バイト陰陽師と式神
■■■翌日/早朝/病院入り口■■■
「──そんな所で土下座かまして何をしているのかね、西園寺君や?」
昨日、面会時間ギリギリまでオレの病室に留まりバカ騒ぎしていた友人に問う。
──というか、病院の入り口で土下座なんてするんじゃない。他の人の邪魔になるだろうが!
「ひッ、ひがみ"ぃ〜〜〜ッッ、ど、どうしよう!!?」
「うん。取り敢えず其処退け、他の人達の邪魔になるから。話しならちゃんと聞いてやる!」
泣きじゃくる友人を何とか立たせ、外へと連れ出す。
「──で? 何があったんだ??」
「………………うッ……」
そう問うオレに、西園寺は言いにくそうな顔で口を開閉させたかと思えば……結局、無言のまま黙り込む。
「……人に聞かれたく無い話しなのか?」
「………………ッ」
西園寺を一度、首を縦に振った。
人に聞かれたく無い話しなら、何で病院の入り口で土下座してまで言おうとしたんだよ!
──と、思わなくも無いが、多分混乱てたんだろうと自分に言い聞かせる。オレは空気の読める子だからな!
「はぁ。何処でなら話せる?」
「…………こっち……来てくれ」
案内されるままに西園寺について行くと、何ともまぁ立派なリムジン先輩が駐車場にとまっておられた。
──さすが西園寺は格が違ぇや! 何でだよorz
おまッ、おかしいだろうが!? 何で号泣土下座かました友人の話しを聞く場所がリムジンの中なんだよ!?
……ワインセラーまであるし! 涼しくてめっちゃ快適です有難う御座います!!!
すると──、
「あ、お久しぶりです! 火神さん!!」
──先にリムジンに乗っていたであろう女性が声を掛けてくる。
え……? この声は!?
「土御門……さん!??」
「はい! 犬神さんの件ではお世話になりました!」
と、こっちこそお世話になったバイト陰陽師──土御門 清さんが近付いて来ると、ペコリと頭を下げてきた。
相変わらず可愛ッ──じゃなくて!
「何で土御門さんが此処に!?」
そう驚いて訊くも、
「さぁ? 私もまだ依頼の内容は聞いていなくて……」
と、困惑しつつも相変わらずのポワポワしたような口調で返される。
…………というか、依頼?
どういう事だ? と、西園寺に目を向けた途端ッ!
「──力を貸して下さいお願いします!!!!!」
と、これまたお見事なジャンピング土下座を……西園寺は、かまして来たのである。
◆◆◆
「──取り敢えず、落ち着いて下さい。ゆっくりで構いませんので、何があったのかを聞かせて下さい」
と、見事なあやしテクニックで土御門さんは西園寺に話しを促す。
天使かな? オレだったらケツ蹴り上げてゲロらせてるわ。
──と、優しくあやされ促され……鼻水と涙で顔面崩壊を起こした西園寺が、漸く話し始めた。
●●●
曰く──昨日オレから肝試しの誘いを断られたので、自分も肝試しには行かないと誘いを断ったらしい。
だがそれでも、西園寺の友人達は肝試しを諦めず……自分達だけで肝試しに向かった、と。
んで今朝方、肝試しに向かった友人の一人が行方知れずになったと連絡を受け──今に至る。
●●●
「西園寺君や。キミ、警察って知ってるかね? 行方不明者の捜索は霊能者を頼る前に警察に頼りなさいよ」
「警察にはもう言ったって! 捜索もして、それでも見つからないんだってアイツら泣いてて──だからッ!」
「お話中すみません──その方達が肝試しに行かれた場所は、何処ですか?」
ピシャリと、土御門さんが鋭い声で西園寺に問う。
「うぇ……? あ、えっと確か──最近、行方不明が多発してるって曰く付きの、月……つく?」
「──月夜乃外苑……ですか?」
「ぁ、うん。たしか、そんな名前だった!」
月夜乃外苑って、確か……昨日のニュースでもやってたな。
というか、なんで態々そんな危ないかもしれない場所で肝試しなんてしたんだ?
あ、いや……危ない場所かもしれないからか? でも、それは言っちゃ悪いがb──
『──馬鹿でチュン!!!』
「──っ!?」
オレがふと思った事を、そのまま誰かが代弁でもするかの様に言い放つ!
「こ、こら朱雀! す、すみません西園寺さん!!」
『何故、清ちゃまが謝るのでチュン? 態々、危険な場所に自ら行った人間が阿呆なのでチュン!』
と、よくよく見ると……土御門さんの肩の上に、小さくて赤い──雀、かな? が、いた。
そして雀はそのまま、ズッパリと言い捨てる。
──まぁでも、その言い分は最もだとオレも思う。言い方はちょっとキツいけど。
あれ? というか……。
「……視えるの? 土御門さん??」
オレは思わず、そんな問いを口にする。
たしか、土御門さんはバイトで陰陽師をしてはいるが……『妖』を視る事は出来なかったハズだ。
そんなオレの問いに、
「はい? あっ!? すみません、この子は私のおじ──あーいえ、バイト先の店長からお借りしている『式神』でして……私でも、視る事が出来るんです」
一瞬、「?」と疑問めいた表情を向けられるが、直ぐに何のことか察して説明してくれた。
──というか、一瞬「おじ──」って言わなかった?
まぁ……大変気にはなるが、一旦、それは置いといて、
「へぇ、そうなんだ……宜しく、えっと──朱雀、さん?」
一般常識として、初対面の相手(式神)であろうと、そう挨拶をしておく。挨拶は大事!
『──清ちゃまから聞いているチュン。少しばかり力があるからと言って調子に乗るなよチュン? 一応、宜しくはしといてやるチュン』
『ぶふッ!』
『フハッッッ!』
『キャン!』
「ぷッ!」
「こ、こら朱雀!!! 本当にすみません、この子、妙にプライドが高くって!」
…………いや、土御門さんが謝る事では無いから。
「謝らなくていいよ。うん、これから宜しくね焼鳥さん」
そうニッコリ笑いながら、駄獣二匹が入った菓子入り鞄をシェイクしたのは内緒だ。
──というか、犬神と西園寺。テメェらもちゃっかり笑ってんじゃねぇよ、シメるぞ??
………………あれ? つーか『式神』って一般人にも視聞きできるモノなの??? マジで?
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