忘れてた!
■■■23:10/月夜乃外苑 中央広場■■■
『──グスッ。は、恥ずかしいトコ見せちゃったわね』
と、送り狸は鼻声で恥ずかしそうに告げた。
オレの右手からも右前足を下ろし、今は行儀良くお座りしている。
すると、まるでタイミングを見計らっていた様に──
『おい……アイツら、ちょっと遅くないか?』
──ふと、コックリさんが問いを投げた。
その問いを受け、尻ポケットからスマホを取り出し時間を確認する。
……確かに遅いな。
集合予定の時間は23時だった筈だが、その時間をもう過ぎていると言うのに、二人の姿はない。
「ッ! まさか、何かあったんじゃ──ッ」
『──何かって何チュン?』
人の心配を他所に、オレの頭上から唐突に焼鳥の声がする。
そしてその焼鳥の声に続く、
「すみません! 遅くなりました!!!」
と、息を切らせつつ謝罪する土御門さんの声に、
──あー、うん。遅刻しただけか、良かったぁ。
そう内心安堵するオレ。
「ううん、オレも今来たト……コ…………?」
その場に立ち上がり、土御門さんの方へと顔を向けたオレの表情筋全般が固まる!
…………え? 何そのデカブツ???
「ほら、玄武君も急いで!」
『コレでも急いでおるんじゃがのぉ??』
『もっと早く走るチュン!』
と──土御門さんと朱雀は、ノソノソと歩くデカブ……げ、玄武君? を、急かす。
が、玄武君のスピードは全く変わっていない。
まぁ、あんだけデカかったら動きがゆっくりになっても仕方ないと思う。大の大人くらいのサイズあるし。
『あら、玄さんじゃない? 一緒に居た人の子はどうしたのよ?』
『──ん? おお、送り狸殿か! いやはや、忠告されておったのに主を攫われてしもうたわ』
知り合いだったのか、送り狸は玄武君に問い、また玄武君も送り狸にのほほんと答えている。
──自分の主人攫われてんのにのん気だな!? と、思いつつそのやり取りを見ていると……、
「あの、火神さん……もしかして、近くに妖が?」
そう土御門さんが、小さな声で問うて来たので──どうやら送り狸も普通? の人には視えないのだと知る。
……同時に、
「あ〜、うん。オネェ口調の優しい狸が其処に居るよ」
と、自分だったら間違い無く耳を疑うだろう言葉を言い放つ。
──が、
「? えっと、取り敢えず情報交換をしましょうか」
一切動じない…………バイト陰陽師ってスゲェって思いました。
◆◆◆
「──成程。つまり、この連続失踪事件は、最初に失踪した子どもが悪霊化した為に起こってしまった。と」
『この地で亡くなり、遺体も見つかっていない……恐らく、その子どもは地縛霊になっていたチュン』
オレが送り狸から得た情報を説明すると、土御門さんと朱雀は難しい顔で言葉を交わす。
「ヘイ狐……地縛霊について教えて」
勘違いしないでほしいのだが、オレは妖を視たり、触れたり出来るだけの一般人なのだ。
聞いた事はあるが、詳しくは知らないコトなんてごまんとある。
つまりな? 知っている体で話されても、全く存じ上げておりませんのよ! 無知でごめんあそばせ!!!
『──ふむ。地縛霊とは、自身が亡くなった場所に囚われている霊のコトだ』
なるほど。確かに送り狸も帰れない的なコトを言ってたな? それか!
「えっと、じゃあその地縛霊って……どうすれば浄化? 浄霊?? 出来るんだ?」
オレの問いに、
「──通常であれば、亡くなった方の願いを果たせば良いのですが」
答えてくれていた土御門さんの言葉が、重く途切れる。
『それは難しいと思うわ。あの子の願いは「お家に帰りたい」「一人は嫌だ」というモノだけど──』
送り狸は悲しそうに言葉を続ける。
『──あの子の遺体は見つかっていない。アタシにもその場所は分からないの……だから、その願いを叶えるコトは出来ないわ』
『じゃが、もう一つの「一人は嫌だ」という願いを叶え続ける事も出来んしのぉ』
玄武君の言葉に、そりゃそうだと一つ頷く。
──その願いは、オレ達の目的とは真逆のモノだ。
行方不明になった人達も、西園寺の自業自得な友人も、それは望んでいないだろう。
……ん? 西園寺の友人…………西園寺??? そういや、あの鳳凰と犬神も!
Σ(°Д° )!!?!?
「──そう言えばアイツらまだ戻って来て無いじゃん!!?」
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