捜すべきなのは……
■■■23:30/月夜乃外苑■■■
「西園寺ぃ! 鳳凰、犬神ぃいいい!!! 何処だ返事くらいしろ阿呆ぉおおおッッッ!」
──夜の闇に、オレの叫び(↑)は吸い込まれて消えてゆく。
「あの、心配なのは分かります! けど、もう少し声を抑えないと警備が──」
『もっと静かに捜せチュン!』
おっと失礼! 陰陽師組から怒られちゃったが、この場合は来た警備さんも巻き込んで捜索した方が良いのでは無いだろうか?
──あぁ、いやダメか。普通の人に妖だの悪霊だのと宣ったトコで頭の病院へ連れて行かれるわ!
落ち着け! 冷静になれオレ!!!
月夜乃外苑内を駆け回って捜索しているのに見つからない以上、西園寺達に何かあったと見るべきだ。
下手をすると、もう悪霊となった子どもの手によって攫われてしまったかもしれない。
「──狐! もう一度訊くが西園寺達の居場所は分かるか!?」
『いや……ダメだ。まるで靄が掛かっているかのように視えない』
悔しそうに、狐さんが告げる。
──クソッ! どうする!? どうすれば良い!!?
『焦っちゃダメ──そうなったら、あの子の思うままになってしまうわ』
『そうじゃぞ……どうすれば相手の裏を取れるかを考えるんじゃ』
送り狸と玄武君はそう言って来るが、幽霊相手にどう裏を取れと!?
いや……待て? あの子の、思うまま???
ふと、送り狸の言葉がオレの頭の中で再生される。
『──両親の元へ帰れない』
『──孤独に耐え切れず、悪霊へと成り果てた』
『──孤独を癒したいが為に、次々と人間を自身の結界内へと取り込んでいる』
そうだ……悪霊となった子どもは、『寂しい』から、人間を攫っているんだ。
──それなら!
「土御門さん! 8年前に行方不明になった子どもの名前分かる!?」
「──へッ!? え、と……確か、鴉間 陽一くん、だったかと」
『何でそんな事訊くチュン! 大体、いま捜しているのはお前の友人チュン!』
そう怒鳴ってくる朱雀に、オレは言葉を返す。
「──それが間違いだったんだ。いま、捜すべきなのは西園寺でも、その友人でも無い……鴉間 陽一……今、捜すべきなのは彼だ!」
■■■月夜乃外苑 中央広場■■■
月夜乃外苑、中央広場へとオレ達は戻って来た。
──中央広場というだけあって、此処が一番見晴らしが良い。
土御門さん達には、少し離れた茂みに待機してもらい……オレは一人で、広場に立つ。
一度、大きく深呼吸を行い──何とか、頭の中を落ち着ける。
──成功するかは分からない。だが、やってみる価値はあるだろう。
大きく息を吸い、
「……鴉間 陽一くん、もし近くに居るのなら出てきてくれないか? 君と話しがしたい!!!」
出来うる限り声を張り、ハッキリとそう告げる!
大声を出すのはアレだが、今回は許してほしい。相手に聞こえなければ意味が無いからな。
──すると、
『お兄さん、誰? 僕のコト、知ってるの?』
掛かった──ッ!
それと同時に、周囲に薄っすらと霧が出て来る。
──息が苦しい。全身が総毛立ち、夏場だと言うのに……吐く息が白い。
それでも、逃げ出しそうになる足を抑え……歯を食いしばって耐える。
歯の根が合わなくなる口で、何とか言葉を絞り出す。
──恐れを隠し、声のした方を真っ直ぐ見据え、
「ああ、知ってるさ! 君のお母さんやお父さんのコトも知ってるぞ!!!」
相手の関心を引くであろう言葉を選んで口にする。
そうすれば、案の定──、
『ママとパパを知ってるの!? ホントに!!?』
弾んだ声が返ってきた。
──相手は、悪霊とは言え子どもなのだ。それを改めて実感する。
だから、子どもと話す様に、
「ああ、だからそのコトについて話をしたいんだ。出てきてくれないか?」
少しだけ肩の力を抜き、口調も緩めた。
すると、暫く無言の後。
『わかった……』
まだ少し警戒を含んだ声だったが、そう、了承する声。
そして、オレが見据えていた霧の先から──
「………………え?」
ゆらりと、現れたのは──西園寺だった……へ??
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