温もり
絶望な世界から切り離され
目を開いたとき
それは救済か
それとも天罰か
終わりなき物語
ここに始まる。
暖かい、、、
周りは暗いが、部屋のように寒くない。
何かぬくもりを感じながら、決して土臭くない埃の匂いを嗅いだ気がする。
これは自分が何年か拒み続け、避けてきたもの。
黒く薄い布の向こうにぼんやりと光りながら化学繊維の反射によってキラキラと輝き、さながら妖精のように至福を運ぶようだ。
太陽の光ってこんなに落ち着くのか、、、
しかし、その眩しさは相変わらず不愉快なものだった。目を開きたくも生理的に無理である。
ましてはなぜか寝転んでる感じがする。寝たまま目を開けられないとかこの感覚はなんて懐かしいだろう。がんばって起き上がろうとしてもなぜか腕がなくなったかのようにまったく力が入らない。あれこれ起き上がろうと試みたが。
結局無理であった。
途中から自分は何かの中にいて現在進行形で動かされていると気づいた。この狭い空間自分はいったいどう納まっているのか。別に体が苦しい姿勢をとってるわけではない。気になって仕方がない、せめて鏡とかあれば、、、
と言いながら目の前にある黒い布が開けられた。
一瞬に広がる力強い白い輝きが他の色を飲み込み、しばらくするとその白さが少しマシになった。
そこに現れたのは一人のおじいさんと若いめがねをかけたお姉さんだった。
二人は底の見えないような青を背にしていた。
二人は似ていて、親子かもしれない。
そして、お姉さんは見覚えがあった。
細長い鼻に大きな目に小さな口、そして何よりその気の強いオーラ。
「ああ、母だ。」
呟く行為は叶えないが、心の中でそれが十分である。
子供の時に憧れていた母親がそこにいた。そしてその隣にいるのは母に似ているが優しさに溢れ誰もが親しみを持ちたいと思われる祖父であった。
祖父は十歳の頃に交通事故で他界した。
初めて記憶のある内に祖父と会ったのが、他界した二日後である。
そして祖父は黒い布を閉じ、意識が自分の意にに反するように朦朧とした。
再び目を開けるとそこには逞しいい大人達がカードを手に大きな円卓を囲んだ。その中に酒を飲む者もいればタバコを咥えている者もいる。そして自分もカードを手にしてた。この空間は悪臭に満たされ息苦しい。しかし、周りの表情を見ると何故か居心地が良かった。自分は手洗いに行ってくると大人たちに伝えた。
部屋から出て屋敷の近くの広場に来た。
あたりを見渡すと、庭の壁が自分より何倍も高くそびえたっていた。
おんぼろな壁だが、周りの家々の光のせいだろうか。壁の上にぼんやりと黄色の光が見える。
少し寒いので、小屋に戻ろうと思ったが、自分のすぐそばに大きな影があった。自分の倍以上の大きさ、そして強烈な野生のにおい、、、
それは馬だった。大きな目で自分を見下ろし、その鼻息は頬をくすぐる。
ここはそう、自分が小学五年生の時にモンゴル付近の小さな村へ旅行した時の場所である。
幸い大きな反応を見せなかったため、馬も暴れたりしていない。
ゆっくりと階段を上り、部屋に入った。
その瞬間、、、
目の前にあるこの光景が「割れた」。
目の前にある景色が割れ
その先にあるものはいかに?