知りたくなかった
ある日、偶然1人で書斎に入ったユイは古い魔法書を見つけた。
悪用を避けるために通常魔法書は魔力が覚醒した者にしか理解出来ない書物ばかりだ。
タイトル自体も理解できない本も多い。
ユイが見つけた本は、魔力が覚醒していないユイでも読める書物だったため、嬉しくなりページをめくった。
魔法使いの掟なら両親から聞いていたが、自分が読める本だったので1ページずつ丁寧に読んで行った。
知っている掟ばかりだったが、暫くめくると知らない掟が記されていた。
そこには両親が今まで何も言わなかった双子に関しての掟が書かれていた。
ー双子が誕生した際はどちらか一方を亡き者とする事ー
「これって…」
ー双子は魔力が分かれてしまうー
自分達が双子だから自分は魔法が使えない。
とても仲の良いユイとユア。
そんな2人が双子だからという理由で魔法が出来る者できない者になろうとは。
双子なのに亡き者にせず一緒に愛情を注いで育ててくれた両親。
魔法使いの家庭でなければこんな思いはしなかった。
色んな気持ちが絡み合い、心の器が複雑な感情で溢れてしまったユイは魔法に関して考えたくなくなってしまった。
しかし、両親も姉も大好きなユアは、何事もなかったように、今まで通りに振る舞った。
魔法に関しての自分の心に鍵をかけて。
流石に両親は知っているだろうが、双子に関しての掟はユアには知られたくなかった。
ユイはこっそりと掟に関しての本を持ち出し、学校の焼却炉に捨てたのだった。
それ以来なんとなく魔法に関しては触れずに、勉強や運動、趣味などに力を入れた。
時たま無理をしていると、ユアに心配されていたが、魔法使いの掟に関しては一切打ち明けなかった。
「ユイ…最近無理してない?悩み事あるなら聞くよ?」
「大丈夫だよ。ユア。ちょっと疲れちゃっただけ…なんだか…甘いもの食べたいなぁ」
「あ、そういえば近所に新しい洋菓子屋さんができたんだった!一緒に行ってみる?」
「行く!珍しいの食べたい!」
優しいユアのことだ。
双子であるからユイが魔法を使えない可能性があると知ると、自分のせいだと自分を責めかねない。
自分が言わなければユアも気に止むことはない。
ユイはこの事は一生言わないと心に誓った。