生きてるのか死んでるのか分からん世界
アクセス数0でしたので再投稿しました
ピョン。
ピョン。
僕の仕事は画家です。
キャンパスに長方形に切った紙を複数張る。
「なんて胸を張れたら良いんだが」
フウ~~。
中国からの帰りに買ったタバコが美味い。
はあ~~。
勘弁して欲しいよね。
中国から二度目の帰国早々。
「インクもどきが切れそうだな~~」
僕は赤いインクもどきを筆に含ませる。
そのまま紙に筆先を付ける。
ざっ!
ざ~~~。
ざっ!
赤いインクもどきで線を書く。
うん。
良いね。
「ふう」
うん。
この筆良いね~~。
流石は筆の本場。
手に馴染む。
「イチ・二・イチ・二」
姉が踊ってる。
「ぶっ!」
視界の隅に白いのがチラチラと動く。
おい。
「あにやってんだよ」
「体操」
姉さんや。
その格好でか?
「下着で彷徨くな」
肌色が多いわ。
隠す面積多くしろや。
「拒否」
「おい」
マンションの屋上だけどな~~ここ。
「一応ここは家でもあるんだから服着ろや」
「暑いから嫌」
下着姿で彷徨くな。
「これ邪魔」
おい。
その紙を取ろうとするな。
「その紙を外したらネットに姉の全裸動画を拡散するぞ」
「え」
僕の言葉に固まる姉。
「鬼畜か弟」
目つきの悪い目で見るなや。
「外したら怒ると言っただけ」
「外道かあああああああああああっ!」
はん。
「何とでもいえ」
うん。
僕の苦労を考えろ。
「腹減った」
床に置いといた袋を開ける。
「いい匂いだな」
「くれ弟」
「やらん」
ガリガリとお土産の菓子を食う。
中国のお菓子は硬いな。
「私への土産は?」
手を差し出す姉。
「ぶっ!」
そのせいで危ない物が見えそうになる。
「汚い」
「胸えええええええっ!」
谷間見えるんだがああああっ!
「減るもんじゃないし~~」
「減るは僕の精神が」
はあ~~と笑う姉。
「それよりくれ」
「金は」
「え?」
「だからお土産のお金」
手を突き出しジト目で言う。
「え~~ケチ」
止めろ。
ケチという目は止めろ。
「やれやれ」
というか揺れる。
揺れるから動くな。
「お金無い」
おかしな気分になるから止めろ。
「ボンビーにやるものはない」
実の姉に煩悩なんぞ出ません。
というアピールだよ。
分かれ。
「卑しいわね姉から金を取ろうとは」
クスクスと笑うな。
「ここは僕の家」
親指を下に向ける。
「この高層ビルマンション丸々ね」
「肉親から金の無心をするなんてっ!」
言ってないわ。
というか。
「居候のくせ食費ぐらいは出せ」
「……」
「土産欲しいなら最低でも出せ穀潰し」
視線逸らすな。
「世知辛いわ~~この弟」
泣き崩れる姉。
わざとらしい。
「寄生してる奴が何いってんだか」
「まあ~~今は金はただの紙だけどね」
「そうなんだよ~~」
思わず泣き崩れる。
言うなよ。
「苦労して貯金したのに紙切れになるし」
まさか物々交換になるとは……。
思いませんでした。
今の物のやり取りは物々交換。
若しくは貴金属ですね。
「紙幣が無くなったのは痛い」
「この国の信頼が無くなったから紙幣は紙切れね」
姉。
「危うく残高ゼロの無職になるところだったね~~弟」
その不本意な顔は止めろ。
「趣味で修行したのが役に立つとは思わんかった」
「需要が有るから趣味が仕事になるんよね~~」
そうだね。
だけど趣味と言うな。
過酷な修行をしたんだから。
「道楽で本場の中国に修行に行くとは……」
「道楽言うな」
あの過酷な修行。
道楽と言う言葉で片付けてほしくない。
臨死体験するのが普通と思いませんでした。
「趣味の道楽が仕事とは引いたな~~」
「姉~~」
酷くね?
「中国に修行に行ったよね」
「うん」
何が言いたいの?
「日常生活に役に立つとは思わんかったね」
「それ僕も」
同感。
「おい」
僕は火の付いた紙タバコを吸い白煙を吐く。
ウンコ座りで見本を見ながら筆を走らせる。
「手を止めない~~」
「へいへい」
長方形に切った紙に筆で様々な物を描く。
人物。
文字。
図形。
「こんなもんかな」
それらは赤いインクもどきで書かれる。
長方形に切った紙。
ふと視線をフェンスの外に向ける。
ピョン。
ピヨン。
でも高層マンション入居者ゼロなんだよね。
「ガチで泣きたい」
「泣けば」
「姉ええええええっ!」
僕は札を十数枚完成させる。
それを束ね封筒に入れる。
「完成したんで宅配よろっ!」
「あいあい」
姉は御札の入った封筒を持ち屋上から外に出る。
高層ビルの屋上から。
六階の屋上から。
「行ってきます~~」
「よろ」
フェンスを飛び越え。
「額の御札剥がすなよ~~」
「あいあい」
ピョン。
屋上から飛び降りる姉。
「次のをお願いっ!」
「あいよ」
ヒュウ~~。
姉が出ていく。
空を飛んで。
「いやはや便利だねキョンシーというのは」
正確に言えばフェイキョンだが。
キョンシーの中には稀に空を飛べるキョンシーが居る。
それが姉だ。
まあ~~どうでもいいが。
「今日の飯何かな~~」
僕は自衛隊から姉が貰ってくるご飯に思いを寄せる。
発注先は陸上自衛隊である。
代金はお金ではなく食い物という感じです。
「糸に墨を含ませないと~~]
僕はテレビを点ける。
『六年前、長崎県のO市で見つかった十名のキョンシーですが、日本のキョンシー愛好家が密輸した事が判明ししました、キョンシー愛好家は自宅のマンションで二人が消息不明残りが惨殺死体で発見されました。専門家は遺体に残された傷跡などから、殺害に使用された武器は斧のような物の可能性もあるとして、付近を捜索しています。また住人の皆さんは外出の際は野良キョンシーに十分気をつけてください』
ため息を付く僕。
窓の外には二体ほど日陰にキョンシーが居る。
日の光を避けてるみたいだ。
「場所を通報しとこう」
他にも沢山のキョンシーが居るだろうが……。
分からんし良いか。
それはそうと斧を捜索ね~~。
「有るわけ無いだろうに」
僕は床の斧を持ち上げる。
キョンシー愛好家を惨殺した凶器を。
「インクが切れたな補充しとくか~~」
灰皿でタバコを消す。
「司法取引で幾ら対キョンシー武器を作れば良いのやら」
タバコをもう一本取る。
口に含んで火をつける。
そして一服。
「かあ~~うめ~~」
白煙を上げる僕。
そのまま僕はビルを降りる。
「キョンシー愛好家って意味分からんよね」
まあ~~僕も人のこと言えんが。
僕も道士だし。
僕は恐らく日本で唯一の霊◯道士だろう。
「映画に影響された過去の僕って怖い」
うん
「本当に◯幻道士になるとは思いませんでした」
幼い自分の憧れって引く。
我ながらドン引きレベルだ。
映画の道士に憧れたのが運の尽き。
本当に道士の修行で中国に行くと思いませんでした。
恐るべきは両親の行動力。
それと幼い時の僕だな。
本当に道士になると思いませんでした。
そして本来役に立たない道士の力が重宝されるとは。
この終末の世界。
日本はキョンシーが徘徊する国になった。
僕とキョンシー愛好家のせいで。
六年前。
愛好家のキョンシーのせいで死んだ姉。
僕は姉を弄び殺した愛好家を惨殺。
姉恋しさに僕はキョンシーにした。
姉を。
そのまま姉を道士の術で使役した。
「過去の僕はドン引きですね行動が」
本当に。
「実の姉をキョンシーにするなんて」
姉をキョンシーにして愛好家を蹂躙した僕なんだけど……。
捜査令状を持った警察が運悪く踏み込んでしまった。
その結果。
沢山のキョンシーが解き放たれた。
そうして日本はキョンシーが徘徊する国に成った。
「焦りましたね~~あの時は」
キョンシーは普通の方法では破壊できない。
道士の力と知恵を借りないと。
そこで選ばれたのが僕だ。
殺人の現行犯で逮捕された僕。
但し対キョンシー戦のプロ。
道士のぼくがだ。
「キョンシー退治に力を貸せば無罪放免ね~~」
上手く行けば良いけど。
「司法取引って当てになるの? あれ」
地下を降りる。
バケツを持って。
地下一階。
正面の通路から何かが来る。
何かが。
「お疲れ」
ピョン。
ピョン。
キョンシーだ。
そいつは僕の隣を横切る。
地下二階に降りる。
階段を降りる途中。
ジリジリッ。
ジリジリ。
照明が点滅する。
ボンヤリと何かが見える。
ボウっとしたナニカ。
それは無機質な目で僕を見る。
複数のキョンシー。
それは僕を見ている気がした。
「見張りお疲れ」
その言葉にキョンシーは答えない。
まあ~~当然か。
普通のキョンシーは。
ここに居るキョンシー達は僕が使役してる。
安価な護衛。
万が一野良キョンシーが襲ってきても大丈夫。
こいつらがいるから。
僕はそのまま奥の部屋のドアを開ける。
ムアっと異臭がした。
異臭の正体は三つのベットからだ。
元は白いベット。
様々な物でうす汚れていることが分かる。
ピッ。
ピッ。
ピッ。
沢山の管がベットの住人に繋がれている。
四肢は切断。
舌も切断。
爪は全て剥がされ。
目はえぐられた住人に。
「る~~る~~」
まあ~~気にしないが。
しかしま~~いろんな機械に継がれてるな~~
「ん~~」
これはベットの住人を延命させる為のものだから。
月に一度だけど医者が見に来るから万全だ。
最小限の生命維持を目的に来てくれるから。
「さてとインク~~」
僕は管の一本を引き抜きバケツに向ける。
管から沢山の赤いインクもどき。
いや血が出てくる。
「こうなると哀れだな」
血の量を見て管をもとに戻す。
そのまま次の管を外し血をバケツに入れる。
「元キョンシー愛好家さん」
また 血の量を見て管をもとに戻す。
そのまま次の管を外し血をバケツに入れる。
「それとも内閣総理大臣とその取り巻きと言えばいいかな?」
あの日。
僕は国と取引するにあたり条件を出した。
キョンシー愛好家の身柄をこちらに寄越せと。
「顔を青くして喚いてたけど笑えるよなあんたら」
気が済むまで拷問をしたいから要求した。
他はキョンシー愛好家の延命維持かな。
御札を作る血袋にするために。
「死んで楽にしたくないからね~~」
僕がその場をバケツを持ち離れた。
「じゃあね血袋さん」
インクもどきを早く上に持って行こう。
処理しないと固まる。
「あ」
それはそうと。
今思い出した。
「下着姿じゃん姉」
忘れてた。
「姉だし良いか」
うん。
数時間後。
赤面した姉が帰って来ました。
自業自得ですな。