(逆回転)
完結です!
私は、鬼に嫁入りしなければならない運命だった。それが村のしきたりだったのだ。
鬼はとにかく醜くて、岩のようにゴツゴツした身体を持っているという。
その胸板に激しく抱かれると、柔らかい肌は擦りむけてしまう。
鬼が満足いくまで動き終わる頃には、こちらの全身は傷だらけだ。
鬼と交わることは、とても人間の女に耐えられるものではない、と。
「しかしお前は、その鬼に肉体を捧げる必要がある。お前でないと、だめなのだ」
物心ついた頃には、村の存続のために耐えよと、母と祖母は毎日のように私を説得した。
恐ろしくてたまらなかったけど、私は嫁入りを決意した。
村人たちは、それを聞いてほっと胸を撫で下ろしたようだった。
満月の夜を嫁入りの日に選んだ。
特別にあつらえた白無垢を着せられた私はひとり、山の頂上で待つ。
鬼の見た目が醜いというのは嘘だった。
すっと面長に切れ長の瞳で、女のような顔つきだった。
身体が岩のようだというのも嘘だった。
引き締まり、しなやかで、腰つきは柳のように華奢だった。
絹のように滑らかな肌をしている。
まるで、白百合のような男。
性器は金棒のようだと聞いていた。それも嘘だった。
そんなものではすまなかった。杭のような持ち物だった。
鬼は私に、脚を開いて自分の上に跨るように命じた。
表面の凸凹につかえながらも、屹立した硬い棒にやっとこさ腰を沈め、私の身体は串刺しのようになった。
鬼は私の両太ももを押さえて離さなかった。
そのまま身勝手に下から動かれ、白無垢ははだけた。
揺れる動きに合わせて、衣ずれの音が野山に響いた。
白い布が私の身体を軸に、夜風に吹かれてばさばさとはためいた。
まるで、山の頂に掲げられた白旗のように。
鬼の腹の上には、私から滴り落ちた血が紅く溜まっていった。
これが、私の初夜。
ああ、今でも忘れはしない。まるで真昼のような月夜だった。
《fin》
お読みくださり、ありがとうございました^_^
文学フリマ広島6、がんばります!