絵本・アーク神
題名・アーク神、世界を見守る
神界に生まれた光の神・アーク
両親に大切に育てられたアーク神は、ある日最上神様よりお言葉を賜る
「わたしが授けし世界を統治しなさい」
最上神様より賜った世界、それがこの世界
管理者がいないこの世界は荒れ果てて混沌としていた
生き物が住める場所では無かった
アーク神はめちゃくちゃだったこの世界を綺麗にした
山を作った
川を作った
大地を作った
そして少しずつ生き物を増やしていった
植物
魚
犬や猫
そして、わたしたち人間
ながいながい間
産まれたばかりの人は、言葉も話せず字も書けない原始的な生活を送っていた
アーク神はこの世界の事を静かに見守っていた
転機が訪れたのはとある村の青年をアーク神が見つけたからだ
青年は体が弱く、魔法を使うのも下手であった
青年の家族は青年を悪く言ったりしなかった
しかし青年の心は暗い
自分などいない方が家族のためだと
何もできない青年は肩を落とす
家族の優しさが、青年には酷だった
ある時、青年は風邪をこじらせ生死を彷徨う事になる
このまま死ぬのか、何もできずに死ぬのか
太陽に向かって青年は願った
どうか家族がしあわせであるようにと
この世の理不尽さで神を恨むことなく
今まで苦労を掛けた家族を思い、ただ願う
死にかけの青年を憐れんだアーク神は手を差し伸べる事にした
青年の夢の中に入り込み、言葉を授けた
「あなたに特別な力を授けましょう」
それは、大地を豊かにする魔法
村の土地はやせ細っていた、野菜が育たないのだ
皆の為になるならと青年は力を受け取った
「良い事をしなさい、皆の為になることを」
そう言い残し、アーク神は去って行った
アーク神は世界を見守る
哀れに思った人間に手を差し伸べながら
今日はあなたを、明日は別の人を
そして、力を渡した青年が正しい行いをしているか見つめる
いつまでもいつまでも見守る
おわり
ロアは本を閉じた。
「神様に見られてるから悪い事はするなよって事」
「なるほど」
子供向けの絵本ならではだ。
あと、良い事をしていれば神様が助けてくれるかも、と言う内容でもある。
「この……力を貰った青年って?」
「それについては、これ」
ロアが一つの絵本を手に取る。
バルト家の四兄弟
「四人兄弟の末っ子が力を貰うんだ」
「病弱で?」
「そう。まあ、俺が教えるから後は自分で読んでみろよ」
絵本を渡される。
適当なページを開くが、分からないし読めない。
絵を見るとどうやらアーク神が夢の中に登場しているシーンである事がかろうじてわかる。
「それは明日でもいいし……まずは夕食食べに行くか」
「わっ」
少々乱暴に目隠し付きの帽子をかぶらされる。
外は暗くなり始めていて部屋にある数本の蝋燭にはいつの間にか火が灯されていた。
本を読むのには支障が無い明るさだ。
階段を下りて行く。
一階には食堂の様な場所があり、そこには同じ宿屋に泊っているであろう人たちが数人先に食事をとっていた。
適当な席に着くと女将が水を出してくれた。
「二人分、俺大盛りで」
「あんた相変わらずたべるわね」
「食べないと持たないんだよ」
「はいはい、ちょっと待ってな」
すぐにサラダとパン、シチューが出てきた。
メインはお肉で、今焼いているようだ。
いただきます。
ロアにならってパンにシチューを付けて食べた。
美味しい。シチューがよくしみるパンでクリーミーなシチューが際立つ。
野菜も新鮮でシャキシャキしてる。
夢中になって食べているとメインのお肉が到着した。
「はいよ」
置かれたその肉を見る。
牛だろうか、豚だろうか。
分からない、赤身肉の様だが。
取り敢えず口に放り込む。
……脂身は少ない。筋も多い気がする。
うーん……
「ロア、この肉って、何の肉?」
「これは鹿だな」
「しっ、鹿?」
「ああ、草原をもう少し行くと森があるんだ。そこで取れた鹿だろうな」
これが鹿肉かぁ。
初めて食べた。意外にさっぱりしてて美味しい。
まあ、元の世界と同じとは限らないけど。
この世界では野生の獣の肉を食べるのが当たり前なのだろう。
ロアはわたしの物より分厚くて大きな鹿肉に、なんのためらいもなくがっついている。
何度か見たが、食事の時は毎回、ロアは美味しそうに食べていた。意外と食いしん坊なのだろうか。
そのまま何事もなく食事を終え、ロアが代金を支払う。
紙幣と言う物は無いようで、銅貨を使って支払っていた。
銀貨や金貨もあるのだろうか。
ロアに声をかける。
「ロア、その……お金」
「気にするな、俺が好きでやっていることだ」
「……ごめん、ありがとう」
食事もそうだが洋服だってお金のかかる事だ。
いつかちゃんとお礼をしなくちゃ。
……元の世界に帰る前に。
部屋に戻る途中の階段を上る。
この階段、急で疲れるんだよね。
此処から草原って結構遠いし、現代っ子の私にはつらいものがある。
それに何だか足が……
階段を上り切り、足がもつれそうだな、そう思っていた時だった。
「あっ!」
何も無い所で足が上がらず、何かにけつまずいた。
思わずロアに手を伸ばす。
「ミツキっ」
ロアに腕を引かれ、転ぶのをまぬがれた。
あれ?
さっきに比べて目の前が暗い。
目の前あるこれは、何?
やけに見覚えがある。そうだ、これはロアの服じゃないだろうか。
「っ!」
状況を把握した。
わたしはロアの腕の中にすっぽり入ってしまっていた。
なに? 何が起きたの!?
心臓が大きく高鳴る。
わたし、ロアに抱き着いちゃったの?
恐る恐る見上げる。
整った顔が心配そうにわたしを見つめてくる。
近い! 近いよ!
それだけじゃない、ロアの体温が服越しに伝わってきてドギマギする。
なんか、いい匂いもする。香水とかではないロア自身の匂い。
どっ、どうしよう!
心臓がうるさい。体温も上がって行く。
それにっ、ロアの手の位置が、腰辺りにあって、
「ミツキ、大丈夫か」
「あ、い……らいじょうぶれす」
ロアはいとも簡単にわたしを離してくれた。
良かった、動揺がばれなくて……
「……ほんとに大丈夫か?」
「うん」
「足とか捻ってない?」
「うん、ロアのお陰で……ありがと」
頭の方は、駄目かも知れない。
よかった、顔がほとんど隠れる帽子をかぶっておいて。
きっと顔はゆでダコ状態だろうし。
「ミツキ、部屋に着いたら先にシャワー浴びてて」
「あ、はい分かりました」
「俺ちょっと出かけてくるから」
「はい……」
この状態でシャワーの話とかしたくなかったよ。
ロアはわたしに気を使っているのかシャワー中は出かけてくるようだ。
わたしだけ爛れているように感じ始めた。
お父さんお母さん、ごめんなさい。娘は爛れてしまいました。
自己嫌悪。
ぷるぷると頭を振りながらロアに心の中で謝りつつ部屋に入った。




