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ええ、召喚されて困っている聖女(仮)とは私のことです【書籍発売中・コミカライズ】  作者: 守雨


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ヤマネコの尋問 

 ああ、苦しい。頭に血が上る。


 私は袋を被せられたまま馬の背中にうつ伏せで馬に対して直角に乗せられているらしい。荒縄で縛られているからチクチクするし、きつく縛られているからあちこちが痛い。


 ほんとに苦しい。このままこの姿勢でいたら鼻血が出そうだ。


「おとなしくするからちゃんと馬に乗せて!」

「うるさい!」

「……」


 くっそー。

 頑張れ私。ヴィクターもポーリーンも凄腕の魔法使いなんだから追跡してくれているに決まってる。必ず助けてくれる。


 ……と言う私の心を読んだかのように同乗している男が話しかけてきた。


「助けは来ねえよ。追跡避けの魔法を使ってるからな」


 魔法どんだけよ。ステルス機能まであるのか。私は(大丈夫大丈夫。落ち着け私)と自分を励ましながら馬から落ちないように気をつけた。馬の背の高さから頭を下にして落ちたら洒落にならないもの。

 

 それからどのくらい経ったか。


「一度下ろす。逃げようとしたら殺す」


 男がそう言って下ろしてくれた。少し縄が楽になるけど頭に被せられた袋はそのまま。途中トイレ休憩のときに水を貰った他は、馬で移動した。


 クロはどのくらい助けになるだろうか。最後の切り札だから今クロを呼ぶのは早いだろう。こいつらの本拠地があるのなら、そこに着いてから魔猫召喚してやる。


 ……とは言え、クロの能力が引っ掻くくらいだったらどうしよう。魔猫だけど、ちょっと飛べるだけとかだったら困る。クロの能力を事前に知っておくべきだった。


 馬がやっと止まった。目的地についたらしい。そこには複数の人がいる気配。私は縄を強く引っ張られてヨロヨロと進む。


「モグラ、ご苦労だった」

「は」

「その女か?あれを見て消すこともできる魔法使いというのは」

「はい」

「よくやった」


 私をさらった男が離れた。モグラというのはコードネーム?そしてモグラの上役は女の人だった。


「女、名前は」

「ハル、です」


 そこでバランスを崩して私は倒れた。縛られてるから立ち上がれない。床が冷たくて寒かった。


「話を聞くのは後にしよう。カエル、面倒を見てやりなさい。ずいぶんと疲れているようだ」

「はい」


 床の冷たさに震えていたら引っ張られて立たされ、歩かされた。ベッドに座らされ水を与えられた。


「もしかしておなか空いてる?」

 しっかりうなずいた。


「そうか。悪かったね。君も驚いたことだろう」


 そう言って私を横にするとカエルと呼ばれた男は出ていった。そしてすぐに戻ると私の縄をほどいてカップを持たせてくれた。いい匂いがする。スープの匂い。パンもあった。


「袋はそのままだよ」


 袋の下から与えられたスープとパンをゆっくり食べた。少しずつよく噛むようにして飲んだ。袋を被ったままだから部屋の様子はわからない。


「美味しかった。ありがとう」


「声が出るようになったか。今、誰か女を呼んでくるから体も拭くといい」


 カエルはそう言って立ち去り、入れ替わりに女の人が来た。


「縄を解くわ。ずいぶん汚れているからお湯とタオルで自分で拭いて」


 汚れているのは想像がつく。ほどほどの温度のお湯と布を手渡されて私は手探りで全身を拭いた。サッパリした。それだけで人間らしい気持ちになる。


「私がいるから逃げようとしないでね。もっときつく縛らなきゃならなくなる。それは嫌でしょう?」


「はい」


 新たな複数の足音がしてさっきの女の人の声がした。


「私はヤマネコ。疲れているだろうけれど私の質問に答えてもらうわ。あ、そうそう、使役鳥にここは見つけられないし、あなたが使役鳥を使うこともできないわ」


 それからヤマネコによる長い尋問が開始された。


「あなたが答えなかったりひとつでも嘘をついたりしたら子供を殺さなければならない。見ず知らずの子供といえども、自分のせいで子供が殺されるのは嫌でしょう?」


 そこでタイミング良く子供が泣き声を出した。

「助けて!殺さないで!おうちに帰して。お願い」


 ああもう……これ、多分子供の声はやらせだろうけど、もし本当だったら困るやつ。


「わかったから。子供には手を出さないでよ」

「聞き分けが良くて助かるわ」


 一問一答に私は素直に答えた。同じ質問を何度も手を替え品を替え聞かれる。答えを間違えて嘘をついたと思われたら困るから全部正直に答えた。


 出身はこの世界ではないこと。召喚されてこの国に来たこと。魔力が無いこと。仲間の魔法使いはヴィクターとポーリーンの二人であること、コンラッドさんに犯人逮捕の協力を頼まれたこと。つむじ風が見えること。


 聞かれたことは正直に答えたが、攻撃魔法も無効化できることやクロのことは聞かれないから答えずに済んだ。つむじ風を消したのはどうやったのか聞かれてもわからないと繰り返した。だって本当にわからないもの。


 そうしたら子供がまた助けを求めて泣いたから私もギャン泣きしてやった。


「やめてよ!子供に乱暴しないでよ!私だって何がなんだかわからないんだから!わからないものは答えられないわよ!わあぁぁん!」

 

「わかったわかった。うるさいから泣くのをやめなさいよ。それにしてもあなたが異世界から召喚された人とはね。アイツら、いい気味だわ。せっかく召喚したのに魔力無しが来たと知った時の顔を見たかった。ふふふ。さて、本当に魔力なしかどうか、私が調べるわ。嘘とわかったら子供が一人死ぬからね」


 どうやらヤマネコは多少は鑑定魔法が使えるらしい。その後、私の魔力無しはちゃんと鑑定された。


 よかった。

 


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書籍『ええ、召喚されて困っている聖女(仮)とは私のことです1・2巻』
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コミック版
『ええ、召喚されて困っている聖女(仮)とは私のことです1・2巻』
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