蛙のストラップ
ホラーさんが、息をしてない……!
■■■12:45/病室■■■
『──近頃、此処……月夜乃外苑で起きている連続失踪事件についての詳しい情報を求めると共に、警察は付近の住民への注意喚起を──』
◆◆◆
はぇ〜……連続失踪事件とはまた物騒な世の中になったモンだなぁ。
そう思いつつ、備え付けられているテレビの電源を切る。
オレの名前は火神 光。男子高校生であり、俗に言う『霊能力者』である。
──え? 何が出来るのかって??
そうだなぁ……『妖』と呼ばれる異形の存在を視たり、触ったり、正当防衛で追い祓ったり出来る。
あ、『幽霊』も一度だけなら、視た事と触れた事があるぞ!
──さて、話しは変わるが……変わるか? まぁ、オレには一つ悩みがある。
溜息を吐きつつ、自身へのお見舞いの品が置かれた棚の上へと目を向ける。
『うむ! このいかにも体に悪そうなディープかつ止められぬ旨味!!! やはり菓子はこうで無くてはな!』
『はぁ? そんな薄っぺらい芋菓子よりもこのグミの方が断然美味いが??? モチモチしてて噛めば噛むほど味が出る』
其処には、呑気に食レポをする二匹の妖の姿が見て取れた。
「──お前らさぁ、なに人のお見舞いをさも当然の様に貪ってんの?」
と、言葉と共に右手さんで害獣を鷲掴む!
そう、オレの悩みとは……現在、オレに取り憑いている──コイツら、鳳凰と駄狐についてだ。
『ムグッッッ!!?!?』
『フッ! 馬鹿め、油断したな鳥よ!』
と、オレの右手に捕えられた害獣に勝ち誇った様に告げる害獣二号。
「なに勝ち誇ってんだ、お前も同罪だよ駄狐」
『なにぃ!?? 私は其処のバカ鳥みたいにがっついてはいなかったぞ! ただ、グミを少々貰っただけだ!』
キャンキャン吠える駄狐を黙らせたいのは山々だが、今のオレは左腕をポッキリ骨折中ので制裁を下せないのだ、残念。
──と、其処に!
「よぉ火神!!! 明日ついに退院なんだって!? おめでとぉ〜〜〜ッッッ!」
勢い良く、友人──西園寺 湊が病室のドアからコンニチワして来た!
よぉし、神はオレを見捨ててはいなかった!
「西園寺、悪いがちょっとこのバカ鳥待ってて」
「え? あ、おう!」
……ここで一つ補足入れるが、本来であれば普通の人間には『妖』や『幽霊』を視る事は勿論、触れる事も出来ない。
だが、このバカ鳥──基、鳳凰だけは普通の人にも見えるし、触れられるのだ。
本人? 本鳥?? 曰く、『神獣』だから。との事だが詳しい事は知らんし、興味も無い。
──オレにとっては『妖』と何ら変わらないので取り敢えず、同じように扱っている。
さてと。空いた右手で今度は駄狐を鷲掴む!
「クックック……さぁて、どうしてやろうかなぁ?」
『──ひぇッ! は、放さんか小僧!?』
『ぐ、グミをやる! な、何なら予言でもしてやろうか!? ま、まて、話せば分かる!』
「……(・ω・`)?」
◆◆◆
『うぅ……この怨み晴らさでおくべきか』
『もう、お婿にいけない……!』
『キャンキャン! キャオーン!!!』
(訳:やーいやーい! ざまぁ!!!)
西園寺の頭の上から、棚の上へと華麗に着地をキメた仔犬──『犬神』が何かキャンキャン吠えてる。
はい、此処でまたまた補足を入れよう!
──この犬神は西園寺の家に取り憑いている『妖』で、よく西園寺の頭の上に乗ってお散歩感覚で出歩いているらしい。
そして実は、オレの左腕をポッキリ折った犯人なのだが詳しく話せば長くなるので、三行ほどで説明しよう!
■■■〜〜〜説明〜〜〜■■■
西園寺家にて、怪奇現象が勃発
↓
『妖』の仕業かもしれないと、西園寺がオレに泣きついて来たので夏休みを利用し西園寺家へGO!
↓
犯人は犬神であり、怨念により凶暴化──バイトで陰陽師やってる美少女と共に浄霊? 浄化?? した。
↓
オレ=左腕骨折。入院なぅ。
美少女=両手に火傷。もう退院した。
犬神=怨念は浄化されたが……何やかんやで仔犬の姿で現世に留まっている。
──以上だ! 質問があっても受け付けない!!!
あ、追記しておくと西園寺には『犬神』の姿も『駄狐』の姿も見えてないぞ!
■■■以上、説明終わり!■■■
「──で? 西園寺、お前は何しに来たワケ?? まさかまた何か起きたのか?」
そう問うオレに、西園寺は驚いた顔を浮かべ首を横にブンブン振ると、
「え!? いやいや違うから! 面倒事を待って来たとかじゃないから!!!」
と、異様なほど慌てて否定してくる。
──怪しい。こりゃ何かあるな?
「駄狐、お前の罪を許してやるから犬神の通訳よろ。で、犬神さんや、西園寺は何を企んでいるのかな?」
『キャン、キャッキャキャオーン!!!』
『コホン。友人からの頼みで肝試しに行く事になったワン! でも、ぶっちゃけ怖いから退院祝と称してワンチャン君を連れて行けないかな〜って企ててたワン!』
──ほぉう? なるほどなぁ〜〜〜???
「退院祝と称して、肝試しに連れて行こうと……企ててた、ねぇ?」
「──なッ!!? あ、妖に訊いたのか!? 何て卑怯かつ羨ましい能力なんだ!」
卑怯って、どの口でほざいてんだコイツ……?
「なるほどなー。オレはお前の為に腕の骨を折ったって言うのに、そんな不義理な事を企ててたのかぁ〜」
「ウッ!」
「オレはお前の事を友人だと思ってたのに、お前にとってオレは、都合良く利用するだけの存在なんだなぁ?」
「グフッッッ!!!」
「そうかそうか。キミは所詮、そういう人間なんだなぁ? 残念だよ、ホント」
「──ッ分かったから! 誘いは断るから! ほ、ほら!! お詫びにこの『恋愛成就カエルくんストラップ』もやるから許してくれ!」
反省したのなら良し! でもなに?? このどギツいピンク色をしたカエルのストラップは?
まぁ、くれるというのなら貰うけども……。
見てくれてありがとうございます!! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします( ´∀`)