魔法が使えたら
「そんな…私は…魔法なんて使えない…魔法使いじゃないよ…」
俯くユイの手をとるレミュア。
「あなたも魔法使いだと思うわ。さっきの言語取得術を使った時にユイの中にある魔力に少しだけ触れたから」
自分の中に魔力がある。
嘘のように聞こえた。
「そんな…嘘…」
「嘘じゃないわ。あなたの魔力はちゃんとあるもの」
「私が…魔法使い…?魔力がある?ならどうして私は魔法が使えないの?!」
止まっていた涙が再び流れ出す。
「ねえ?!どうして?」
レミュアにではなく、自分自身に問いかける。
「魔法がっ…使えたらっ…助けられたかもしれないのに!!私のせいで…っうぁあああああん」
頭をかかえながら泣き崩れるユイ。
目の前で大切な姉を失ったユイの心は悲しみで溢れた。
魔法使いの書は基本、魔法が使えるように覚醒した者しか読めないことになっており、ユイにとっては魔法は使えたこともなく魔法書も読めたことがない。
もし自分が魔法を使えて両親を手伝うことができたら、引きずり込まれるユアも救う魔法を使えたかもしれない。
自分が魔法を使えないばかりに何もできずに、ただ見ている事しか出来なかった自分を許すことができない。
悲しさと悔しさが絡み合い、涙が止まらなかった。
急に暖かいものを感じて目を開ける。
「あなたのせいじゃないわ」
そう言いながらユイを抱きしめ、優しく背中を撫でるレミュア。
「ううぅっ…うわあああああんっ私は誰も救えないダメな人間なんだああああっ」
「そんなことないわユイ…ご両親とお姉さんはまだ死んだわけじゃないのでしょう?なら、探し出して助けなきゃ」
「!!!!だけど私…魔法も使えないのに…どうやって…」
「魔法なら私に任せて。それに私がこの世界に来た意味かもしれない」
「一体…どういう…」
「あなたが魔法陣から出てきたって言う黒くて大きな生き物…あいつがこの世界に来てしまったからさっきの出来事が起きてしまったのだと思う。私はその黒い生き物を追ってこの世界に来たの」
「…レミュアの世界にいた黒いやつ…」
「…ねえ、ユイ?この世界には魔法は存在するけれど、グリフォンみたいな魔獣は居ない世界で良いのかしら?」
「うん…そんな危ないの居ないよ…強くてライオンとか狼みたいな…空は飛んだりしないし、日本には動物園にくらいしか居ないし…」
ユイの話を聞きながらレミュアはハッとした。
「ユイ、この建物から一旦出るわよ!」
「えっ?!」
「出口分かる?」
「うん…そりゃ家だから…」
レミュアはユイの手を取って走り出した。