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ココハ魔導学士のかえりみち  作者: 倉名まさ
第二話 隊商
14/52

⑦2日目

 翌日の移動は徒歩に戻った。

 このあたりの野営地は明け方から一日歩き通せば、日暮れまでに着く距離に設けられている。

 いまは比較的日の長い季節だし、徒歩で十分だ、ということだった。


「この子たち、気難しいからね~。ずっと背中に乗ってるとふてくされちゃうのよ。それに自前の足で歩ける時はちゃんと歩かないとね」

「なるほど……」


 一夜明かすと、自分で調合した魔法薬の効果もあって、ココハの身体の痛みはすっかり取れていた。

 それに隊商の移動ペースに合わせて歩くのも、不思議と昨日ほど苦にならなかった。

 なんとなくコツを得たような気がした。

 大切なのは、体力よりも呼吸のリズムだ。それと、自分の身体の重心を知って歩くこと。

 騎鳥の手綱を握った経験が、徒歩にも活きている気がした。

 二日目の移動中は、周りの景色を眺める余裕も生まれた。


「ねえねえココちゃん。これってなんの実だと思う? 食べれる?」

「うーん、たぶんカカルの実じゃないかな。普通には食べれないけど、魔法医学だと下剤の材料に使われたりしますよ」

「げげっ、下剤かぁ。つまみ食いしなくて正解」

「というか隊商のイハナさんのほうが、いろんな土地の実とか草とかよく知ってると思ってました」

「まあ、そこそこ旅はしてるけど、あたしらは売り買いが専門だからね~。商品になってない植物とかは魔法使いのココちゃんの方がぜったい詳しいと思うよ」


 歩きながら、ココハとイハナはそんな会話を交わす。

 サラマンドラに上京してきた五年前は右も左も分からない小娘だった。

 それに、とにかく生きて次の街へ次の街へと辿りつくことに必死で、景色なんか見る余裕もなかった。

 薬草学を中心に魔法医学を専攻しただけあって、特に道端の植物に目がいく。

 この辺りには採取にきたこともない。

 たった三日歩いただけで、サラマンドラ周辺とは植生が異なってるのも面白かった。

 そんなココハの様子を面白がって、イハナは盛んに質問した。

 なんとなく、隊商といえば世界の果てまで旅して、神羅万象を知り尽くしているようなイメージをココハはもっていたが、そんなイハナよりも少しでも自分の方が詳しいジャンルがあると分かって嬉しかった。

 五年間がんばって学んだ甲斐があったと誇らしい気持ちになった。

 そうして、二日目の昼と夜も大事なく過ぎていった。


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