、涙を流して喜ぶ者もいた。
男性使用人達は、レイチェルの帰還にも喜ぶ。
美人メイドな彼女は、密かに人気者だったりするのだ。
「レイチェル様から、冷たい目で睨まれたい。踏まれたい」
などと思っている者は多い。
『マヤ。疲れているところ悪いが、話がある。このまま俺の執務室へ来てくれ』
カインに言われるがままに、ついていくマヤ。
執務室には、辺境伯家に来てから初めて足を踏み入れる。
山のような書類が、執務机の上に積みあがっていた。
どうやら辺境伯は、本当に忙しいらしい。
新妻に会いに来なかったのも、執務に追われてのようだ。
マヤを部屋に招き入れると、カインは扉を閉めた。
執務室内で、2人っきりだ。
「ふむ。やっとその気になりましたか。旦那様は、執務室内で致すのがお好きなのですね」
『なっ! 何を言い出すのだ! はしたない! ……今まで冷たい態度を取って、すまなかった。第1王子派から、スパイとして送り込まれたのではないかと疑っていたんだ』
カイン・ザネシアン辺境伯はマヤの前に立ち、言葉を発した。
『【解除】』
キーワードに反応して、彼の全身鎧がバラバラになり床へと落ちてゆく。
中から現れたのは、痩せた小柄な人物だった。
艶やかな輝きを放つ、ピンクブロンドの髪。
透き通るような青い双眸は、曇りが全くない。
歳の頃は、11~12歳くらいに見える。
「これが本当の俺。カイン・ザネシアンの正体だ」
声変わりもしていない幼い声で、絶世の美少年は告げた。
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